あまんきみこさんの作品『ちいちゃんのかげおくり』。
小学三年生の教科書に掲載されているのを読んで怖くなったことを、大人になった今も思い出せる戦争物語です。
この記事ではトラウマになる系物語『ちいちゃんのかげおくり』の読書感想をお届け。
大人になって改めて感じ取れた悲しさ、魅力などをお伝えしていきます。
読書感想文を書く宿題などがある場合にも、参考にお役立てください。
【トラウマ】家族全員あっさり死んでいく

改めて読んで怖かったのは、ちいちゃんの家族全員があっさり死んだことでした。
『ちいちゃんのかげおくり』は主にちいちゃんについて描かれる物語。
小さい子供が空襲を受け、3日後に一人で亡くなっていく……わけですが。
お空に昇ったちいちゃんは、先にそこ(天国)にいた家族と合流するわけです。
お父さん・お母さん・お兄ちゃんが先に亡くなっている……!
まずここにゾッとします。
現代で家族一人が亡くなれば大事です。
なのに戦争時は、家族が別の場所で、別の原因でポンポン死んでしまうのです。
しかも詳しくは描かれず「どこかで何かしらの原因で死んだ」という事実を読者は受け入れなければいけません。
ちいちゃんについては、作中である程度語られました。
食べたものはわずかで、水も飲んでおらず、一時的に助けてくれた大人にも放置されて……
おそらく栄養・水分不足からくる衰弱ではないか?という推測も立てられます。
そういう描写があったからこそ受け入れられたのに、
他の家族はどこかでちいちゃんより先に亡くなっている。
戦争とはそういうもの。人の命が軽くなるもの。
歴史を学び始めたところで、非情な戦争時の出来事を突きつけられる……
これが小3の教科書に収録されていたからこそ、今考えるとショックも大きかったのだと思います。
【怖い】孤独な死や絶望を想像する

さらに怖いのはちいちゃんの死に際です。
元は絵本ということでかなり救いのある表現になっていますが……
ちいちゃんは一人で亡くなっています。
「かげおくり」して家族が現れたのは幻覚、或いは天国に昇ってからの出来事であり、
死に際に人がいた様子はありませんでした。
しんどい時に家族どころか誰もいない絶望、食べ物・飲み物がない絶望……
ひどく のどが かわいています。
これだけでも胸に来るものがありますが……
子供なら号泣してもおかしくない状況で、それすらすでに超えてしまっている精神状態なのかなと想像してしまえば……
大人でもつらいものがありますね。
『柔らかな言い回し』が魅力

けれどそれでも小学校の教科書に採用されて読めてしまえるのは、「かげおくり」という家族のあたたかな思い出があり、
そこに多めにページが割かれているからでしょう。
戦争のつらい環境描写をおさえ、逆に家族でかげおくりした描写を印象的にする。
そしてちいちゃんは死に際に、「きらきら笑って」家族のもとにかけていくわけです。
死んだと書かず
いのちが、空に きえました。
という表現なのも工夫でしょう。
この作品は、死への忌避感に配慮して、言い回しができる限り柔らかくされています。
この緩和があってこそ、読めてしまったのだなぁとちょっと苦い気持ちにもなりますが……
あったことをそのまま記した物語なら、おそらく悲しすぎて気分が悪くなるので、教科書掲載には至らなかったでしょう。
『ちいちゃんのかげおくり』を読んだ感想文

個人的に一番印象深かったのは、「はすむかいのうちのおばさん」が、ちいちゃんを焼け落ちた家の前に放置して行ってしまった場面です。
いくら、ちいちゃんが「お母さんとお兄ちゃんはおうちのところに戻ってくる」と言っても……
周囲に姿が見えないのに、「じゃあだいじょうぶね」と幼い子供を残して去っていいわけありません。
なので最初は「嘘だろ」と思いましたが……
考えていくうちにおばさんも、「空襲でショッキングな出来事があり、正常な判断ができなくなっていたのではないか?」という可能性に思い至りました。
あるいは、もしかしたら冷静な判断として「置いていく」選択をしたのかもしれません。
ちいちゃんを保護したところで、結局分け与える水・食料がない。
無理に連れて行って「お母さんのところに戻りたい」と泣かれながら死なせてしまうくらいなら……
まだ「家族が帰ってくる」というちいちゃんが信じていたことを信じる……ふりを選んだのかなとも思うのです。
自分の命だけを取るか、他人を助けることも望むか、とにかく生き延びることをとるか、家族と再会を優先するか。
そんな考えたくもないような選択肢が存在するのが、戦争なのだと考えさえられます。
最後、ちいちゃんは幸せなのか?

最後の死んでいくちいちゃんにも、考えさせられるものがあります。
おそらく衰弱による死なのですが、空の上で家族と再会したちいちゃんは幸せそうでした。
生きられることは幸福だとは思いますが、同時に家族の中で自分だけ生き残った場合はどうなのかと考えてしまいます。
あるいは、戦争時の後遺症を持ったまま生き残った場合は……?
舞台は夏のはじめです。これが太平洋戦争終盤の出来事なら、終戦まではまだ1か月以上あるわけです。
- 終戦後も食糧不足で苦しむ可能性
- 避難所生活や、遠い親戚の元での生活に馴染めない可能性
- この後重い怪我を負って生き残る可能性
などを考えると、ちいちゃんが亡くなってしまったのは「一番不幸な結果」と一概には言えないわけで……
どうもやるせない気持ちになります。

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