星の王子さまに登場する『ヘビ』。
※最初に出てくる大ヘビの絵ではなく、王子さまが砂漠で出会った黄色い蛇です。
この記事ではヘビのエピソードと名言を解説。
「噛まれる」ということの意味…王子さまは噛まれてどうなったのか?や、
ちょっと分かりにくいヘビのセリフについて紐解いていきます。
砂漠のヘビのエピソード

まずはヘビが登場する場面のあらすじをおさらいしてみましょう。
バラとの不和により、自分の星から逃げてきた王子さま。
いくつもの星を巡ったのち、たどり着いたのはアフリカのサハラ砂漠でした。
そこで王子さまが初めて出会った地球の生き物が、月の色をした「ヘビ」です。
王子さまはヘビを見たことがなかったため、その姿を「変」と言います。
しかしヘビはこう言います。自分は…
「王様の指よりも強い力を持っている」
「君を船よりも遠くへ送ることができる」
その意味深な言葉があったからでしょうか?
王子さまは一年後故郷の星へ帰ると決めた時、ヘビに助けを求めます。
ヘビの毒は、わずか30秒で命を絶つ力を持っていました。
王子さまは重い肉体を置いて魂だけを星に帰すため、その毒に身を委ねたのです。
翌朝、王子さまの姿は消えていました。
「ぼく」(語り手)は考えます。
王子さまの体はそれほど重くなく、きっと体ごと星へ帰ることができたのだと。
ヘビに噛まれてどうなったのか?

王子さまがヘビに噛まれた結末には、大きく分けて二通りの解釈が考えられます。
- 蛇が王子さまをだましており、殺して食べてしまった
その場合、当然ながら死体は残りません。 - 蛇が本当に特別な存在で、王子さまを故郷の星へ送り届けた
つまり「死」を通じて帰還を実現した。
どちらを取るかで物語の結末は大きく変わってきます。
現代の感覚からすると、前者のほうが現実的に思えるかもしれません。
例えばこの蛇のセリフ。
「もし、故郷がひどく懐かしくなったら、君を助けてあげられるかもしれない。つまり……」
これを文字通り受け取れば、
「生きることに耐えられなくなったら、毒で楽にしてあげる」
という意味にも読めます。
実際、王子さま自身も蛇を完全には信用していません。
「ぼく」(語り手)が一緒に来ては、ついでとばかりに噛まれるかもしれない。
そう警戒して、見送りを断ったのです。
しかしこの物語が書かれた時代背景を考えると、キリスト教的な死生観が含まれている可能性は十分にあります。
その場合死は「魂の帰還」となります。
ヘビの宗教的な意味

宗教や神話の視点からヘビを見てみましょう。
聖書では、ヘビは「死」「誘惑」「知恵」の象徴です。
そしてアダムとイブを「善悪の知識」という別の世界へ導いた存在として知られています。
殺すことだけでなく「導く」ことができるならば、王子さまを元の星へ導いた可能性も出てきますね。
実際にヘビは「君を遠くへ送ることができる」と語っています。
これが単なる虚言ではなく、本当に「境界を越える力」…魂を向こう側へ導く役割を持っているのなら……
蛇は「怖い死の象徴」ではなく、王子さまを星へ帰すための案内人として描かれているということです。
ヘビの名言を解説

ヘビが死の象徴だと考えて読めば、ヘビのセリフには自然の摂理が含まれているような気がします。
例えば王子さまの「砂漠に一人きりじゃさびしい」という想いに
「人間といっしょにいても同じことさ」
と答えているヘビ。
死を良く知っているヘビだからこそ、人間は本質的に一人…つまり、
生まれる瞬間も死ぬ瞬間も、根本的には一人で向き合うしかないということを分かっているのかもしれません。
他にも、ヘビは
「だけど、おれは王様の指よりもすごい力を持っているんだ」
と言っています。
これは「権力より死の恐怖の方が強い」という風にもとれます。意味が分かれば深い名言ですね。
まとめ
- 『ヘビ』は王子さまが地球で最初に出会った存在。
- ヘビは「王様の指よりも強い力を持ち、船より遠くへ送れる」と意味深な言葉を語った。
- 王子さまは一年後、故郷に帰るためにヘビの毒に身を委ねた。
- 翌朝王子さまの姿は消えており、語り手は「体ごと星へ帰ったのだ」と考えた。
- ヘビに噛まれた解釈は二通りある:①蛇に騙されて殺された ②魂が星へ導かれた。
- 蛇のセリフは「死」を通じた救済とも「単なる死の誘惑」とも読める。
- 聖書や神話ではヘビは「死」「誘惑」「知恵」「導き」の象徴。王子さまを星へ導く案内人と考えることもできる。
- 「人間といっしょにいても同じことさ」という言葉は、人間は本質的に一人であるととれる。
- 「王様の指よりも強い」という言葉は、権力よりも死の恐怖の方が力を持つという意味に解釈できる。
- ヘビは「死の恐怖」だけでなく「魂の帰還を導く存在」として描かれている可能性がある。
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