この記事では志賀直哉の短編『好人物の夫婦』(読み方:こうじんぶつのふうふ)を解説します。
女中の滝が妊娠していると気づいたとき、夫婦それぞれの反応は……?
日常の中で、信頼関係が試される時が描かれるお話です。
あらすじの要約、登場人物まとめ、妻が震えた理由の解説、感想をまとめています。
『好人物の夫婦』のあらすじを要約!

1カ月半の一人旅を計画する夫(良人)と、それに反対する妻(細君)。
恐らく反対するのは浮気を心配してのことで、良人は諦めました。
そんな中、大阪の細君の姉から手紙が届きます。
そこには祖母の病気が悪化していることが書かれていました。
細君は急ぎ大阪へ向かい、祖母の看病をすることになります。
細君が留守の間、家では女中の滝(たき)が体調を崩し、吐き気を訴えました。
良人は彼女の様子を見て、妊娠を疑います。
しかし相手が分からないため、自分が滝の相手として疑われる可能性を考え、不安に駆られました。
しばらくして細君が戻り、滝の体調について話しあいます。細君も滝の妊娠に気づいていました。
良人が「今回の場合、自分は関係ない」と告げると、それを信じて心底安堵した様子の細君。
内心不安を抱えていたことを認め、涙を流します。
最終的に細君は、医者にみせて、滝のためにできる限りのことをしようと提案。
夫婦に信頼が戻りました。
登場人物まとめ

名前 | どんな人? |
---|---|
良人 (おっと) | 主人公。細君の夫。滝の妊娠を疑われるが、実際には関与していない。 |
細君 (さいくん) | 良人の妻。滝の妊娠を疑いながらも良人を信じる。滝に対して親身に対応しようとする。 |
滝(たき) | 女中。妊娠しているが、相手は不明。良人との関係を疑われる。 |
細君の姉 (文姉さん) | 大阪に住む細君の姉。祖母の病気を知らせる手紙を送る。 |
祖母 | 細君の祖母。肺気腫を患い、細君が看病のために大阪へ行く。 |
清さん | 細君の家族の子供。細君の姉の子供と思われる。 |
門番の妻 | 良人の昔の記憶に登場。妊娠時に悪阻の症状を見せていた。 |
【解説】細君(妻)が震えた理由は?

後から震えが止まらなくなった細君。
これは長い間(4・5日前から)「滝の子供は良人との子ではないか?」という疑念を抱いていたからでしょう。
直接問いただすことはできず、良人が真実を話してくれるのを待っていた細君。
だからこそ、「自分は関係ない」と明確に告げられ、
強い緊張状態からの急な安堵が、身体の震えとして現れたと思われます。
そしてこの時、細君は「夫を信じている」と言いながらも、無意識のうちに疑っていたことに気づきました。
自分が疑ってしまったことへの自己嫌悪や後悔。そんな強い感情の揺れ動きも、体の震えにつながったのかもしれません。
短い間に感情が強く揺れ動いた、その反応が体に現れました。
読んだ感想

表では冷静に振る舞いながら、内心めちゃくちゃ揺れている良人(おっと)も細君(さいくん)が結構好ましいお話でした。既に夫婦だけど恋愛ものでした。
疑うけど信じたい、信じてるけど不安…というような、この微妙な感情のせめぎ合いが人間臭くて良いです。
それにしても志賀作品の「夫」は、割と浮気癖がありますね…
今回も、良人は真っ白ではなく「白に近いグレー」。そして前科ありでそれを隠していないということで……ちょっと反省したほうがいいと思います。
中々ハッピーエンドでした。
夫婦の絆って、なんだかんだそうやって乗り越えていくもんだよなぁと感じる作品です。
滝の事はあまり描かれませんでしたが、「好人物の夫婦」というタイトルが滝視点だとすれば嬉しいですね。
まとめ
『好人物の夫婦』についてまとめると……
- 女中の滝が体調を崩し、妊娠が疑われる。良人は自分が疑われることを恐れ、不安を抱く。
- 細君が帰宅後、滝の妊娠に気づき、良人を疑うが信じようとする。良人が「自分は関係ない」と告げると、細君は涙を流し安堵。
- 夫婦の信頼が回復し、滝を医者に診せることを決めた。
ということでした。
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