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風の又三郎|簡単で短いあらすじ&伝えたかったことをイラスト解説

風の又三郎|簡単で短いあらすじ&伝えたかったことをイラスト解説 宮沢賢治

宮沢賢治の代表作の一つ『風の又三郎』。

風の精霊ではないか?と思われる転校生・高田三郎と、村の子供たちとの交流が描かれます。

どんな物語なのか?風の又三郎が伝えたい事とは何なのか?この記事では

  • 簡単で短いあらすじ
  • 分かりにくい部分の意味を解説・考察
  • 作者の伝えたいことについて
  • 個人的な読書感想

などを多くのイラストを交えてお伝えしていきます!

短く簡単に!風の又三郎のあらすじ

赤い髪をした「風の又三郎」

ある日、田舎の小学校に「高田三郎」という転校生がやってきます。

三郎は赤っぽい髪のどこか謎めいた雰囲気を持つ子で、他の子どもたちとは違う存在感がありました。

彼が来ると、なぜか風が強く吹いたり嵐が起きたりすることが続いたため、子どもたちは「風の又三郎」と呼ぶように。
彼を風の神様のように感じ始めます。

風の神様

三郎と子どもたちは最初こそちょっと距離がありましたが、一緒に遊んだり冒険したりする中で少しずつ仲良くなっていきます。

川や野原で遊ぶ又三郎と一郎や嘉助たち。

川で遊ぶ子供たち

ところがある日馬を逃がしてしまい、追いかけるうちに疲れ果てて眠ってしまった嘉助が目を覚ますと……

ギラギラと輝くガラスのマントを羽織り、ガラスの靴を履いた又三郎がいました。
再び目を覚ますといませんでした。

その後、村に突然の嵐がやってきました。

突然の嵐 イラスト

何かの焦りにかられた嘉助が翌朝早く学校に行くと、先生から三郎(又三郎)が急にお父さんとともに引っ越してしまったことが伝えられます。

子どもたちは「やっぱり三郎は風の神様だったんだ」と感じ、三郎の存在が風とともに消え去ったような不思議な感覚を抱きながら物語は終わります。

又三郎の去った後の野原

内容としては、不思議要素を省くと「小学生たちが特別な転校生と仲良くなるけど、また去ってしまった話」という感じです。
わちゃわちゃと遊んでいる様子が多く描かれています。

登場人物

次に登場人物について。主要なキャラクターだけ簡単に解説していきます。

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高田三郎(風の又三郎)

又三郎のイラスト。赤い髪、黒い目、白いズボン、赤の革靴。

外部から転校してきた少年で、「風の神」や「風の子」として特別視される存在です。

北海道からやってきたと説明されていますが、子どもたちの間では風と共に現れる不思議な存在として捉えられており、

実際、自然と深く結びついているように描かれています。

内向的な面がある印象ですが、だんだんと子供たちになじんできました。

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一郎

クラスメイトでリーダー的存在の少年。三郎を受け入れ、何かと彼に興味を持ち、積極的に接します。

三郎の不思議さにはやや不安を感じている様子も……?

嘉助

一郎の友達で、好奇心旺盛な少年。三郎に対して強い興味を持ちます。
行動力のあるタイプ。

三郎を「風の子」として特別視します。

主人公は誰?

一郎と又三郎のシルエットイラスト

『風の又三郎』における主人公は誰なのか?

これは三郎(又三郎)か一郎、二種類の考え方ができます。

「又三郎(高田三郎)」は明確に物語の中心的な存在で、物語の鍵となる「よそ者」です。

物語の展開は彼の登場とともに進み、彼の正体の謎や、彼が巻き起こす出来事が物語の核をなしています。

一方で、村の子どもたちの代表的な存在である一郎も、主人公的な役割を担っています。

彼の視点や行動を通じて三郎との出会いや日常の出来事が描かれ、読者は彼の視点を通して物語を追います。

【解説】風の又三郎が伝えたいこととは?

賢治からのメッセージ

『風の又三郎』において、宮沢賢治が伝えたいことはなんでしょうか?

