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『銀河の図書室』読書感想!宮沢賢治同好会が舞台の課題図書

『銀河の図書室』読書感想!宮沢賢治同好会が舞台の課題図書 小説・実用書

この記事では「青少年読書感想文コンクール」2025年の課題図書にもなっている
『銀河の図書室』(著者:名取佐和子)

  • 物語のネタバレ解説(相関図も)
  • 個人的読みどころと感想
  • 実際に宮沢賢治記念館に行った時の写真と感想

をお届けしていきます。

読了まで3~4時間。宮沢賢治ファンからすると結構楽しい&知ってる情報満載の青春物語でした!

超簡単なあらすじ

野亜高校の図書室

野亜高校イーハトー部(宮沢賢治同好会)に入っている主人公・高田千樫(二年)。

しかしイーハトー部に誘ってくれた3年の風見先輩は、修学旅行後なぜか不登校になった。

「本当の幸いは、遠い」

という風見先輩からのLINEは自分へのSOSなのか?

引用元である「銀河鉄道の夜」や他の賢治作品を読めば、風見先輩の気持ちが分かるのか?

さらに部員のキョンヘ、マスヤス…自分にも「抱えている重いもの」があり…?

主人公が「ほんとうの幸い=俺と、俺の大切な人達が笑っている高校生活」を目指して、ハッピーエンドを作る青春物語。

ネタバレ相関図

以下、キャラ同士の関係やトラウマまで含む、ネタバレ相関図です。

物語の舞台は「野亜高イーハトー部」。
部員は風見先輩、主人公、マスヤス、キョンヘ。

【主人公】
・風見先輩から「本当の幸いは、遠い」とLINEがきた。
・風見先輩がどうして不登校になったのか分からない。

【風見先輩】
・迷子の子供を交番に連れて行き、保護者に引き渡した。
・クラスメイトの美濃部から、「虐待から逃げてた子なのに、あんたが連れ戻したから虐待悪化して意識不明だよ?」と聞かされトラウマに。

【美濃部先輩】
・主人公があこがれる美人先輩。
・近所の虐待されている子(迷子の子供)を知っていた。
・クラスメイトの風見が嫌い。

【キョンへ(仮入部)】
・弟・潤平くんの病気・存在を隠していた。

【マスヤス】
・SNSで風見先輩と知り合い、追いかけて入学してくる。

主な登場人物詳細▼

高田千樫
(2年)
主人公。あだ名「チカ」「チカ先輩」。
風見先輩に誘われイーハトー部に入部。
高校受験で失敗したトラウマを引きずる。
風見昂祐
(3年)
イーハトー部を立ち上げた先輩。
文化際のビブリオバトルでも優勝した凄い人。
修学旅行後に不登校に。
石館共平
(2年)
あだ名は「キョンヘ」。
チカに誘われてイーハトー部に仮入部。
2章で彼の弟が亡くなる。
増子耶寿子
(1年)
あだ名は「マスヤス」。
新入部員。
美濃部万琴
(3年)
チカの憧れの先輩。
風見と同じクラスで、風見の不登校のきっかけ。

