菊池寛の小説『父帰る』。
タイトル通り20年ぶりに帰ってきたダメ親父と、息子の葛藤が描かれます。
この記事では登場人物やあらすじを分かりやすく解説。
物語のラスト後はどうなったのか…?についても交差考察していきます。
『父帰る』 の登場人物

まずは簡単に、登場人物のまとめです。
名前 | 年齢 | 関係 |
---|---|---|
黒田賢一郎 | 28歳 | 長男。役所勤め。父を拒絶する。 |
黒田新二郎 | 23歳 | 次男。教師を目指して勉強中。父を受け入れようとする。 |
黒田おたね | 20歳 | 末妹。結婚適齢期。父に戸惑う。 |
黒田おたか | 51歳 | 母。夫を待ち続けたが、子どもたちを必死で育てた。 |
黒田宗太郎 | 50代後半 | 20年前に家族を捨てて駆け落ちし、落ちぶれた姿で戻ってくる。 |
あらすじを簡単に解説!

明治40年ごろ、南海道の小さな街に住む黒田家。
母・おたかと3人の兄妹は、父・宗太郎に捨てられながらも、必死に生きてきた。
そんなある日、20年前に駆け落ちした父・宗太郎が突然帰ってくる。
母は驚きつつも涙ぐみ、次男・新二郎や妹・おたねも戸惑いながら受け入れようとする。
しかし、長男・賢一郎だけは違った。
「俺たちに父親なんていない!いるとすればそれは俺の敵だ」
拒絶する賢一郎。
貧しさから母と共に身投げした過去、幼いころから働くしかなかった過去を想えば、
自由気ままに生きてきた父を今さら許せるはずがなかった。
宗太郎は何も言い返せず、しょんぼりと家を出る。
野垂れ死にするつもりらしい。
しかしその瞬間――
「新! 行ってお父さんを呼び戻してこい!」
賢一郎の心が変わる。
弟たちは慌てて父を探しに行くが、すでに父の姿はどこにもなかった……。
ラスト(結末)を考察

物語のラスト、父が出て行ってからしばらくの無言をはさみ、気が変わった賢一郎。
それは「野垂れ死にするのに家はいらん」という父の言葉をかみ砕いた間でしょうか…?
しかし、弟に父を探させるもすでに父の姿は消えてしまっていました。
この先どうなるのか?読者にゆだねられた結末後を、いくつか予想してみます。
野垂れ死にエンド

宗太郎は自らの行いを恥じ、賢一郎に拒絶されたことで「自分には帰る場所がない」と悟った可能性が高いです。
だとすれば、さっさとどこかで自殺を図ってしまう結末もあるでしょう。
拒否されて一気に気力も衰えたはずです。
探したけど間に合わない…拒否した賢一郎が罪悪感を抱くような、野垂れ死にエンド。
和解エンド

その後みんなで探し回り、父を見つけて連れ帰るエンドもあるでしょう。
「新!行ってお父さんを呼び戻してこい!」と叫んだ賢一郎。
ですが、やはり許すかどうかは、その後の父の態度次第でしょう。
この時は、他の家族全員が父を受け入れようとしている事、「野垂れ死に」というワードをきいてとりあえず引き留める方に出た…と考えられます。
しかし時間をかけて父が償えば……
いずれは和解するグッドエンドも存在するはずです。
【感想】テーマは「家族の受け入れ」?

この物語の大きなテーマは、「家族を捨てた者は、再び家族として受け入れられるのか?」という問いにあると思います。
賢一郎の怒りは単なる感情ではなく、彼が生きてきた辛い過去そのもの。
だからこそ拒絶は当然とも言えますが、ラストの行動を見る限り、「完全に断ち切るつもりではなかった」ことも分かります。
これは、そんな情のある家族のお話だったと思います。
しかし、父はそんな賢一郎の思いに気づく前に去ってしまいました。
もしもう少し時間があれば……そう思わせる、切ないラストです。
どうにか和解してもらいたいですね。
まとめ
- 『父帰る』は、20年ぶりに帰ってきた父と息子たちの葛藤を描いた物語。
- 登場人物は、家族を支えてきた長男・賢一郎、父を受け入れようとする次男・新二郎、母・おたか、妹・おたね、そして駆け落ちして戻った父・宗太郎。
- 父を拒絶する賢一郎だが、父が去った後に「探してこい」と指示。しかし、すでに姿は消えていた。
- ラスト後の展開は、「父が野垂れ死にする結末」「家族が探し、和解する結末」などが考えられる。
- 物語のテーマは「家族の受け入れ」。父を許せるのか、許せないのか。読者に結末を委ねた作品。
ということでした。是非読んでみてください!
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