『犬神家の一族』に登場する「斧・琴・菊(よき・こと・きく)」。
犬神家の三種の家宝ですが、作中ではこの3つになぞらえた殺人事件が起こります。
この記事では、
- 斧・琴・菊の意味
- 3つの見立て殺人
- 犬神佐兵衛の遺言状
についてネタバレありで解説していきます。
斧・琴・菊とは?読み方は「よき・こと・きく」
まず「斧・琴・菊」とは、犬神家に伝わる三種の家宝です。
読み方は、
斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)
「よきこときく=良きこと聞く」という、縁起の良い言葉になっています。

ちなみに
斧・琴・菊の実物は、一寸ほどの小さなミニチュア。
しかも金メッキなので、家宝そのものがものすごく高価なわけではありません。
もともとは野々宮大弐が那須神社のために作ったものですが、
佐兵衛が事業を始める際に、
前途を祝福する意味で野々宮大弐から贈られ、犬神家の家宝になった
という経緯がありました。
そして重要なのはこの3つのミニチュアが
犬神家の全財産・全事業の相続権
を意味していることです。
「斧・琴・菊」の見立て殺人
そして作中では、この斧・琴・菊になぞらえた殺人事件が起こります。
| 見立て | 被害者 | 状態 |
|---|---|---|
| 菊 | 犬神佐武 | 生首を菊人形に置かれる |
| 琴 | 犬神佐智 | 首に琴糸を巻かれる |
| 斧 | 青沼静馬 | 逆さまの身体で「ヨキ」を表現 |
「菊」佐武の生首が菊人形に
最初に殺されたのは、犬神佐武(いぬがみ・すけたけ)。
佐武は首を切断され、
菊人形の首とすげ替えられた状態で発見されます。
これが「菊」の見立て。
菊人形とは、菊の花や葉を使って衣装などを表現した人形です。

そこに本物の人間の首が置かれていたわけですね。
『犬神家の一族』の中でも、かなり強烈な殺され方です。
「琴」佐智の首に琴糸
続いて殺されたのは、犬神佐智(いぬがみ・すけとも)。
佐智は絞殺され、
首には琴の糸が巻かれていました。
これが「琴」。

佐武の「菊」に続いて佐智が「琴」。
ここで一連の殺人が、犬神家の三種の家宝になぞらえられていることがハッキリしてきます。
「斧」湖から足を出したスケキヨ
そして最後が「斧」。
『犬神家の一族』といえばコレ!というくらい有名な、
湖から2本の足を突き出した死体です。

一見すると、殺されたのは犬神佐清(スケキヨ)。
しかし実際に死んでいたのは、佐清になりすましていた青沼静馬です。
そしてこの「斧」の見立て。
「逆さまの足が斧っぽいから」ではありません。
ちゃんと「斧(ヨキ)」になる仕掛けがあります。
なぜ逆さまのスケキヨが「斧」になる?

金田一耕助が解いたのは、名前を使った判じ物(文字を使ったなぞなぞ)でした。
↓
湖に逆さに突っ込む
→スケキヨを逆さにするとヨキケス
↓
上半分は水中に沈んで見えない
→「ケス」を消すと……
↓
ヨキ=斧
つまり、
犯人は被害者の身体そのものを使って、「斧」を表現していたわけです。
殺した後に、犯人が頑張って考えたとんちです。
犬神佐兵衛の遺言状を簡単に解説

そして、この「斧・琴・菊」が重要になるのが犬神佐兵衛の遺言状です。
その内容が……まあ、ややこしい。
▶ まず一番重要な相続条件
犬神家の全財産・全事業の相続権を意味する
「斧・琴・菊」を、野々宮珠世に譲る。
ただし珠世は、
佐清・佐武・佐智の3人から結婚相手を選ばなければならない。
つまり、
ということです。
珠世が3人と結婚しなかったら?

珠世が佐清・佐武・佐智の誰とも結婚せず、別の男性を選んだ場合。
珠世は斧・琴・菊の相続権を失います。
一方珠世から選ばれた男性が結婚を拒否した場合は、その男性が犬神家の相続に関する権利を放棄。
(まぁ美人+大金を蹴る男なんてそうそういませんが…)
珠世は別の男性を選べるようになります。
珠世が死亡した場合の相続は?
さらにややこしいのがここ。
珠世が相続権を失う、または遺言状の公表前・公表後3か月以内に死亡した場合、
犬神家の全事業は長男・佐清が相続します。

佐武・佐智は、その事業経営を補佐。
一方、財産は5等分されます。
| 相続人 | 財産 |
|---|---|
| 佐清 | 5分の1 |
| 佐武 | 5分の1 |
| 佐智 | 5分の1 |
| 青沼静馬 | 5分の2 |
ここで突然、青沼静馬が出てきます。
しかも佐清たちより多い。
さらに各自、受け取った額の20%を犬神奉公会へ寄付する条件まで付いていました。
佐清・佐武・佐智が死ぬほど静馬の取り分が増える
そして、この遺言状で特に重要なのがここ。
⚠ 珠世が相続権を失う・死亡した場合
佐清・佐武・佐智の誰かが死亡すると、
その人物が受け取るはずだった財産は青沼静馬へ移ります。
つまり
佐清・佐武・佐智の3人全員が死亡
↓
犬神家の全事業・全財産・斧琴菊のすべてを、青沼静馬が相続。
ということで……
トラブルが起こった最後には、
青沼静馬がすべてを相続する可能性がある。
対して佐兵衛の実の娘である松子・竹子・梅子は、完全に蚊帳の外。
なんだか殺人を誘発しそうな遺言書です。
「斧・琴・菊」は青沼菊乃に贈られていた
そして「斧・琴・菊」と青沼家には、もっと昔から因縁があります。
実はこの家宝、
一度佐兵衛から愛人・青沼菊乃に贈られていました。
それを知った松子・竹子・梅子は激怒。
菊乃の居場所を探し出し、3人で襲撃し……
凄惨な虐めをの末、斧・琴・菊を取り返しています。

そのとき呪いのような言葉を残した菊乃。
「いつか斧・琴・菊がおまえたちの身に報いてくる」
という内容の恨み言を残し、さらに3姉妹をそれぞれ「斧」「琴」「菊」に見立てました。
そして何年も経った後。
本当に犬神家で、菊・琴・斧になぞらえた殺人が起こった。というわけです。
まとめ
『犬神家の一族』の「斧・琴・菊」についてまとめると……
斧(よき)・琴(こと)・菊(きく)は、犬神家の全財産・全事業の相続権を意味するもの。
しかし作中で見立て殺人が起こり、
佐武=菊
佐智=琴
青沼静馬=斧
に見立てられて殺された。
ということでした。
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