感想①風見先輩のトラウマについて考える

迷子を送り届ける学生風見先輩

「自分が善行だと思っていたものが、誰かに悪影響を及ぼしていたショック」

風見先輩はこれが原因で悩み、不眠や人間関係への面倒臭さを感じて不登校となりました。

この物語の諸悪の根源は、登場すらしない「迷子の虐待親・兄弟」です。

そして偶然にも迷子に遭遇した風見先輩は「自分が鈍かったせいであの後、あの子は虐待で意識不明…」とショックを受けるわけですが、

私はこれはどうかなと思うのです。

もし風見先輩に鈍いところがあったとしても、虐待に気づいてどうにかできる機会が多かったのは、圧倒的に家が近い美濃部先輩のほうです。

彼女も彼女で手一杯だったとしても、通報一本、そこまで時間がかかるものではありません。

そこに気づけば「自分のせいで」と思うのは、ちょっと行き過ぎた罪悪感だった……。

風見先輩は背負わなくていいものを背負い、影響力の大きい人だったからこそ周囲にかける心配も大規模。

悲しさもあるけれど、勿体ない話でもあるんじゃないかなと思ってしまいます。

落ち込む事で子供が意識不明から目覚めるわけではないし、次回同じことがあった時に気づけるようになるのか…?というとそれも怪しい。

むしろ二度と同じ状況は巡ってこなさそうな出来事ですよね。

「やってしまったけど、もうどうしようもないこと」を乗り切るスピード、立ち直るスピード。

それが早い大人でいたいなと、私は感じました。

感想②賢治の教師としての姿

クレーマーと、相手に尊敬を持って話す男性

常に賢治は、今目の前にいる生徒を、今目の前に見える姿ではなく、相手がかくあるはずだという理想の形に置き替えて話していた。

一番心に刻んでおきたいと思った言葉です。

自分に酷いことを言う・酷い態度を取る人がいても、「心の底は善良な人だ」と思うことができれば尊敬をもって、敵意を持たずに接することができる……

なかなか人格者な考え方だと思います。

私は何か嫌なことを言われたとき

「この人は昨日会社をクビになったから、不安で八つ当たりしてしまうんだ」

「この人直近で子供さんが亡くなって余裕がないのかな?可哀そうに…」と

機嫌が悪い理由を捏造して、怒りを遠ざけています。

「多分なにか事情があって、今は取り繕えないだけ」

そう考えることで平等に接することはある程度できていると思いますが、賢治の凄さは「理想の姿の相手」と話をすることですよね。

どんな人にも尊敬の念をもって話すことができれば、それはもう無敵な平和の象徴でしょう。

すべての人に対応するのはやはり難しそうですが、ずっと付き合いの続く家族・友達に対してだけでもこの賢治の精神を持って接することができればなと思います。

感想③キョンヘへの救いの言葉

病院入院する弟に絵本を読み聞かせるキョンヘ

死んでしまったダウン症&心疾患持ちの弟に「優しくできなかった」と悔いているキョンヘ。

そんな彼への救いの言葉が、マスヤスの

「潤平君に両親を独り占めさせてあげたことが、キョンヘ先輩の潤平君への愛です」

というものでした。

私はこれは、言う方も中々勇気がいったんじゃないかと思うのです。

キョンヘは弟の事をほとんど話しませんでした。
ならば、キョンヘの弟への態度は想像するしかありません。

それでも前を向かせるために、見当違いの可能性があっても言い切ったマスヤス。

私は、「何も知らないのに分かったことを言うな!」と返されるリスクを飲み込んだ愛情があったと感じました。

励ますときは、暗い底で悩んでいる本人に届く強い言葉も、時に必要なんだなと思います。

情報①宮沢賢治観光スポットに行った時の話

宮沢賢治記念館の看板

野亜高校の修学旅行先にもなっている、岩手県花巻市。

賢治の故郷でもある花巻には『宮沢賢治記念館』等賢治関連施設がいろいろあります。

行った時の写真がありましたので、イメージの参考にしてみてください。

記念館内部▼

宮沢賢治記念館の内部

かなり広く、奥にはセロも見えますね!手前は賢治さんが好きだった鉱物です。

このあたり▼からも分かるように、鉱物題材の作品も多数遺しています。

十力の金剛石|あらすじと解説【宮沢賢治の童話】ダイヤモンドの世界

賢治が書いた楽譜

賢治さんが書いた楽譜。作曲もする人でした。

併設されている注文の多い料理店『山猫軒』▼

山猫軒

冷麺は岩手有名ですね▼ここにも「イーハトーブ」という文字が。
賢治さんが岩手県をモデルにしたと言われる理想郷です。

山猫軒のバス

▲wild cat houseの文字が。山猫軒行きのバスだったかな…?

作中でも描かれていましたが、記念館は結構山の上にあるため行きだけでもタクシー・バスがおすすめです。

作中に登場する書籍の感想リンク

『銀河の図書室』には、当読書ブログで既にご紹介している本のタイトルも多数出てきたので、あらすじや感想記事をまとめておきます。

ぜひ合わせて読んで、イメージを膨らませてください。

この記事で紹介した書籍▼Amazonの聞く読書もあるので、読むの苦手な方は使ってみるのも良いかもしれません。

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