横溝正史『犬神家の一族』に登場する、白いマスクの男「スケキヨ」。
この記事では
についてネタバレありで解説していきます。
※原作小説と映画版の内容を含みます。
スケキヨとは?
まず「スケキヨ」とは、犬神佐清(いぬがみ・すけきよ)のこと。
犬神家の長女・松子の一人息子です。

第二次世界大戦でビルマ(現在のミャンマー)に出征しており、物語開始後に帰還しました。
ところが戦場で顔に大ケガを負ったスケキヨ。
迎えに行った母・松子は東京で「元の顔とそっくりなゴムの仮面」を作らせてから、
故郷の那須に一緒に帰還しました。(映画では白いゴムマスク)
これが、あの有名な「スケキヨ」です。
ただし……
この白いマスクの男、本物の犬神佐清ではありません。
つまりこのスケキヨという男「偽物」と「本物」が登場するのです。
以下、「偽物」→「本物」順で解説していきます。
偽物スケキヨの正体は青沼静馬
白いマスクを被り、犬神佐清として戦争から帰ってきた男……
その正体は、青沼静馬(あおぬま・しずま)です。
静馬は、犬神佐兵衛と愛人・青沼菊乃との間に生まれた息子なので、
本物スケキヨの叔父にあたり、容姿もそっくりでした。
年齢も同じ29歳です。

スケキヨになりすました動機は?
容姿がそっくりだからと言ってなぜ「スケキヨになりすまそう」となるのか?
この動機はシンプルに復讐でした。
静馬の母「菊乃」は、佐兵衛の遺産を渡したくない松子(スケキヨの母)・竹子・梅子から壮絶ないじめを受けており、

静馬はこれを聞かされていました。
実際、松竹梅子は菊乃が逃げた百姓家にまで襲撃し、
裸で雪の上に転がし、ミミズ腫れになるまで竹箒で打ち、水を何杯もかけ、赤ん坊の静馬の尻に焼け火箸をあてがったそうで……
約30年たっても恨まれているのは仕方ないですね。
だからこそ静馬は本物スケキヨに
「スケキヨの地位(珠世という絶世の美女と結婚でき、莫大な遺産が手に入る地位)を永久に譲れ」
と要求しました。
なりすませてしまう「偶然」も重なった
ちなみにこのなりすまし。
「できてしまった」「実行に至らせてしまった」偶然がいろいろとあります。
→スケキヨとの顔の違いが分からない。
→「怪我した時ひどいショックを受け、昔のことを忘れてしまった」という言い訳が通用した。
→この誤報が「成り代わり」を実行に至らせた。
→だからこそスケキヨは、成り代わった静馬を告発せず、秘密裡に接触した。
◎静馬に脅されていた本物のスケキヨ(佐清)

静馬より遅れて復員し、新聞にて「自分になりすましている人物がいる」と知った本物のスケキヨ。
(犬神家の遺産については、大々的に報じられていた)
スケキヨは「成り代わっているのは、自分と顔の似ている静馬ではないか?」と感づき、顔を隠して帰郷。秘密裡に接触します。
ところがなんやかんやあり、二人は松子が人殺しするシーンに遭遇。
スケキヨは母親・松子が人殺しになったことで弱みを握られ、静馬に脅されて行動することになるのです。
ただ、「脅し」はそこまでひどいものではありません。
正体のバレないように手形を取るときに入れ替わったり……
死体の首を斬りおとす協力もさせられましたが、これは松子の殺人隠蔽として、スケキヨも納得したこと。
静馬は佐智(すけとも)が殺された際も、ある程度人工呼吸を試みるなどしており、悪人ではありません。
【偽物スケキヨの最後】湖から足を出して死亡

静馬(偽スケキヨ)は、「自分が偽物スケキヨである」という事実を松子に話して殺されました。
自分の息子に成り代わられた怒り+30年前の菊乃の恨み
により、カッとなって帯締めで絞め殺しました。
隠蔽工作として、湖の浅いところの泥に、静馬の死体を逆さに突っ込んだ松子。
それが朝になって厚い氷が張った状態で発見されたため、
『犬神家の一族』で一番有名かもしれない、
湖から2本の足が突き出した死体
となったわけです。
ちなみに、この逆さまの死体は犬神家の家宝、
「斧(よき)」
に見立てられています。
これが「斧・琴・菊」に見立てた連続殺人の最後となりました。
スケキヨの素顔は?(本物・偽物)
ここで原作描写からスケキヨの素顔のおさらいです。

たぐいまれなる美貌の持ち主。

元々は「スケキヨと瓜二つ」と言われる美貌の持ち主。
しかし戦争での怪我により「くちゃくちゃに顔の崩れた、おぞましい顔」となっている。
顎から唇までは問題ないが、鼻がドロドロとザクロのように弾けている。おそらくそれより上も。
スケキヨのマスクは原作と映画で違う

ちなみに映画版で有名なスケキヨは、頭からすっぽり被った真っ白なゴムマスクですが……
原作のマスクは、昔の佐清の顔そっくりに作られたゴムマスクです。
これは遺言の内容を知っていた松子が、「珠世にスケキヨへの愛情を持ってもらうため」に作らせたもの。
(珠世に選ばれると遺産相続できるため)
しかし珠世はゴムマスクには惑わされず、
中身の入れ替わりまで感づくような、愛情深さを持った人物でした。
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【本物スケキヨの最後】珠世と結婚の約束

佐清と深く関係するのが、『犬神家の一族』のヒロイン・野々宮珠世(ののみや・たまよ)です。
犬神佐兵衛の遺言では、
実は佐兵衛の孫である珠世が佐清・佐武・佐智の中から結婚相手を選ぶことが、遺産相続の条件になっています。
そしてスケキヨは、遺産を相続した珠世からプロポーズを受けました。
この後「事後共犯の罪」+「ピストルの不法所持」で、しばらくは刑務所に入らなければならないスケキヨ。
当時の法律に照らして考えると、懲役2~3年程度でしょうか……
(執行猶予になった可能性もあります)
しかし珠世は「十年でも、二十年でも待つ」と言ってくれました。
小学生のころから、懐中時計を直してくれるスケキヨに惹かれていた珠世。
佐兵衛はこの未来を想像して、遺言をのこしたのかもしれません。
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『犬神家の一族』スケキヨの正体についてまとめると……
白いマスクで「佐清」を名乗っていた人物の正体は、青沼静馬。
本物の犬神佐清は別に生きていました。
そして湖から2本の足を突き出して死んでいたのも静馬です。
また原作のマスクは、映画で有名な真っ白なものとは少し違い、
昔の佐清の顔そっくりに作られたもの。
「スケキヨ=白い人」というイメージが強いですが、
原作を読むと、あのマスク自体が替え玉トリックに関わる重要アイテムだと感じます。


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