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志賀直哉『山科の記憶』あらすじと感想。妻から浮気を責められる男の短編

『山科の記憶』あらすじと感想。妻から浮気を責められる男の短編 古典名著

この記事では、志賀直哉の短編山科の記憶やましなのきおく簡単なあらすじと感想をお届けします。

浮気をした夫と、浮気された妻のやり取りは意外な方向へ…?

大正15年1月『改造』にて発表された作品です。

『山科の記憶』簡単なあらすじ

暗い雰囲気の家

愛人と会った後、家への帰り道に、色々と考えてしまう「彼」。

愛人を愛しているけれど、妻への愛情も変わらない。
そんな風に正当化していても、家が近づくと妻に嘘をつくことへの罪悪感がじわじわと押し寄せます。

家に着くと、いつもはすぐに出迎えてくれるはずの妻がでてきません。
部屋の隅で布団にくるまり、泣いた後のような顔で彼をじっと見つめています。

バレてます。

妻は「愛人ができたら気持ちが二分の一になる」と責め立て、二人は激しい口論に。

そんな中、話題は妻が入院していた時のことになりました。

大正時代の病院

彼女は担当の若い医者と親しくしていました。
本当に単なる感謝や親しみだけなのか?その時夫である彼はどこか引っかかるものを感じていました。

しかし妻自身は何も気づいておらず、退院後は別の医者に診てもらうことに。

彼は話を持ち出したものの、当時の自分の心に余裕があったことをを再認識しました。
これはやっぱり、自分の浮気とは全然違うものです。

結局「愛人と別れる」とはっきり約束するまで、絶対に引き下がらなかった妻。
彼はそれを一時的にでも受け入れざるを得ませんでした。

感想

喧嘩する夫婦

中々リアルな夫婦関係、男と女が描かれている作品でした。

妻も愛していると自己正当化しているのに、嘘をつく罪悪感はしっかり残っている夫。
人間臭いなぁと思います。

しかし「家に帰った時いつもすぐに出迎えてくれる妻」への裏切りは中々に罪深いですね。
夫婦仲が冷え切っているならともかく……

「お前には関係ない」
「あなたの愛情が私と愛人に分けられるんだから、関係あるよね?減るじゃないの」
「数字の上と気持ちは別」

冷静な妻の言い返しがちょっと爽快ですね。
夫の言い訳がどうしても弱い……面白い。

それにしても、夫の浮気から妻の入院話に転ぶのは興味深かったです。
話を持ち出したのは妻。
時間を置いてみると、自分が若い医者に入れ込みすぎていたという自覚が芽生えたのでしょうか?

しかしそれは何かがあったわけではありませんし、もしかすると「推し」的なものじゃないのかなぁと思うのです。

何より妻はそういうことが出来ない性格だという確信が夫のほうにあり、案外余裕で静観していられた……それは大きいでしょう。

夫は何だかまた浮気しそうな独白ですが……とりあえず止める言う事で一件落着。

志賀直哉は夫婦の浮気の話を時々書きますが、いつも結末が異なっていて面白いと思います。

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