『十力の金剛石』は、宮沢賢治が描いた不思議で深い寓話の一つ。
賢治特有のきらめく世界観で自然との共生が描かれ、読む人に多くの問いを投げかけます。
本記事ではあらすじの紹介とともに、この童話が持つメッセージや象徴を解説!
『十力の金剛石』の魅力を紐解いていきます。
簡単なあらすじ

虹の脚もとにある『ルビーの絵具皿』を求めて、王子と大臣の子の二人は森へと分け入りました。
道案内をするのは小さな蜂雀です。
彼らは黄金色の草地にたどり着きました。
そこではダイヤモンドやサファイアといった宝石が、まるで雨のように降り注いでいました。
しかし草や木は、キラキラと輝く宝石の雨を浴びながらも不思議にも悲しみの歌を奏でています。
そのうち、周囲はまばゆい光に包まれ……さらに大きな金剛石が天から降ってきます。
光がすべてに浸透し、草木も風も空もまるで命を吹き返したかのように、生き生きと輝きを増していきます。
王子と大臣の子はその奇跡的な光景に心を打たれ、畏れと喜びを胸に抱きつつ、静かに跪きます。
【解説】十力の金剛石

ここから『十力の金剛石』を解説していきます。
読むと光と色の絢爛さに圧倒される物語『十力の金剛石』。
ダイヤモンドやトパーズ、サファイアといった宝石が、雨のように降ってくる……!
夢のみたいですね。
ポケットに詰めたくなるような話です(笑)
ですがどれだけ美しくても、なんだか切ない感じが残る物語。
ちなみに石(鉱物)が大好きだった宮沢賢治は、他にも鉱物をモチーフとした作品を描いています。
それが「貝の火」。登場するのはファイアオパールです。
気になる人はこちらの記事も是非読んでみてください🔻
宮沢賢治『貝の火』を考察!悪事を働いても輝くオパールの謎
そして十力の金剛石を読んで思い出すのが、メーテルリンクの『青い鳥』です。
メーテルリンクの青い鳥に似ている?

この物語は「本当の幸せ」を探す旅。
案内役は青い鳥ではなく蜂雀(ほうじゃく)。
物語の最後は、ダイヤモンドが大事な役割を果たします。
賢治の蜂雀が出てくる他の作品「黄いろのトマト」もチェック▼
黄いろのトマト (宮沢賢治)のあらすじと解説。純粋な兄妹の傷心
旅を通して王子たちは、チルチルとミチルのように「新しい視点」で世界を見れるようになっていきます。
もしかすると王子たちの日常は「虹は近づけば近づくほど、どんどん逃げていく」というような…
「何かを追いかけているけど、なかなか手に入らない状況下」だったのではないでしょうか?
しかしこの旅でそれが解消された……。物の見方が変わったということでしょう。
王子たちが得た「視点」とは?

最初は「虹の絵具皿」を探す旅だったこの作品。
王子は美しい宝石に惹かれて旅に出ますが、その途中で利己的な行動が描かれています。
例えば、藪の中でイバラが王子に絡みついて動けなくなるシーン。
王子は面倒くさくなって剣を抜いてイバラを切り離します。
けれどその行動は何かに急いでいる気持ちを反映しており、
物語の最後では、王子がイバラをそっと外すシーンが描かれています。
それは、この旅で自然や命の力を感じ取ったということ。
「十力の金剛石」は宇宙そのものの根源的な力を象徴しているのではないでしょうか?
欲望や日常にとらわれていると、本当の幸せは見えなくなってしまう。
でも、一度自然の美しさや力に触れて日常と異界の境界を超えると……
十力の金剛石が降り注ぐ、生き生きとした世界が見えるかも知れません。
まとめ
『十力の金剛石』という作品は……
- 宮沢賢治が幻想的に描く自然との共生や欲望をテーマにした物語。
- 王子と大臣の子が虹の絵具皿を探す旅を通じて、視点や物の見方が変わっていく姿が描かれている。
- 美しい宝石が降り注ぐシーンや、自然の力を象徴する「十力の金剛石」は圧巻。
- 物語の中では、自然や命の美しさに気づくことが真の幸せを見つける鍵となる。
- 「日常の中では見えにくい「本当の幸せ」は、自然と触れ合うことで見出すことが出来る」というメッセージが込められている。
ぜひ宮沢賢治の『十力の金剛石』、読んでみてください!
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