東野圭吾さんの小説『架空犯』読了しました!
457ページのどっしりした警察小説。読了まで土日含み3日かかりました。
前作『白鳥とコウモリ』読んでないですが、全然問題なしです。
▼kindle等電子書籍は出ていないので、紙で買いました。
この記事では相関図入りネタバレあらすじと、わかりにくいところ考察&解説、読後の感想をまとめています。
都議会議員夫妻が殺された事件。鍵は40年前の青春に…?
ネタバレあらすじ(相関図入り・結末まで)
『架空犯』の相関図入りあらすじです。犯人などネタバレが強い部分は折りたたんでいます。
殺人事件の容疑者は警察官?!

都議会議員・藤堂とその妻・江利子の遺体が屋敷から発見された。
現場には無理心中に見せかけた痕跡が残されている。
殺人か?
かんどり捜査班に配属された刑事・五代は、生活安全課の山尾と組まされ、事件を追う。

そんな中「夫婦の悪行を暴露する」と脅し、金を要求してきた犯人。
さらに現場から持ち去られたタブレットの位置情報は、まさかの警察署でーー?
五代と一緒に動いていた刑事・山尾が容疑者として浮上する。
高校時代のドロドロ相関図

藤堂夫婦が出会ったのは高校時代。
そして山尾もまた、江利子の同級生だった。
調査の末、40年前のドロドロの人間関係が発覚する。

二か月ほどで別れた永間と江利子。
卒業後も失恋をひきずる永間に、山尾は江利子が二股をかけていたことを伝えてしまった。
永間は逆上して藤堂の左腕を刺し……その後、自殺した。
藤堂と山尾は、永間の自殺理由について黙秘することを決めた。
ここで一度は別れた藤堂と江利子。
再会したのも本当に偶然だったらしい。
しかし江利子は、別れた直後に出産していたことを隠していたーー……
江利子の娘は○○

江利子は高校卒業後、娘を出産して養子に出していた。
その娘こそ、一時期「春の実学園」に身を寄せていたデパート外商・今西美咲だ。
藤堂に頼まれ美咲の素性を調べた山尾は、
「江利子の口止めとして一度だけ関係を持った、あの夜の子どもではないか?」
つまり自分の娘ではないか?と考えた。
(※時期的に父親の可能性があるのは、藤堂と山尾の二人)
しかし藤堂にはそのことは隠して報告した。
相談のはずが恨みへ

結婚したが離婚し、女手一人で娘を育てていた美咲。
しかしその娘「真奈美」は不良グループと付き合い、大麻の売買にまで手を染めていた。
娘の犯罪に気づいた美咲は、実の母・江利子に助けを求めた。
ところが江利子は訪れた美咲の話を聞き……
美咲の子育て努力を否定。「選んだ男の遺伝子が悪い」と言い出した。
高校生で妊娠し子どもを手放した人間に、そんなことを言われる筋合いがあるだろうか?
しかももう一人の娘の出生前診断について、「旦那の遺伝子が違うから」と笑いながら話している。
美咲は江利子の笑みを消したい一心で、スマホのストラップを江利子の首に巻き付け、絞めた。
そして死亡も確認しないまま、動揺して家を飛び出した。
架空犯計画

帰宅した藤堂は妻の遺体を発見し、防犯カメラを見て犯人を知った。
そして、自分の娘(だと信じている)美咲を守ることを決意。
レターパックで架空犯計画を山尾に託し、
偽装工作として自殺&放火した。
山尾は美咲に通常通り生活するようメールを送り、自ら犯人を演じて警察を翻弄する。
【結末】父親は不明のままで

五代たち警察は真相へたどり着き、美咲は逮捕された。
美咲はDNA鑑定(藤堂と山尾、どちらと血がつながっているのかの確認)を望まなかった。
それを聞いた山尾は「まだ片思いでいられる」と安堵する。
分かりにくい部分の解説&考察
作中ちょっと分かりにくかった部分の解説または考察です。
【考察】今西美咲の父親は誰?

結局明らかにならなかった今西美咲の父親。
あくまで予想になりますが……
- 高校卒業後の三月中に性行為した相手(の可能性が高い)
- 山尾とは口止めとして一度だけ関係を持った
- 藤堂とは恋人として週一くらいで会っていたと思われる
- 江利子は藤堂に、この娘の存在を明かさなかった
という部分から考えると……山尾のほうが可能性高い気がしますね。
たとえ藤堂の子だとしても、政治家ですし引き取ることは難しいと思うんですよ。
「自分の子だ」と発言したら「高校生の教え子を孕ませていた」とスキャンダルになり、
「養子縁組だ」と発言してもまぁ…江利子の隠し子などいろいろ言われるでしょう。
だから「夫に迷惑かけないため言わなかった」もあり得ますが……
でも夫婦間で真実を留めておくという選択肢もあるわけで。
それでも言わなかったなら、やっぱり山尾なのかなぁという気がします。
ラストの『片思い』は誰に対して?

