この記事では宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」より名言を4選ご紹介します。
そのセリフや独白があるのはどのような場面なのか?
心に残る名言シーンについても、全文を読んだことが無い人にもわかるように解説していきます。
心洗われる考えが盛沢山なので、是非一度知ってみてください!
※ネタバレが含まれますのでご注意ください。
目次
タイタニック号で亡くなった人の話
銀河鉄道を走る列車には、あらゆるところで亡くなった人が乗車してきます。
その中の三名は、あの有名な沈没豪華客船「タイタニック」に乗っていたため亡くなった人たちでした。
- 6歳くらいの男の子
- 14歳くらいの女の子
- 青年
この青年……男の子と女の子の家庭教師により、船から脱出する際の描写が語られますが、
これがかなり心に残る、衝撃的な語りでした。
救命ボートを求める人々の描写です。
けれどもそこからボートまでのところにはまだまだ小さな子供たちや親達なんかがいて、とても押しのける勇気がなかったのです。
それでも私はどうしてもこの方達をお助けするのが私の義務だと思いましたから前にいる子供らを押しのけようとしました。
けれどもまたそんなにして助けてあげるよりは神のお前にみんなで行く方がほんとうにこの方たちの幸福だとも思いました。
それからまたその神に背く罪は私1人で背負って是非とも助けてあげようと思いました。
けれどもどうして見ているとそれが出来ないのでした。
少し長い引用になりましたが、迷い全部、しんどくとも美しいものなので全て抜粋しました。
それでも、けれども、それから、けれども……と続いているのが混乱を如実に伝えています。
賢治ならではの文章と言えるのが三文め。
これはつまり、
「誰かを押しのけてこの子たち(自分の生徒二人)を生き残らせるより、
そんな罪を背負わせずにみんなで死んだ方が、この子たちの本当の幸せなんじゃないか」
ということです。
一瞬読み間違いかとも思う言葉ですね。
他の人を突き落として生き残らない「正しさ」…
子どもたちが重いものを背負って生きていくことへの不幸を、青年はこのような状況で強く認識していました。
自己犠牲、なんていう言葉では終わらないような、愛情深い葛藤と正義。
「でくの坊になりたい」などと雨ニモ負ケズで述べていましたが、それと通づるところがある心使いです。
しかし青年は、面倒を見ている子供たちの命を最優先すべきなのも分かっていて、
心を凍らせ、「罪」は全て自分がかぶって助けるという覚悟を決めます。
にも関わらず、前にある沢山の小さな命を見て、それは即座に砕けてしまって……
…………………泣くしかありませんね。
混沌とした、けれども美しい、心に残る名言でした。
新聞情報のみで地獄を作り出す賢治
余談ですが……
前回の記事でも書きましたが、テレビがまだ無い時代ですので、賢治は「タイタニック号氷山にぶつかり沈没」のニュースを新聞で知ったわけです。
文字と……あっても黒白写真ですね。
当たり前ですが映画なんて制作されていません。
見てもいない外国の悲劇の一番つらそうなところを想像して、突き抜けた感受性で文章化する。
これが、賢治流の地獄の生み出し方です。
燈台守の言葉「正しい道が幸福」
「なにが幸せか分からないです。ほんとうにどんなにつらいことでもそれが正しい道を進む中での出来事なら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一足ずつですから。」
人生の中で何が本当に幸せなのかを見極めるのは難しい。
けれど、辛い経験も含めて、それが自分にとって正しい道を進んでいる過程で起こることなら、
その経験もまた本当の幸せに近づくための一歩……
辛いことにぶち当たった時に、希望を感じさせてくれる名言です。
いつだって正しさを追い求めている、賢治の考え方がすごく素敵ですね。
法華経を信仰していたそうですが、信心深さが見て取れます。
全人類がこう考えていれば、世の中平和になりそうだな……と思いますが、実際は難しいですね。
それでもこの高潔さに憧れを感じます。
ジョバンニ(主人公)が掴んだものとは?
そして主人公・ジョバンニの名言がこちらです。
「僕もあんな大きな暗(やみ)の中だって怖くない。きっとみんなのほんとうのさいわいを探しに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
ほんとうのさいわい、幸せを探しにこれからの人生をゆく。
銀河鉄道の旅を総括するような言葉。
旅はワクワクするような輝いて切ないものですが、終われば苦しい現実が待っています……
父は漁から帰ってこず、母は寝込み、自身はアルバイト漬け。
友達とも疎遠で、学校ではいじめられ、疲れて眠くてぼんやりする。
これは、子供ながら超ブラックな環境でくたびれていたジョバンニが、人生に希望を見出して勇気を持ち、主人公らしくなった瞬間の言葉なのです。
まぎれもなく、心に染みわたる希望のセリフでした。
あなたのお父さんはもう帰っていますか。
もう一つ、個人的に忘れられない言葉があります。
「あなたのお父さんはもう帰っていますか。」
これは、物語最後に脈絡なく発せられた、カムパネルラの父からジョバンニへの質問です。
ジョバンニはカムパネルラと「どこまでも一緒にいくこと」を願っていました。
「君と一緒に居られれば体を100回焼かれても構わない」とまで言っているとてつもなく強い想い。
ところがこの願いはなんと叶いません。
愛する妹に先立たれた賢治の人生を反映しているのか…
カムパネルラの死を明確に聞いたとき、足は震え、喉は詰まって声が出なかったジョバンニ。
ここで投げ入れられた
「あなたのお父さんはもう帰っていますか。」
これは、漁に出て音信不通だった父親の吉報です。
これを聞いた後、家を出た本来の目的(母親に牛乳を持って行くこと)を思い出し、駆け出したジョバンニ。
一筋の希望と日常があれば、混乱していても駆け出すことの出来る…
きっとこの言葉が無ければ、ジョバンニはずっと佇んでいたのではないでしょうか?
あまりにも不思議な言葉で、強く印象に残りました。
まとめ
【銀河鉄道の夜】名言と心に残る場面から見る宮沢賢治の世界についてまとめると…
- タイタニックでの避難シーン、その独白が心をえぐる
- 灯台守の「ほんとうの幸福」に対する言葉が深い
- ジョバンニを主人公たらしめる「ほんとうに幸いを探しに行く」
- 「あなたのお父さんはもう帰っていますか。」も、不思議な名言
ということでした!
銀河鉄道の夜を読む際は、こちらの記事も参考にしてみてくだいね!▼
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