『セロ弾きのゴーシュ』は、チェロ弾きの主人公ゴーシュが、動物たちとの奇妙なやり取りを通じて成長していく物語です。
彼がどのようにして演奏技術を高め、最後には大きな成功を収めたのか……?
イラスト付きでわかりやすく解説していきます。
この記事で分かること🔻
- 「セロ弾きのゴーシュ」の簡単なあらすじ
- 名言三選
- 作品解説・考察(作者の伝えたかったこと)
- 読書感想
目次
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『セロ弾きのゴーシュ』簡単なあらすじと内容
まずは「セロ弾きのゴーシュ」のあらすじを、イラスト付きで簡単に説明します🔻
町の活動写真館の人気者であるゴーシュは、音楽団でチェロを弾いていました。
しかし、彼はあまり上手ではなく、いつも楽長に叱られていました。
演奏会まであと十日、演目は「第六交響曲」。
ゴーシュは町外れにある水車小屋の自宅に帰ると、毎晩必死にチェロの練習を続けます。
するとなぜか次々と訪問者が現れて……
- 「トロイメライ」をリクエストする三毛猫
- 音階を習いに来る小鳥の朝公
- スティックを持参して「愉快な馬車屋」を合奏する子狸
- そしてチェロの音で子どもの病気を治そうと訪れる野鼠の母子
これらの不思議な訪問者との対話を通じて、ゴーシュは自分の演奏に足りない部分を徐々に自覚していきます。
そして迎えた演奏会の日、ゴーシュは楽長からアンコールを求められ……
かつて三毛猫に聞かせた「印度の虎狩」(賢治の創作曲)を見事に演奏し、大きな賞賛を浴びるのでした。
「セロ弾きのゴーシュ」の名言三選
「セロ弾きのゴーシュ」名言を3つ、厳選してみました。
この物語の魅力が詰まった部分になります。
「ぼくらならどんな意気地ないやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」
カッコウのセリフです。
何かを成し遂げるためには、どんなに苦しくても最後まで努力を続ける……というメッセージが込められています。
同じく宮沢賢治の作品である、よだかの星とつながるところのある名言です。
「やろうと思えばいつでもやれたんじゃないか、君。」
ゴーシュが自分の力を発揮できたことに対する楽長の称賛の言葉です。
「やればできる」という前向きなメッセージ。
自分に自信を持ち、挑戦することで成果を出せることを教えてくれる名言です。
やはりこの作品、熱血系ですね。
「ああかっこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんじゃなかったんだ。」
ゴーシュがカッコウに向けて語るこの言葉。
彼が過去の自分の行動を反省し、謝罪するシーンです。
自分の過ちを認め、後悔していることが伝わる……一つ大人になったことを感じさせ、じんわりとくる言葉です。
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【解説】動物それぞれの役割は?
ゴーシュを訪ねてきた動物の、それぞれの役割とはなんでしょうか?
最初の練習の日、ゴーシュは楽長にひどく叱られました。指摘されたのは次の三点です。
- 音程をしっかりせよ
糸が合ってない。 - リズムを正確にとれ
外の楽器とぴたっと合わず、靴の紐を引きずってみんなの後をついてくるみたいだとのこと。 - 表情をつけよ
曲の内容をよく理解し、情感豊かな演奏をせよ。
動物たちは、これらの注意点をしっかり練習させてくれたのです。
一つずつ順に解説していきます。
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感情を乗せることを教えてくれた三毛猫
猫は「そうお怒りになっちゃ、おからだにさわります。それよりシューマンのトロメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから」と言います。
ドイツのロマン派を代表するロベルト・シューマンの「トロメライ」。
ドイツ語で「夢想」を意味するこの曲は、ピアノで演奏されるのが主ですが、チェロやヴァイオリンでもよく演奏されます。
心を癒し、夢見るようなメロディー。
