どんぐりと山猫で宮沢賢治が伝えたいこととは？イラストで解説

宮沢賢治の著作『どんぐりと山猫』。
主人公・一郎は山猫から届いたおかしなハガキに導かれ、どんぐりたちの裁判に関わることに……？

この記事では

• どんぐりと山猫のあらすじを短く解説
• 賢治が伝えたかったこととは？
• 登場人物紹介・解説
• 名言・読書感想について

をまとめています。

あらすじを短く簡単に紹介！

山猫から「おかしな裁判への呼び出しハガキ」を受け取った一郎。

嬉しくなった一郎は、山猫を探し歩いてたどり着きます。

山猫はどんぐりたちの裁判が3日続いても決着がつかず、困っているようでした。

それで一郎の意見を聞こうと、手紙をよこしたようでした。

「頭が尖っているのが一番偉い」「丸いのが一番偉い」などと争っているどんぐりたち。

一郎は「一番バカで、めちゃくちゃで、まるでダメなやつが一番偉いということにしよう」というと、名乗り出る者はおらず、諍いは収まりました。

山猫はそのお礼として一郎に黄金のどんぐりを渡しますが、家に帰るとそれは普通のどんぐりに…。

それ以来山猫からの連絡はなく、一郎は寂しく思います。

「どんぐりと山猫」の登場人物

「どんぐりと山猫」の登場人物についても簡単に紹介します。

主要な「主人公・一郎」「馬車別当」「山猫」の三名です。

主人公の一郎とは？

主人公の一郎は、純粋で無邪気な少年。

彼は山猫から「おかしなはがき」を受け取り、ワクワクしながら山へ向かいます。

道中、栗の木や滝・きのこなど自然のキャラクターたちに話しかけ、山猫との出会いを楽しみにしながら進んでいく…

宮沢賢治の世界観にぴったりな、まさに「いいやつ」という人物です。

馬車別当は何者？

「別当」という言葉は平安時代や鎌倉時代に使われており、その場所や組織の管理者・責任者のことを指します。

つまり馬車別当は、山猫の馬車を管理したり運転したりする人という意味です。

現代風に言えば「山猫の運転手兼お世話係」という感じですね。

ちょっと奇妙で不思議な見た目の馬車別当。
足がヤギのように曲がっていて、まるでごはんを盛るしゃもじのような形をしている足先……
この見た目に、一郎も最初は少しびっくりします。

どんぐりたちの争いを静めるために、鈴を鳴らしたり、草を刈ったりと忙しく働く姿が印象的です。

山猫をすごく敬っており、どこか真面目で律儀な一面もありますが…

山猫がタバコを吸っているときにタバコを我慢している姿など、ちょっとかわいらしい一面も。

山猫とは？

山猫はちょっと不思議で個性的なキャラクター。

尖った耳に緑色の大きな目。しかしその存在は猫というよりどこか人間っぽく、裁判官のような威厳を持っています。

彼は一郎に「おかしなはがき」を送り、どんぐりたちの争いを解決するための「めんどうな裁判」に一郎を招きました。

ちょっと偉そうな態度を取りつつも、実は裁判をどう進めるか悩んでいる姿がどこかユーモラスです。

また、「山猫」は賢治作品においてお馴染みのキャラクターです。

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賢治が伝えたかったことは何？

宮沢賢治が「どんぐりと山猫」を通して伝えたかったテーマは、競争や優劣の争いにとらわれず、もっと無心で自然体で生きることの大切さだと言えます。

物語の中でどんぐりたちは「自分が一番偉い！」と必死に争っていますが、一郎が「いちばんばかが、いちばんえらい」という逆説的な言葉でその争いを収めます。

このシーンには、賢治が私たちに伝えたかった教訓が込められていると思います。

自分のペースで、自然に生きること。

また賢治の作品には、自然との共生や素直な心で世界を感じることの重要性もよく出てきます。

どんぐりや山猫、自然のキャラクターたちが生き生きと描かれているのも、その表れと言えるでしょう。

競争社会に疲れた現代人なら、今一度自分はどうなのかと見直したいものですね。

非日常の出会いのワクワク感

山猫から「おかしなはがき」を受け取ったことで非日常の世界に引き込まれ、自然の中で不思議なキャラクターたちと出会った一郎。

しゃべるドングリ裁判なんて、まさに未知との遭遇ですね。

しかし物語の最後、一郎が家に戻るときには、山猫や馬車別当…不思議な世界そのものがあっという間に消えてしまいます。

黄金のどんぐりも、普通のどんぐりに変わってしまう……

山猫からの「拝」という手紙も二度と届かない。

この物語ではそういった唯一無二の出会いと、それを喪失した時の物悲しさを如実に伝えてくれます。

一度きりの特別なものだったからこそ、失われたときの寂しさも強い。
もうあの世界には戻れない。

だからこそ、私たちは「その瞬間の大切さ」や「一度きりの出会いの尊さ」について考えなければなりません。

名言「いちばんばかが、いちばんえらい」を考える

どんぐりたちがわあわあと騒いでいる場面で、一郎は「いちばんばかが、いちばんえらい」という言葉を投げかけ、争いを落ち着かせました。

この言葉には、宮沢賢治の「デクノボウ精神」がしっかりと反映されています。

「デクノボウ」とは、競争や優劣に縛られず、ただ無心で生きる姿勢を表す言葉です。

もっとかみ砕くと「何も気にせずマイペースに生きる」みたいな感じでしょうか。

どんぐりたちが「わあわあ」と騒いでいる様子も子どものように無邪気ですが、賢治はそこに対して「これが良い」とか「悪い」といった批判を当てはめず、そのまま自然に描いています。

「いちばんばかが、いちばんえらい」という言葉は、競争が当たり前な社会へのアンチテーゼとも言えます。

誰が一番かを決めるための争いには意味がなく、むしろ無心でいることこそが本当の強さ、偉さ。
そんなメッセージが込められているのかもしれません。

読書感想文

宮沢賢治の『どんぐりと山猫』は、何度読んでも不思議で魅力的な作品でした。

奇妙で幻想的な冒険譚。

不格好な手紙を受け取っても、主人公は自分からその指示に従いに行く。

だからこそこのような不思議体験が得られるのでしょう。

どんぐり裁判を通じて、賢治が競争や優劣を超えたところに本当の価値があるんだよ、と言っているように思います。

社会でも誰が一番だとか勝ち負けを意識することは多いですが、この物語は「無心で自分らしくいることが大切」と、嫌味なしに教えてくれます。

自分らしく生きること、未知の体験を大事にする気持ち、そしてそれが終わった後の寂しさまで…
すべてを大切にして生きていきたいですね。

まとめ

• 不思議なハガキに導かれて、山猫の元へ向かう好奇心旺盛な少年・一郎の話。
• 「いちばんばかが、いちばんえらい」という言葉に、競争を超えた生き方が示されている。
• 山猫やどんぐりたちとの出会いのワクワク感と、それが二度と戻らない寂しさが描かれている。
• 自然と共に生きることの大切さと、素直な心で世界を感じる姿勢が賢治によって描かれている作品。

ぜひ読んでみてください！