2026年本屋大賞で大賞を受賞した、朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』読了しました!
タイトルの意味は『メガチャーチ(巨大教会)の中で』。
信者から集金するための「チャーチマーケティング」が活用された、推し活業界の『ファンダム(ファンコミュニティ)』が描かれます。
この記事では
- ネタバレあらすじ(結末まで)
- 相関図
- 感想
をお届け。
リアル!怖い!エグイ!現代の話。本屋大賞ノミネート作です。
目次
『イン・ザ・メガチャーチ』結末までのあらすじ
まずは簡単に、『イン・ザ・メガチャーチ』の結末までのストーリー要約です。
ネタバレにご注意ください。
男性アイドルグループ『Bloom』特別戦略室

久保田慶彦(47歳)は、離婚後、大学生の娘『澄香』と月一でビデオ通話をしている。
しかし30分も会話が続かない。
これは「今までやってこなかったこと」が自分に返ってきた結果だ。
孤独は嫌だ。
養育費の支払いは、娘とつながっていたい自分のためのものだ。
そんなある日、出世した同期『橋本』から電話があった。
橋本はオーディション番組で選ばれた男性アイドルグループ『Bloom』のプロデュースに関わっており、
昔一緒に仕事をした久保田に手伝ってほしいと言う。
二つ返事でOKした久保田。
加わるのは、メインの運営とは違う『特別戦略室』だ。
チームの指揮を執るのは、IT企業のマーケティングリーダーという肩書きの男『国見』。
そしてこのチームの目的は『信徒の獲得』と『教義の普及』だった。
Bloomメンバーの『物語』を、人々が最も没入しやすい形に整えて再提示する。
その上で、自他の境界が曖昧で、視野狭窄に陥りやすいファンのみを相手にする。
熱量の高い層を物語でさらに『没入』させる…ということだ。
ちなみに、そういった種類のファンが付きやすいメンバーは、
オーディション時、順位最下位(9位)の『垣花道哉』。
澄香と同じ年齢・誕生日の、内向的な人物だ。
澄香が道哉に沼る

一方、大学入学後に周囲と比べて自信を無くしていた澄香。
留学が必須とされる大学だが、行先も決まらない。
彼氏からも「重い」という理由で別れを切り出されている。
そんな状況で、澄香は道哉にハマった。
国見がファンのフリをして作った、mbtiと関連付けた道哉の紹介動画。
それは自分の言いたいことを、代弁してくれるかのようでーー……
道哉に「夢を叶えてほしい」「自分にとってかけがえのない希望でいてほしい」という想いを抱いた澄香。
次第にBloomのファンダム『花道』の活動にのめりこんでいく。
父(久保田)に『追加の留学費用が必要』と嘘をついて大金をつぎ込み、
大学のパソコン50台を起動してBloom動画の再生回数を稼ぐ……
同じ大学の『奈々』が留学先で『チャーチマーケティング』を学びたいと言う話も耳に入らなかった。
巨大な教会『メガチャーチ』の、現代における拡大・集金戦略らしいが……
結末