猫は、いい音楽を聴かせるには、演奏者が心穏やかであること、そしてメロディーの美しさが大切だと言っているのです。
しかし、疲れ果て、いらだっていたゴーシュは、生意気なことを言うなと「印度の虎狩」を荒々しく弾き始めます。
狩人と虎の激しい戦いの情景が描かれるその演奏に、猫は狂ったように走り回りました。
ゴーシュは、知らぬ間に自分の感情を演奏に込めることを学んでいたのですが……
基礎がまだ十分でないため、この時は楽長から注意を受けます。
音程レッスンをしてくれた鳥(かっこう)
次に思いがけず、カッコウから音程の練習を教えてもらうことになりました。
音程が正確に弾けるようになると、次は音の高低や強弱、テンポ・音色によって表現がまったく変わることを学ぶ必要があります。
たとえ同じドミソを弾いても、いろいろな表現方法がある…ということですね。
カッコウは「かっこう」という鳴き声で、その練習を手助けしてくれました。
子狸から学ぶリズム感
メロディーや音程と同様に、リズムも音楽の基本要素として欠かせません。
ゴーシュは、リズムを習いに来た子狸を教えるつもりが、逆にリズムの重要性を彼から教わることになりました。
そして、二番目の弦が調子が悪いことを子狸が指摘してくれたおかげで、楽長に「糸が合っていない」と言われた原因がようやく判明したのです。
ゴーシュが「狸汁にして食べるぞ」と脅しても、子狸は気にも留めず、無邪気にゴーシュの肩を叩いて励まします。
リズム感を磨き正確に表現するためには、すべての雑念を捨て、心を無にして集中することが必要……
それをゴーシュは、無意識のうちに学んでいました。
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野ねずみの親子がもたらした癒し
最後にやってきたのは、野ねずみの親子。母ねずみからまさかの話を聞かされます。
なんと、ゴーシュが弾いたチェロで、兎のおばあさんや狸のお父さん、さらにあの嫌なミミズクまで病気が治ったとか……これにはゴーシュもびっくりです。
気づけば、ゴーシュは正確な音程できれいなメロディーを弾き、リズムもバッチリで感情豊かに曲を表現できるようになっていました。
音楽で一番大事な音程をしっかり掴んで、聴く人に感動と癒しを与えられるようになっていました。
動物たちが来てくれなかったら、ゴーシュはここまでうまくならなかったかもしれません。
動物たちは、安らぎを求めたり、リズムや音程を習いに来たり、病気を治してもらうためにゴーシュのところに来ていました。
でも本当に教わっていたのはゴーシュのほうでした。
【解説】セロとは?曲や楽器について
「セロ弾きのゴーシュ」の世界をより深くイメージするため、ゴーシュの奏でる音楽や楽器、所属する楽団について解説します。
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チェロ(セロ)とはどんな楽器?
チェロは、弦楽器の一つで、ヴァイオリンよりも大きく、深く豊かな音が特徴です。
低音から高音まで幅広い音域を持ち、オーケストラや室内楽・ソロ演奏など、いろんな場面で活躍します。
座って弾くのが特徴で、床に設置したエンドピンで楽器を支えながら、弓で弦を弾いて音を出します。
また、昔の日本では、チェロのことを「セロ」と呼んでいました。
明治から大正時代くらいまでの表記で、「チェロ」の日本語化された名前ですね。
当時はこの名前で親しまれていたようです。
余談ですが、ゴーシュの名前にはフランス語で「左」・「不器用な」という意味を持ちます。
もしゴーシュが左利きだったのだとすると……
弓は右手でもつので、人一倍練習する必要があったのでしょう。
ゴーシュの所属する「金星音楽団」とは?
ゴーシュの所属する楽団とはどんなものだったのでしょうか?
大正から昭和の初め頃、田舎の小さな町にも映画館があり、当時は「活動写真館」と呼ばれていました。
娯楽が少ない時代ですので村の人たちも遠くからわざわざ集まり、いつも賑わっていました。
映画の音楽は、小さいところでは蓄音機を使いますが、ほとんどの場所には「ジンタ」と呼ばれる小規模な楽団がいて、
観客席の前にある小さなボックスに入り、映画に合わせて演奏していました。
ゴーシュが所属している金星音楽団も、その町の活動写真館の専属楽団です。
第六交響曲はどんな曲?