個人的な推察を、ここでは2つお伝えします。

結論から言うと、

  • 自然と人間のつながり
  • 異質な存在への向き合い方

です。ひとつずつ深堀りしていきます。

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自然と人間のつながり

自然と人間のつながりイメージイラスト

物語を通じて風や雨・雷など、自然の要素が強調されたこの物語。

又三郎という少年は「風の精」のような存在として描かれており、彼の登場によって風や嵐が起こる……

これは物語の中心的な要素となっています。

作者は自然の偉大さや、人間がそれに対してどう向き合うのか?ということを

擬人化ともとれるような手法で問いかけているのではないでしょうか?

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異質な存在との向き合い方

閉鎖的な小さな村 イラスト

この物語はおそらく閉鎖的であろう「小さな村」に越してきた転校生ということで、

「外部から来た異質な存在」とどう向き合うか……その子供たちの様子がリアルに描かれています。

又三郎は、クラスの子どもたちにとって不思議で少し怖い存在に映りました。
しかしそれでも途中からは仲良く過ごしていました。

人々が新しいものや未知のものに対してどう向き合うか。

多様性や違いを受け入れることはできるのだというメッセージを感じます。

【解説】どっどど 意味

まだ青い、すっぱいかりん

『風の又三郎』の書き出しに登場する「どっどど どどうど どどうど どどう」は、風の音を擬音的に表現したフレーズです。

「青いくるみ」や「すっぱいかりん」という、まだ成熟していない果実が吹き飛ばされる……つまりもの凄い風。

このリズム感ある繰り返しが、風が激しく吹き荒れる様子を視覚的に感じさせる役割を果たしています。

物語全体に流れる「風」のイメージを象徴するような、冒頭部分の力強いオノマトペです。

風の又三郎の正体は?

硝子のマントとガラスの靴を纏った風の又三郎のイラスト

物語の中心である『風の又三郎』。

彼はいったい何者なのか?

物語内で出た情報と、そこからできる考察をまとめてみます。

風の又三郎について分かっていること

まずは又三郎(三郎)について分かっていることを簡単にまとめてみます。

  • 父親の都合で村に転校してきた少年。
  • 高田三郎という名前。
  • 「三郎」に「風の又三郎」という噂が絡み、子どもたちは彼を「風の精霊」だと噂した。
  • 彼が転校してきた直後に風や嵐が頻発。
  • 赤い髪に赤い顔、外国人っぽい出で立ちをしている。

考察:又三郎の何者?

風の神様

又三郎の正体については、物語の中で明確には定義されていません。

ただの人間とも、風の神様とも取れるようなストーリーになっています。

しかし個人的には「普通の人間っぽい」と感じる人物であり、「なぜ風の又三郎なんて言い出した?」との疑問も。

その背景について考察してみると、以下のようなことが考えられます。

  • 「風の又三郎」だと言い出したのは子どもたち。子どもたちが想像を膨らませた結果、三郎が超自然的な存在に仕立て上げられてしまったのでは?
  • 閉鎖的な村に「転校生」はかなり異質であり、その異質な存在感が自然現象の怖さに通づるものがあったかもしれない。

また、逆に本当に「風の又三郎」という風の精霊や神様に近いものであった場合……

自然の動きや風の強さと密接に関わっている、神秘的な要素を持った存在であったかもしれません。

又三郎はいじめられている?

