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『小僧の神様』なぜ淋しい?奥深い感情を解説。志賀直哉の短編小説

『小僧の神様』なぜ淋しい?奥深い感情を解説。志賀直哉の短編小説 古典名著

志賀直哉著作の短編『小僧の神様』。

一見シンプルな物語の中に、善意と偽善の微妙な境界線を描き出しています。

この記事では

  • 「小僧の神様」はどんな物語なのか?あらすじを簡単に要約
  • 寿司を奢った側の衆議院議員Aは、なぜ「変に淋しい」という感情にさいなまれたのか?考察

をお届け。

物語の背景やキャラクターを深く掘り下げ、この複雑な感情の根底にあるものを解説します。

あらすじと概要

寿司

まずはあらすじ・物語の舞台・登場人物について簡単に解説します。

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簡単なあらすじ

寿司屋でお金が足りず、食べずに出ていった小僧。

それを見ていた衆議院議員のAは、後日偶然再会した折に、小僧に寿司をご馳走する。

先に店に入って勘定を済ませ、小僧だけ放り込んで自分は店を後にした。

Aはよいことをしたはずなのに、変にさびしく嫌な気持になる。

一方小僧はAのことを神様と思い、苦しい時に思い出すようになる。

人を喜ばすことは悪いことではない。自分は当然或喜びを感じていいわけだ。
ところが、どうだろう、この変に淋しい、いやな気持は。
何故だろう、何からくるのだろう。
丁度それは人知れず悪いことをした後の気持に似通っている。

偽善と善の境界線がはっきりしない故の後味の悪さ。

その絶妙な感情を表現しています。

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物語の舞台

神田から京橋。東京です。

1920(大正9)年に書かれているので、物語の時代もそれくらいだと思われます。

登場人物

1900年代の秤

仙吉(せんきち)…… 13~14歳の小僧。
神田の秤屋(はかりや)で奉公をしている。

はかりや…計量用の秤(はかり)・それに関連するものを売る店。現在も減りましたが残存します。

奉公…勤めること

衆議院議員A……若い貴族院議員。彼の視点で物語が進む。
屋台鮨(やたいずし)に赴いた際、仙吉を見かける。

作者……物語の最後にいきなり現れる。志賀直哉作品あるある。

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【考察】なぜ「変に淋しい」のか?

淋しいイメージ

小僧に寿司をおごったけれど、その後変に淋しい感情にさいなまれるA。

淋しい感情…つまりマイナス感情と考えてよいでしょう。

「善」のつもりでやったけれどあれは「偽善」ではなかったかな……?とくよくよしている風に見えます。

挙句の果てに

「俺のような気の小さい人間は全く軽々しくそんな事をするものじゃあ、ないよ」

と、もうやらない意向を示してしまいます。

なぜでしょうか?

これには三つの理由が考えられます。

「ほどこし」になるから

パンを施す高貴な人

Aの「衆議院議員」という立場を考えれば、「寿司をおごる」という行為は「ほどこし」になります。

例えばその辺のおやじが「小僧、鮨食いてぇのか?その年の頃は大変だよなぁ。一皿だけだぞ?後は自分で稼いで食べろ」

と鮨をおごってくれたらどうでしょう?

対等な立場の善意、という感じがしませんか?

つまり、衆議院議員のAが小僧との立場差を意識しているからこそ、後ろめたさを感じるのではないかと思います。

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寿司がぜいたく品だから

例えばこれが「餓死しそうな人へのパン」ならば話は変わってきたように思います。

現代よりももっと”質素倹約の精神”を美徳としていた時代の話。

「寿司」というぜいたく品というのが、また微妙な気持ちにさせるのかもしれません。

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Aの性質によるもの

人の感情は千差万別。

世の中には良いことをして良い気持ちになれる人ばかりではない。

ということです。

同じ出来事であっても人によって、或いは精神状態によって感じかたが違う。

これは志賀直哉の他作品「流行感冒」や「城の崎にて」でも暗示されています。

流行感冒とは?:志賀直哉『流行感冒』のあらすじと読書感想|人間の深みを知る物語
城の崎にてとは?:生きると死ぬは両極ではない。志賀直哉『城の崎にて』を解説!正直な感情の死生観

【感想】これが最重要

彼は悲しい時、苦しい時に必ず「あの客」を想った。
それは想うだけで或慰めになった。

Aの謙虚ともいえる複雑な感情は共感できます。

それでも私は、一番重要視するべきは受け取った側の気持ちだと思うのです。

この一時の幸運を、小僧は未来の希望にして生きていきます。
「あれは神様だったのではないか」とまで思います。

相手が喜ぶのが分かっているなら、一時の後ろめたい気持ちは見ないふりをする。
それも勇気の一つではないでしょうか。

小僧が喜ぶのが分かっていても尚考えてしまう……

それは、本人が言っていた通り「気の小さい」男という事です。

『小僧の神様』は青空文庫にある?

青空

著作権保護法の改正により、志賀直哉の作品が青空文庫に公開されるのは『2042年元旦』となりました。

よって小僧の神様は、青空文庫にはありません。

つまりネットに上がっているものは違法アップロードになります。

図書館で読む、或いは購入をオススメします。

まとめ

今回は、志賀直哉著作『小僧の神様』について解説しました。

  • 善と偽善の境界線
  • 大事なのは受け取った者の気持ち

正直な感情の描写が魅力的な志賀直哉の作品。
短編集が発売されており、他にも心に突き刺さる短編が収録されています。

是非、あなたのお気に入りの一作を見つけてみてくださいね。

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