「Q.なぜ本庄絆は第一回『Q-1グランプリ』の最終問題において、 一文字も読まれていないクイズに正答できたのか?」
この記事では小川哲さんの著書、『君のクイズ』について
- あらすじ・登場人物
- 何故「面白くない」という意見があるのか
- 個人的感想
をお伝えしていきます。
2023年本屋大賞6位の入賞作です!
あらすじ
『Q-1グランプリ』決勝戦。クイズプレーヤー三島玲央は、対戦相手・本庄の不可解な正答をいぶかしむ。
彼はなぜ正答できたのか?
真相解明のため彼について調べ決勝を1問ずつ振り返る三島は──。
一気読み必至! 鬼才の放つ唯一無二のクイズ小説。
主な登場人物
主人公:三島玲央……高校生からクイズ一筋。
キーマン:本庄絆(男)……不可解な正解をしたテレビタレント。
キーマン:坂田泰彦……番組の総合演出
簡単な感想
後味サッパリの非常に読みやすい推理小説です。
最初に提示される問いに関して追求していく分かりやすさ。
過去の回想と、クイズ中の回想と、現在が混ざって物語は展開されます。
主人公三島の性格も、読む人を選ばないサラリとしたものなのが良いですね!!
何故「面白くない」という意見があるのか
「君のクイズ」で検索すると、第二検索ワードに「面白くない」という言葉が出てきます。
これについて個人的な考察を記述します。
タイトル通りこちらはクイズをテーマにした作品。
主人公がクイズを生きがいとしている為、物語中に様々な豆知識・雑学が登場します。
ここに興味を持てるかどうかで、おそらく作品への評価は大幅に変わってくるでしょう。
「へぇ~なるほど!面白いなぁ」と思いながら読むか。
「雑学はどうでもいいから、物語の真相を早よ」と思いながら読むか。
後者のスタイルで読むと「面白くない」という意見になってしまうのかもしれません。
ネタバレ感想
第一回『Q-1グランプリ』、栄えある初代王者は本庄絆です!」
MCのその言葉で僕はようやく事態を把握した。
本庄絆が勝ったのだ。彼は問題が読まれる前に押して、正解したのだ。
テレビ番組『Q-1グランプリ』決勝戦。
敗れた三島に投げかけられる不可解なクイズ。
この謎を解き明かす、推理小説です。
僕は彼がなぜ泣いたのか、その理由を見つけようとした。
彼はこの結末に不満をもっていたのだろうか。それとも、年上の出演者たちに囲まれ、質問攻めにあい、怖くなっただけなのだろうか。
本庄の不可解な”押し”について、番組からの説明がなされないまま解散に。
それを伝えにきた男性スタッフについての三島の疑問。
謎を放置できない追求心がうかがえます。
尚、後日発表された番組側の意見は……
外部スタッフによる調査の結果、演出麺でいくつか不適切な部分があったことがわかりました。この結果は直ちに不正を認めるものではありませんが、……
という言い訳がましいもの……番組の好感度はダダ下がりですね。
ただ、戦っていた当人である三島は、最終問題までヤラセはないと思っていました。
この直観があるからこそ不可解さが放置できず、調査に乗り出します。
彼は自らの保身も考えつつ動いていますが、それよりも純粋なリスペクト……まっすぐなクイズ愛が光ります。
主人公がこんな性格なので、とても読みやすい一冊です。
太陽が夜の海に溶けてゆっくりと沈んでいく。やがて太陽は夜の海の深い底へ潜ってしまう。人類で初めて「深夜」という言葉を発した人の心と僕の心が、長い時を経てつながる。
話の大筋からは反れますが好きな部分です。
「深夜」という言葉について実感を得ること。
何故「深」という字が使われているのか?
曖昧な疑問を投げ置かず、イメージを深めること。
真似したいと思います。
〇一一年三月十一日、本庄絆は山形県鶴岡市にいた。
「ママ、クリーニング小田原よ」
ゼロ文字回答で本庄が答えたのは、山形県のローカルクリーニング店CMでした。
住んでいた県のCM……?