第六交響曲とは、ベートーヴェンの「田園」のことです。
しっかりとした楽器編成が揃っていないと演奏できない曲です。
宮沢賢治自自身もセロを弾いており、洋楽のレコードをたくさん持っていたとか。
特にベートーヴェンが好きだったのかもしれません。
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【疑問】猫に謝らないゴーシュ
主人公であるゴーシュの、三毛猫に対する八つ当たりは中々のものです。
- トマトを持ってきた三毛猫に逆ギレ
- 「印度の虎狩」を弾いて三毛猫を驚かせる(同じネコ科が捕まる曲だから恐ろしい?)
- 三毛猫の舌でマッチを擦る
ところが、物語内でゴーシュは猫に謝っていません。
ゴーシュが謝ったのは最後、実際そこにいるわけではない「かっこう」です。
しかしながら、物語としてはそこで終わっているというだけで、その後猫に謝った可能性は十分にあるでしょう。
個人的には、そこは脳内保管で良いかなと考えています。
作品を通して作者が伝えたいこととは?主題・メッセージ
「セロ弾きのゴーシュ」で作者・宮沢賢治が伝えたいこととはなんでしょうか?
いくつかあるであろうそれを、考察していきます。
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本気で努力している人に天啓が起こる
意図しない動物たちの来訪が、演奏の上達に繋がったゴーシュ。
これを見ると、偶然に見える出来事も、実は何かしら意味があるんじゃないか…と思えます。
人生っは長いですし、ふとした言葉や行動がきっかけで、迷いが晴れたり、新しい道が見えてきたりすることがよくあります。
突然のトラブルがかえっていい結果をもたらすことだってあります。
これがまさに「塞翁が馬」というやつです。
他の言い方であれば天啓、仏さまの導き、運命などと呼ばれます。
ですがこういうことは、ただ待ってるだけじゃなく、本気で悩んで努力してる人にだけ起こるものです。
ゴーシュも、考えに考えて、ヘトヘトになるまで練習を続けてたからこそ、動物たちとのやり取りを通じて成長できた……
それが一つの賢治からのメッセージではないでしょうか?
健康の大切さ
そして唐突ながら強いメッセージ性を感じるのは、ラスト。
楽長が「いや、体が丈夫だからこそできることだ。普通の人なら命を落とすよ」と言う場面です。
この言葉、一瞬、急になんだ?という感じもしますが、実は宮沢賢治の健康に対する切実な思いが表れている可能性があります。
この童話は、大正14年ごろに書かれたとされていて、宮沢賢治が病気の中で推敲を重ねた未発表の作品です。
どんなに気力があっても、体が弱ってしまうとそれだけではどうにもならない。
そんな自身の身をもって感じてることが、楽長の言葉に込められていると思われます。
読書感想文を書いてみた
ゴーシュは毎晩遅くまで練習し、動物たちとの交流を通じて少しずつ成長していきます。
その過程は、私たちが日々の勉強や仕事、部活動などで、努力を積み重ねていくことに通じるところがあります。
特にゴーシュが、自分の力不足に気づきながらも諦めずに頑張り続ける姿には感動しました。
最初は楽長に叱られてばかりでしたが、最終的には演奏で観客から拍手を受けるまで成長します。
このように、本気で取り組めば、どんなことでも成し遂げられるという前向きなメッセージは、素直に励みになると感じます。
ゴーシュが演奏を通じて感じた達成感や喜びといったようなものを、私たちも日常生活で感じられるように目指したいと思います。
宮沢賢治のおすすめ関連商品
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ここでは購入者のレビューや簡単な解説、お買い得情報等も含めて紹介していきます。
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アニメ
宮沢賢治作品、そして宮沢賢治自身については多数映像化されています。
アニメ化されたのが
- 銀河鉄道の夜(1985年度の毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞)
- セロ弾きのゴーシュ(1981年度の毎日映画コンクール大藤信郎賞を受賞)
- グスコーブドリの伝記
です。
「アルプスの少女ハイジ」の演出も担当されていた高畑勲さんが監督をされた傑作です!
まとめ
- ゴーシュは、動物たちとのやり取りを通じて成長し、最終的に成功を掴む。
- 名言から学べるメッセージは、努力を続けることの大切さや、自分の行動を反省することの大切さ。
- 音楽の技術だけでなく、感情やリズムなどを学び、演奏がどんどん上達していく過程が描かれている。
- 健康や体力の重要性を宮沢賢治が強調している点にも注目。
是非、『セロ弾きのゴーシュ』を読んでみてください!
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