志賀直哉『赤西蠣太』を何処よりも分かりやすく解説!

志賀直哉『赤西蠣太』を何処よりも分かりやすく解説! 古典名著

志賀直哉の短編『赤西蠣太(あかにしかきた)』。
コメディ時代劇にもなったこの作品は、“伊達騒動“という、江戸時代に起こったお家騒動を下敷きにした作品です。

※お家騒動というのは、大名家の内紛のこと。現代で使われる家族内のいざこざとは少し意味合いが変わってきます。

この記事では

  • 難しい用語を説明
  • 「赤西蠣太」の分かりやすいあらすじ
  • さらに現代風にわかりやすくしたあらすじ
  • 読みどころ

を解説していきます!

読む前に知っておきたい情報

チェックリスト

伊達(だて)騒動

江戸初期、仙台藩(現在の宮城県全域+岩手県や福島県にも及ぶ)の伊達家に起こったお家騒動。

1660年、藩主の伊達綱宗つなむねが悪い行いにより幕府から隠居を命ぜられ、

2歳の亀千代が家督を相続することに。

しかし後見人である叔父の伊達兵部少輔宗勝が、家老原田甲斐宗輔かいむねすけらと横領を企てたとして、伊達安芸宗重だてあきが幕府に訴えた。

1671年、大老・酒井忠清ただきよ邸での審議が終わったころ、宗重だてあき宗輔むねすけに斬られ、宗輔も殺害された。

甲斐一家も切腹を命ぜられ断絶した。

腰元

上流の商家の人々の側に仕えて雑用をする侍女。

腸捻転(ちょうねんてん)

腸がねじれてしまう状態。血液や酸素が腸にうまく行き渡らず、腸の組織が傷ついてしまう可能性がある。

その結果、強い腹痛や吐き気、嘔吐(おうと)などの症状が現れる。

あらすじ

城

主人公は赤西蠣太。

白石(宮城・しろいし)の殿様の命を受け、伊達一門の伊達兵部宗勝ひょうぶむねかつの屋敷に潜り込んでいたスパイの侍です。

30代半ばの醜男!

蠣太は敵の悪事を綴った密書がおおかた完成した為、白石に帰ることになりました。

しかし怪しまれないよう暇をもらうためには、周りを納得させるための動機が必要です。

そこでスパイ仲間・銀鮫鱒次郎(ぎんざめ ますじろう)の提案で、美しい腰元・小江(さざえ)に艶書(ラブレター)を送ることに。

「フられて面目がつぶれたため居られなくなった」というのを、暇を貰う理由にしようと目論みます。

蠣太は苦労して艶書を書き上げ、それを小江に渡します。

しかし、小江の返事は思いがけないものでした。

「私には前から貴方に対する或る尊敬がございました。」

二度の手紙により、今は結婚まで考えているというのです。

衝撃展開!!

しかし蠣太は、一度手紙を拾われている老女・蝦夷菊(えぞぎく)に、痴情におぼれたことを詫びる書き置きを残し、屋敷を後にしました。

ここで駆け落ち…とはならないようです。

伊達騒動が終わってから蠣太は本名にかえります。

同じく変名していた鱒次郎は殺されたようです。

蠣太と小江の恋の行方は?

「昔の事で今は調べられない。」と、結末は読者にゆだねられて終わります。

志賀直哉は私小説(実体験を元にした小説)も書く文豪。

故に史実を元にして作成している以上、結末を創作したくなかったのかもしれませんね。

現代風にあらすじを要約

手紙

上のあらすじでも難しい人向けに、さらにあらすじを現代風にして要約するとこちら🔻

潜入捜査をしていた蠣太(かきた)は、仕事がひと段落ついたので本部の白石(しろいし)に戻ろうとする。

しかし潜入先を出て行くには、怪しまれない理由が必要だ。そこで採用されたのが、同僚の鱒次郎の提案「女に振られたことにしよう!」というもの。

蠣太は小江(さざえ)という侍女に艶書を送る。
醜い男から美女へのラブレター。フラれるに決まってる!と思う蠣太だったが、小江(さざえ)の反応は
「えっ……OK??」

いやでも…帰らないと。気持ちをもてあそんでごめん。
迷いつつ白石に戻る蠣太。

この後どうなったかって?
資料が無くて分からないんだなーー。想像にお任せするよ。

読みどころ!醜男・蠣太の魅力

将棋

最初は醜男でさえない男として書かれていた蠣太。

しかし自らの腹を裂いて腸捻転を治すなど、並大抵ではない度胸で読者をギャップ萌えさせてくれます。

逆に鱒次郎が美男子、酒好き、女道楽なのも良い♪

見た目ではなく『深みのある性格』で男の魅力を伝える。

志賀直哉の文章が流石です。

然し自分のような醜い男に想われる気の毒さを同情する気持にうそはなかったから、それを思いやる部分などは真実な情のあるともかくも一本の艶書が出来た。

この艶書も、俺様男子たちの中で異彩を放ってたんだろうなぁ~という感じですね。

他にもお菓子を選ぶのは優柔不断なのに鋭く大胆な将棋を指すなど、グッとくるポイントを押さえています。

まとめ

今回は、志賀直哉著作『赤西蠣太』について解説しました。

  • 伊達騒動を下敷きにしたラブコメ
  • 醜男・蠣太の意外な魅力に惹かれる
  • 結末は読者にゆだねられる

正直な感情の描写が魅力的な志賀直哉の作品。
短編集が発売されており、他にも心に突き刺さる短編が収録されています。

個人的には『流行感冒』が一押しです↓

是非、あなたのお気に入りの一作を見つけてみてくださいね。

ちなみに、志賀直哉の作品が青空文庫に公開されるのは2042年元旦です。

まだ先になるため、購入して読むのが良いです。

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