偶然じゃない。やっぱりインチキでは……?
本庄絆の周囲に聞き取り調査開始です。
本当に探偵みたいなことをしてるなぁ
- 東日本大震災の半年前くらいから不登校
- 壮絶ないじめにあう
- サッカークラブの揉め事に巻き込まれたのがきっかけ
- 震災後再登校するように
- 昨年末はクラス会まで行った
いじめにあったクラス会に行くのはどんな心境なのか。
三島は復讐を死に行ったのではないかと考えます。
もしそうなら、随分勝気な本庄像が浮かびあがってきます。
でも、誤答したというのに、僕は言いようのない充実感に満たされていた。
クイズが生きているーーそんな気がしたからだった。
クイズは世界に連動して生まれ変わっている。
問題を聞いて答えることの繰り返しで作業的な面もある分、進化を肌で感じることで嬉しくなるのはとても納得でした。
僕にとって「美しい早押し」というのは、問題が確定した瞬間に押し、百パーセントの自信を持って正解を答えることだ。
この本はクイズについての美学が学べる本でもあります。
数学とかでも似たような事が言われてますよね
応えにたどり着けたなったのは、単純に運が悪かったからだ
次から次へと流れるクイズの中、切り替える力…ひいてはメンタルも鍛えられるのではないか、と感じました。
クイズをしているのに何も答えないのはもったいない。
間違っていると思っていても、とりあえず口に出してみる。
確かにクイズというのは、間違えることに慣れる競技ですね。
この番組において、本庄絆はそれまでの姿と大きく違っていた。
本庄のクイズにおける軌跡をたどっていきます。
『Qのすべて』第4回で覚醒した本庄。
番組のプロデューサーが坂田なのも気になる…
もしかしたら、あの最終問題は、ゼロ文字で確定していたのかもしれない。
検証を重ね、様々な要因を考慮すると『Qのすべて』での、本庄の一文字押し正解はヤラセではないかもしれない。ならば今回もーーー。
推理小説のように、思いつきもしないような答えが導き出されるのではないかとワクワクしてきました!!
ちなみに、正確にはガガーリンは「地球は青かった」とは言っていない。彼は「空はとても暗かった一方で、地球は青みがかっていた」と言った。
へぇ~~~
雑学として知ってよかった部分。
人づてに伝わる内に単純になったのだろうと思います。
三島も言っていますが、私も此方が好きです。
「ピンポン」という音は、クイズに正解したことを示すだけの音ではない。回答者を「君は正しい」と肯定してくれる音でもある。
失恋も糧にして、クイズの正解音を借りて立ち直っていく三島。
強い人間だなぁと感じます。
ピンポンという音は、誰かの慰めより精神安定剤として役に立つのかもしれません。
無くしても別の自分を肯定してくれるものを作ると、立ち直りが早いのは納得です。
それは集中せざるを得ない、クイズ的な、勝手に流れていく作業的なものがいいのでは無いかな……と考えました。
ネット上での僕は、いつの間にか「小さいころからクイズのために生きてきて、そのための努力を惜しまなかったキャラクター」になっていたーー
SNSの不可解さ、妄想の迷惑性について問うています。
実在する人の妄想を垂れ流してはいけませんね。
他人の精神衛生を尊重しましょう。
お互いさまであったのだ、と僕は気が付く。
(略)
千葉市出身の僕だけが答えられる問題も用意されていた。
お互いの出身である山形と千葉に関する問題が決勝戦で出ていました。
これはちょっと主人公気づくの遅い……
と思わないでもないですが……作為的だと明らかになりました。
何故こんなことをしたのか。
それに関する答えを、総合演出坂田の特質から推測します。
生放送ではカットという技術が使えない。(略)
かといって、簡単な問題ばかり出すわけにもいかない。簡単な問題からは「超人的な回答」は生まれない。
だから僕自身が問われたのではないか。
そもそもの話、生放送でクイズって向いていない。
面白くする為の、しかし万人に受け入れられる訳ではない仕掛け。
誤答はさせられないけど、「え??」ってなるような問題を解いてもらいたい。それでこんな問題構成になったってわけね……
クイズは自身を肯定する。 それが体現され過ぎていた今回の収録。 答えは近づいてきました。
そして坂田をよく知っていた本庄は、番組中にそれに気づいていた可能性が高いです。
最終問題で「問題ーー」と口にしたあと、問い読みのアナウンサーは息を吸い、次の言葉を発しようと口を閉じていた。
日本語を発音するとき、口を閉じるのはマ行とバ行とパ行だけだ。
実は一文字読まれていたっ……!!