一人だけ離れて孤立しているイラスト

初めて登校して「お早う」と挨拶しても、他の子どもたちは返事をしてくれませんでした。

これは、他の子どもたちが転入生になれておらず、対応に戸惑ったからです。
しかしそんなことは三郎には分かりません。

明確ないじめの意図が見えるわけではありませんが、三郎を「よそ者」として距離を置かれたことはわかったでしょう。

他にも、子どもたちが「雨三郎」や「風三郎」と呼んで彼をからかう場面があります。

声を合わせて叫んだ子供たちの声に、三郎はひどく怯えた様子でした。

そして三郎が引っ越してしまったのはそのすぐ後。

村の子供たちとしてはからかっただけですが、三郎の恐怖の程は分かりません。

もしかすると、この子供たちの行動に怯えて村を去った可能性も無くはないわけです。

その場合、村の子たちからのいじめで引っ越した…ということになりますね。

自然の怖さを含む物語

風、強風の怖さのイラスト

一見すると、転校生と子供たちが交流を深めていく友情物語……

しかし、この物語全体に「三郎がただの人間ではないのではないか」という疑問が根付いており、

彼がまるで自然そのもののように描かれるため、子どもたちは一種の畏怖や恐怖心を抱いています。

それは

  • 人間の理解を超えた存在に対する畏怖
  • 現実世界で誰もが感じたことがある自然の力への畏怖

が合わさってのことでしょう。

三郎がただの人間だった場合、とばっちりも良いところですね……。

考察と読書感想

子どもの不思議な体験

『風の又三郎』を読んで、まず感じたのは、自然の力と人間との深い結びつきです。

物語の背景には常に自然が存在し、その自然がまるで一つの登場人物のように、風や雨・雷という形で語りかけてきます。

又三郎が「風の精霊」なのではないかという謎めいた存在で描かれることによって、物語全体が幻想的でありながらも、どこか現実と地続きであるように感じられました。

この点に、宮沢賢治の作品らしい自然への畏敬と神秘性の考察が見えます。

また、子どもたちが又三郎という「異質な存在」に出会い、彼に対する戸惑い、興味、恐怖などの複雑な感情を抱きつつも、少しずつその存在を受け入れていく過程……

これが丁寧に描かれており、これは「異なる背景を持つ人との出会いが子供にどのような影響を与えるか」という考察を含んでいるように思えます。

又三郎が風と共に現れ風のように去っていく姿は、彼が一時的な異邦人としてコミュニティに影響を与え、その後新しい場所へ向かうという現代に置き換えられるような連想を持ちました。

又三郎との出会いを通して、子どもたちは日常生活では感じられない不思議な感覚を体験し、それが彼らの成長を促す重要な要素となっています。

一方で、又三郎というキャラクターが明確に「何者か」は最後まで明かされないままだということが、この物語の独特な魅力を引き立てています。

彼がただの転校生なのか、あるいは本当に「風の精霊」なのか?

その解釈を読者に委ねることで、物語にさらなる深みと余韻が生まれています。

この曖昧さが、物語を単なる子どもたちの冒険譚にとどめず、

自然と人間、そして不思議な存在との共存をテーマとした普遍的な物語へと昇華させていると感じました。

【解説】風の又三郎と風野又三郎の違いについて

ここでご紹介したのは「風の又三郎」ですが、同じ宮沢賢治の作品で「風野又三郎」もあります。

何が違うのか?それは、「風野又三郎」が初期の作品で、「風の又三郎」が改作版だということです。

比較表はこちらです🔻

1924年(大正13年)に執筆された「風野又三郎」は賢治の初期作品で、未完の状態で残されており、物語の構成がやや荒削りです。登場人物については基本的なキャラクターは共通しているものの、描写が少なく深みが欠けています。また、自然や風の存在は描かれていますが、テーマの掘り下げが十分ではありません。文学的には未完成であり、パッチワーク的な要素が残っていると評価されます。

一方で、「風の又三郎」は1931年~1933年(昭和6年~昭和8年)に成立した後期の改作版です。未完部分が整理され、完成された物語として仕上がっています。登場人物の描写が詳細になり、キャラクターに深みが増しています。また、自然の猛威や未知の存在との関わりが明確に描かれ、テーマが深まっています。この作品は賢治の晩年に書かれた完成作であり、文学的な完成度が高いと評価されています。

宮沢賢治の他の作品に「風の又三郎」が登場している!?

光のすあしの世界。地獄のような世界で、光る素足の人の元へ、一郎と楢夫が歩いていく。

風の又三郎は、実は宮沢賢治の他の作品にも登場しています。

それが『ひかりの素足』。

風の又三郎以上に厳しい自然描かれる兄弟の雪原遭難の話ですが、この冒頭に弟・楢夫が風の又三郎の夢を見ます。

風の神様と言われる子供の不吉な夢……

面白いですが少し難しいので、下の解説記事とともに是非読んでみてください!
解説記事:ひかりの素足を解説!超簡単なあらすじと結末|宮沢賢治著作

まとめ

  • 風の又三郎は、自然と人間のつながりを描いた物語。
  • 転校生の三郎は、子どもたちにとって謎めいた存在。
  • 風や嵐が起こるとともに、三郎はいつの間にか転校して去ってしまう。
  • 三郎が風の又三郎かどうかは不明のまま終わる。

是非、読んでみてください!

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