Bloomのデビューシングルは50万枚を突破。
ところがデビューショーケース(初パフォーマンス披露イベント)を前に、道哉が適応障害になり、長期休養を発表した。
この知らせを聞き、ヒアリングで面識があった久保田は……
思い切って見舞いに突撃し、怖がられて追い返されれた。
この件が問題となり、特別戦略室もクビになった。
そしてBloomが渋谷でデビューショーケースをする日。
久保田は自宅でSNSを見ていた。
そこで数か月前に自殺した2.5次元俳優『藤見倫太郎』のファンダム…『りんファミ』による、
渋谷の交番前での演説生配信を見つける。
陰謀論者と合流したりんファミは、どう考えても別人の「倫太郎の音声」を公開して場をしらけさせたが……
それでも推しへの愛を叫ぶ姿は、多くの人に届いているように見える。
演説を行っていた一人『隅川』は、「やっと自分を使い切った」と感じていた。
そこで一人の紫髪の女の子と目が合った。
彼女は「ちゃみする」ーーBloom道哉推しの『澄香』だった。
隅川は澄香を「過去の私」と感じ、
澄香も隅川を「視野を広めていたころの過去の私」と感じた。
(視野を広めましょう!という陰謀論者のスピーチのせいで)
澄香は演説ステージの後ろにあるBloomの広告前で、花道の仲間たちと写真を撮るために来ていた。
道哉はこの広告を喜んでいたーーー
そして両親にも大金を継ぎこんでいることがバレかけていることを考えると、引くわけにはいかない。
澄香は隅川に声をかけ、場所を開けてもらう。
生配信でそれを見ていた久保田は、顔は映っていないが、彼女が「ちゃみする」だと気づいた。
澄香と同い年なのに大金を継ぎこんでいると気になっていた、道哉の『信者』女性ーー…
他の花道メンバーが笑顔で顔を寄せ合って、自撮り棒を準備する「ちゃみする」を待っている。
指先一つで自分を使いきれるこの時代に、絶対に会いたいと思える人がいることは、楽しいし嬉しい。
脳みそを溶かして動く自分は、間違っていても誇らしい。
澄香に会いたい。
画面の中で彼女が、誰よりも楽しそうな表情で振りむいた。
登場人物相関図
登場人物の相関図です。
黄色が語り手となる3名です。

感想&考察 つまらない・向いていない人についても

目を惹かれる表紙で気になっていたのですが、この度2026年本屋大賞ノミネート作にも選ばれたと聞き購入。
面白かったです。が、怖い。実際モデルになっている出来事も想像できるのでリアリティが高く、これを読んでからアイドルにハマりたくないなぁと思いました。
再生機器もないのにCDにそんなに積むんだ…積ませるんだって新鮮にドン引きしてしまいましたね。
どうなんでしょう。3名の語りが回されるのですが、全員共感できない人はいると思います。
国見タイプというか……正気に戻るタイプは「あーーー待て待て!」みたいな感情に陥りますね。
さて、この作品名で検索すると、第二検索キーワードに「つまらない」と出てきます。
個人的には面白いと思ったのですが、共感性羞恥や、苦い気持ちになる箇所もありますし、
現実事件のどれか…例えば三浦春馬さんの死とかに沈んでいた人なんかが読むと辛く感じるかもしれません。
楽しい・スリル最高!というものが読みたいなら、同じ本屋ノミネート作の中で『殺し屋の営業術』のほうが面白かったです。
今のところ、個人的にはノミネート作の中で一番おすすめです。
さて、ここからは考察ですが……
味噌玉は脳味噌の比喩なんでしょうね。
一つ溶けにくかった味噌玉は、陰謀論を信じることにストップがかかった隅川の脳。
それでも「仲間」と一緒に動きたくて、無理やり溶かしてしまう……
すみちゃんとすみちゃん。最後、澄香が隅川を「過去の自分」と判断したのは考えさせられるところでした。
やはり読者視点で見ると、隅川は「澄香の未来の姿」という可能性のほうが強いです。
しかし「推しが自殺」なんていうのはそうそう起こる事態でもないので、反面教師と認識して正気に戻った方が良かったかと言うと、そうとも言えないんですよね。
間違いでもいいから、一番やりたいことをする。
外から否定されても自分の幸せを追う。
澄香がやっている通りでいいのかな、と思います。
しかも澄香には仲間もいて、会いたいと願う父親もいるわけで……
結末についても個人的にはハッピーエンドかなと思いました。
久保田がちゃみするを見て「澄香だ」と気づいたら……
もう話題に困りません。「道哉」という話が弾みまくるネタがあるわけです。
さらに澄香からすると、金の使い込みを怒られると思っていたところに(或いは母に怒られた後に)
「今回は見逃して、道哉の魅力を分かってくれる」父が現れたら最高でしょう。
久保田が振り込んだ留学資金の使い込みを許容し、「幸せそうで良かった」と言うことさえできれば……
多少歪ですが、ハッピーエンドはすぐそこだと思います。


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