競技かるたみたいですね。
本庄は耳がいいのか目がいいのか……三島には見えなかった一文字を掴んでいた可能性がでてきました。
そして出てきた、『Qのすべて』での最終問題と同じ問題の解答歴ーーー
YouTubeチャンネル「クイズ王の絆ちゃんねる」開設と、月額会員制オンラインサロン「絆のホンネ」の開始が告知されていた。
??????
ここにきて、音信不通だった本庄絆がツイッターに浮上します。
しかしこれは……なんとも話題を利用したコンテンツ名……この炎上騒ぎを商売に使うつもりか……?
あれ?もしかしてアクドイ人?……という感じの時に
「今夜は時間ありますか?」と来た
三島と本庄の対面!やっと真実へたどり着きます。
結論を言いますと、三島の推理はだいたいあっていました。
しかし問題傾向については放送前から予測していたそうです。
自らが気づいていたこととは言え、あまりにハンデが大きい。
だから私は出演者全員の研究をしたのです。
ここで伏線回収です。
ここから坂田と本庄の確執が明かされていきます……。
最終問題も「底意地の悪い」総合演出坂田の性格を鑑みたアンサー。
長年の付き合いだからこそできた技。 やはり若干インチキですね。
こんな混沌の中に巻き込まれた三島はとんだ貧乏くじです。
本庄は「クイズビジネス」をするビジネスマンでした。
いじめや震災のストーリー、今まで黙秘していたことをからミステリアスなキャラを想像していただけに、失望が半端ない……
情緒を期待するだけ無駄な人物でした。
ネット上のファンが勝手にする妄想話を利用する。
ある意味現代社会での強かな生き方だとは思いますが……
三島とは相容れないようです。
今回の結果は、ヤラセではないけれど思惑やからくりがありました。
生活費は別の職業から得て、純粋にクイズを楽しむ男にはやるせない結果でしょう。
これだけ熱意をかけたのにがっかりです。
僕は『Q-1グランプリ』と本庄絆のことを頭から追い出した。
大昔に、クイズに強くなるために「恥ずかしい」という感情を捨てたときみたいに、綺麗さっぱり忘れ去った。
本庄絆の選んだ道もまた、クイズの答えの一つだと思ったからだった。彼はもう、僕の中で存在しない。
しかし。
何かに没頭する人の強さというのはこういうところではないだろうか……という終わり方です。
嫌な出来事があったときに、好きな事に絡めて追求し、答えを出してスッキリさせ、後ろ髪をひかれるような思いも持たずに今まで通りに戻る。
思惑溢れる世間の中で、ぶれない軸を持って生きる。
これが幸せな生き方ということではないでしょうか。
まとめ
- 本庄絆が「Q-1グランプリ」の最終問題で、一文字も読まれていないのに正答できた理由は、番組の総合演出である坂田の特質を理解し、放送前から問題の傾向を予測していたため。
- クイズに対する深い洞察と経験により、驚異的な正解が可能となった。
- 三島との対比で、本庄のビジネス的な一面と、クイズへの純粋な愛が対照的に描かれている。
- クイズの美学や奥深さ、そして登場人物たちの思惑が絡み合う推理小説として、読者を引き込む展開が魅力。
ぜひ、このクイズの世界に飛び込み、『君のクイズ』を読んでみてください!
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