山尾の『片思い』……これは「美咲に対しての、父親としての愛情」のことかなと思いました。
「自分は独身だが、実は血のつながった娘も孫もいて、守ってやるべき。守ってやりたい」という感情。
もし藤堂が父親だと判明すれば、これは妄想となるわけですから……
そりゃ真実を不明のままにしておくほうが幸せかもしれませんね。
これから山尾・美咲の罪状がどうなるかはわかりませんが、この先も山尾は美咲の援助をするんだろうな、と想像します。
ティーカップから何が分かった?

事件解決のカギとなる「二組のティーカップ」。
- ソーサー付きの来客用(ティファニー・8万円弱)
- 食洗器不可なのに、食洗器に入っていた
- 山尾はティーカップの存在自体知らない
ここから予想できるのは二つ。
- 江利子の死後、山尾以外の誰かが来客が来たことを隠そうとした
- 犯人は江利子を殺した後、自分という来客があったことを隠そうとした
そして犯人が「ティファニーは食洗器不可と知っていた美咲」と判明した時点で、前者が確定しました。
つまりこのティーカップがあったことで、「藤堂が美咲の来訪を隠そうとした」と想像できてしまうのです。
架空犯というタイトルの意味は?

殺人犯を庇う為に藤堂が作り上げた架空の犯人ーー…それが「架空犯」というタイトルの意味でした。
ただ架空…「想像で作り上げたもの」だと、実直に事実を調べていく警察の目を欺けず、真犯人が判明してしまいましたね。
江利子は赤子をなぜ生んだのか?

40年前というと「未婚での妊娠」に今より偏見が強かったようですが、江利子はなぜ出産を選んだのか?
まぁここも納得できる理由は描かれていました。
- シンプルに中絶(一つの命を終わらせること)に拒否感があった。
- 母性本能から。
- 藤堂との子かもしれないから「育てられなくても生みたい」と考えた。
- 子供が好きだったので出産したときは「育てたい」と考えていた。
(養父母に養子縁組を進められて無理だったけど、女優の道も藤堂との再会予定もなかったため「いつか」というのもありえた)
【感想レビュー】時代による価値観の違いを感じる

40年前の青春模様、現代の価値観と違うので共感するのが難しい……
江利子(高3)はタバコ吸ってるし。教師が生徒に手を出してるし。
けど山尾はそれを知って「魅力的」とか「そういうこともある」と考えるんですよね。
え!?そこは通報やろ!
…著者の東野圭吾さんが被害者と同じくらいの年齢なので、昔はこれがリアルなんでしょうけども。
まぁそれはさておき。
犯人当てというよりかは、「青春時代から40年かけてやってきた選択・考え方が呼んだ結果」を味わうのが醍醐味の小説ですね。江利子のことですけど。
カモフラージュで二股あかんて。山尾も流されてホテル行くんじゃありません友達の元カノでしょ!
で、捨てていないほうの娘が親に従順なタイプだったから、子育ての苦労をろくに知らなかったのでしょう。
遺伝子がどうの言いながら、自分が生んだ娘の父親は明かさない女。
その末路としてはまぁ、納得もある結末でした。
でもやっぱ登場人物が好きじゃないですね。
「犯人を庇う」という展開は同じ著者の『容疑者Xの献身』を思い起こさせましたが、あちらのほうが男女ともに芯がある感じでよい。
エンタメ性あるミステリを期待するなら、一個前に読んだ『楽園』のほうがおすすめでした。
夕木春央『楽園』ネタバレ解説|「十戒」とのつながりは?続編?
『架空犯』の作品情報(シリーズ・表紙・舞台・メディア化)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 著者 | 東野圭吾 |
| 発売日 | 2024年11月1日 |
| ページ数 | 460ページ(単行本) |
| ジャンル | 警察小説・ミステリー・サスペンス |
| シリーズ | 前作の『白鳥とコウモリ』に続き、シリーズ二作目。 だが、内容的にはそこまで関連深くない。(前作の余韻・伏線等なし) 著者が亡くなったため、架空犯以降続編は無し。 |
| メディア化 | 映画化・メディア化・ドラマ化発表なし。 ※前作『白鳥とコウモリ』は2026年9月実写映画化。 |
| 舞台はどこ? | 東京都昭島市が青春時代のモデル地だが、「都立昭島高校」は実在しない。 |
| 表紙は? | 表紙に写っている建物は、大阪府大阪市北区兎我野町にある実在のラブホテル「ホテルプリンス」。現在も営業。 作品の舞台そのものではないが、江利子と藤堂が出てきたモーテルのイメージと思われる。 |
関連記事(東野圭吾作品の記事)

コメント