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生きると死ぬは両極ではない。志賀直哉『城の崎にて』を解説!正直な感情の死生観

生きると死ぬは両極ではない。志賀直哉『城の崎にて』を解説!正直な感情の死生観 古典名著

志賀直哉『城の崎にて』のあらすじと解説記事です。

兵庫県の城崎温泉を舞台にした、志賀直哉の私小説(実体験を基にした小説)

小僧の神様 他十篇 (岩波文庫 緑 46-2)
岩波書店
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9ページ程の短編で、教科書にも掲載されている有名作です!

手記のような文体で、生きることと死ぬこと…つまり『死生観』への正直な気づきが記されています。

志賀直哉の作品が青空文庫に公開されるのは、没後70年後の為2042年元旦です。
著作権は切れていません。

超簡略あらすじ

城崎温泉街並み

電車事故にあい、養生(体を治すため)に城崎温泉を訪れた「自分」。

蜂や鼠の死に触れ、イモリの死にも哀れみを感じ、生と死の意味を考える。

生と死は、両極ではない。

ここが『城の崎にて』の魅力!

静かな気持ちを考える環境

この小説のオススメポイントは、私小説であるがゆえに正直な感想を取り繕わずに述べている点です。

そして死ななかった自分は今こうして歩いている。そう思った。
自分はそれに対し、感謝しなければ済まぬような気もした。
然し実際喜びの感じは湧き上がっては来なかった。

「私」は、偶然に生き残った喜びに感謝の思いが湧いてきません。

「有難い」状況で「有難い」という気持ちが湧いてこない。

心身が健康でない状態なら、誰しも経験があるのではないでしょうか?

「私」はただそれを事実として述ベます。

一人で城崎を訪れたため、取り繕って偽の感情を述べることはありません。

罪悪感のような負の感情を取り繕わない手記のような文章が、ある意味気持ち良いと感じます。

舞台と物語の背景

志賀直哉は物語の主人公と同じく、山手線に跳ねられて城崎温泉に養生に来たようです。

小説だけ読むと自殺かも…?と思いましたが、事故でした。

故に兵庫県の城崎温泉街のあちこちで、この書籍は販売されています。
お土産屋さん、喫茶店、ロープウェイの売店、本屋の目立つところ…

まぁ主人公は当初の予定より早い、3週間で城崎を去りましたし……

明るい内容でもないので、観光地で推すものとしては若干微妙な気もしますが(笑)

短いことや「円山川まるやまがわ」などの地名も出るのは、旅のお供として良いかもしれません。

辞書

フェータルな傷……致命傷の、命にかかわる傷のこと。

【解説】死生観への気づき

死とは静かなもの

蜂

淋しかった。他の蜂が皆巣へ入ってしまった日暮、冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見ることは淋しかった。
然し、それは如何にも静かだった。

このように「私」は自分が死にかけた故、死んだものに対して親近感が湧いてしまいます。

自分も一歩間違えばこうなっていたと。

心が弱っている中で然し「私」には怯えよりも、淡々と静かな感想を抱いています。

死とは静かなもの。

他の蜂たちは死んだ蜂に目もくれず、そのまま働き続けています。

生死は偶然

イモリ

おどかすつもりで投げた小石が当たり、蠑螈(いもり)は死んだ。
自分は偶然に死ななかった。蠑螈は偶然に死んだ。

殺意はなかったのに、運悪くいもりは死んでしまいました。

山手線にも殺意なんてものはなかったでしょう。何か違えば自分もいもりのようになっていたかもしれない。

「私」は生と死は偶然によるものだと悟ります。

生死は両極ではない

プラス極とマイナス極

生きている事と死んで了っている事と、それは両極ではなかった。
それ程に、差は無いような気がした。

死んだ虫たちに親近感を抱いてしまう「私」。

生きているけれど、生の喜びを噛みしめることもなく、ただ静かに散策して死を見つめています。

「生きる」にも幅があるということ。

生きながら目的なく幽鬼のように彷徨っている人。
死んでいるが印象強く皆の中で残っている人。

「生きる」と「死ぬ」を、プラス極とマイナス極のように両極に置くのは間違っている。

一つの真理への気づきが、そのまま心に留まる感じがしました。

まとめ

志賀直哉の私小説「城の崎にて」を解説しました。

取り繕わずに死生観について素直な気づきを述べている作品でした。

  • 生きるも死ぬも偶然によるもの
  • 死とは静かなもの
  • 生と死は両極ではない

物語の解像度をより深めたいという方は、舞台、城崎温泉を訪れてみるのもおすすめです。

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