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志賀直哉の『雨蛙』を解説!浮気した妻を愛しく?登場人物と簡単なあらすじ

志賀直哉の『雨蛙』を解説!浮気した妻を愛しく?登場人物と簡単なあらすじ 古典名著

志賀直哉の短編『雨蛙』(大正13年1月『中央公論』にて発表作)

主人公賛次郎が、妻・せきの浮気を疑う描写が成り行き含めて描かれており、

すべて明らかにならないリアリティや賛次郎の感情が面白い作品です。

この記事では登場人物とあらすじを簡単に解説。注目ポイントや感想をお届けします。

登場人物

せきとせきの部屋に入ってくるG

『雨蛙』に登場する人物は以下の通りです。

登場人物関係・特徴
賛次郎美濃屋の若主人。農科大学卒業後、家業を継ぐ。せきの夫。
せき賛次郎の妻。遠縁の農家の娘で美しいが無口。Gと関わりを持った可能性が示唆される。
竹野雄賛次郎の親友。東京の私立大学で文学を学び、詩や短歌を作る。
竹野の妻竹野雄の妻。水菓子屋を共に営む。せきと共に講演会に行った。
祖母賛次郎の祖母。気丈な性格で家業を取り仕切る。
岡蔵美濃屋の番頭。中風に罹り郷里へ帰る。
S劇作家。穏やかな性格で女性的な雰囲気を持つ。
G小説家。がっしりとした体格で力強い印象の人物。せきと一夜を共にした可能性がある。
山崎芳江女子師範の音楽教師。派手な性格でSと関係があると噂される。
車夫賛次郎とせきを町へ運んだ馬車の御者。世間話を絶やさない。

簡単なあらすじ

大正時代の造り酒屋

A市の北にある小さな町Hで、賛次郎 は造り酒屋「美濃屋」を継いで暮らしていた。彼の妻 せき は遠縁の農家の娘で、美しく控えめな性格だったが、学問には縁がなかった。

賛次郎の親友である 竹野雄 は東京で文学を学び、詩や短歌を作っていた。彼の影響で、賛次郎も次第に読書に興味を持つようになる。

ある日、竹野から 劇作家Sと小説家Gの講演会 の誘いがあり、賛次郎はせきと共に出席する予定だった。しかし、出発前に祖母が倒れたため、賛次郎は留守番し、せき一人で市へ向かった。

講演会の後、せきは竹野の妻と共に 迎雲館 に泊まることになった。しかし、夜が更けると、せきは 作家Gと同じ部屋にいた

翌日、賛次郎が迎えに行くと、せきは 何かを秘めたような態度 を見せる。問い詰めると、「初めは芳江(女子師範の音楽教師)が一緒だったが、いつの間にかGが入ってきた」 と告げた。

帰り道、せきは黙り込み、遠くを見つめたまま歩いていた。賛次郎は せきがGとの一夜を思い出しているのではないか と疑い、胸がざわつく。彼の中で、せきへの愛情と嫉妬が入り混じる。

町に戻った賛次郎は、自宅の本棚から小説や戯曲の本を抜き取り、裏山で燃やした。 まるで、自分の中に芽生えた 危うい感情を消し去るように……。

感想

雨蛙

以下、『雨蛙』の注目ポイント別の感想です。

微妙だった夫婦関係

大正時代の夫婦

せきが浮気をしたのはほぼ確定という描かれ方がしているこの作品。

ではなぜそのようなことになったのでしょうか?

農学校を家の都合で中退させられても、恨むことも怒ることも無かった賛次郎。

この作品の主人公は、なかなかの人格者として描かれており、せきのことも大事にしているようでした。

一方せきは「目に光が無い」「流産してもあまり気にしていないように見える」と、賛次郎を本当に愛しているかは疑わしいところがありました。

それに「流産を気にしていない」といっても、賛次郎の祖母から色々言われていた様子。

そして浮気をした時、賛次郎は予定をドタキャンして祖母の看病をしていました。

「せきより祖母を優先させた」

もし浮気に理由があったのなら、無感情そうに見えても、ここで何かが切れたのかもしれません。

浮気した妻を「より一層愛おしく…?」

夜の迎雲館

せきは聞かれたことに素直に答えるタイプでした。

寧ろ「昨晩一人だったか」と聞かれて、「意味が分からない笑み」を浮かべたせきに、怖くなって問うのを止めてしまうのは賛次郎のほうでした。

しかし一緒に歩きながら「どこか甘い夢を見るようなせき」をみた賛次郎の感情が思わぬ変化をとげます

なんと、せきとGが浮気をしているのを想像して興奮したのです。

そうなってくると、優し気な声で詳細を尋ねてしまう賛次郎。
言い淀むせきに、愛おしくなって抱きしめそうになる異常な感情を持て余しています。

これはある意味、人格者が道を踏み外した瞬間でしょうか?

雨蛙と焼き捨てた本

本を焼き捨てる様子

最後の雨蛙と本を焼き捨てる描写はちょっと分かりにくいので、自分なりの解釈を描いておきます。

まずは雨蛙

この帰宅途中に寄り添う二匹の雨蛙を見つけ、夫婦だろうと思い、せきに話す賛次郎。
それに興味を示さないせき。

これは自分たちの夫婦関係への興味を、そのまま反映しているのではないでしょうか?

浮気されて燃える夫と、夫への興味が薄い妻。
この夫婦がその後どうなったのかは、かなり気になるところですね。

そして小説や戯曲をこそこそと燃やした賛次郎。
この行動に何の意味があるのでしょうか?

もしかするとこれは、感情を刺激するものを捨てた…のではないでしょうか?
自分の考えのヤバさを自覚し、元の自分に戻ろうとするための行動……

そのようにも感じられます。

まとめ

志賀直哉の雨蛙について解説をまとめると……

  • 『雨蛙』は、賛次郎が妻・せきの浮気を疑い、感情が揺れ動く様子を描いた作品
  • 賛次郎の心理の変化がみどころ。
  • せきの浮気はほぼ確定的に描かれている。
  • 賛次郎は浮気した妻を「より一層愛おしく」思う。
  • 自分の異常な感情を、賛次郎が持てあます。
  • 結果、浮気した妻を責めることもなく怒ることもないという不思議な展開に。

ということでした。

面白いので是非読んでみてください!

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