この記事では宮沢賢治「よだかの星」について
最後、なぜよだかは何故星になったのか?
ということを深く考えていきたいと思います。
結論としては、「地に住む生き物以上の聖なる心を持っていたから、死んで星になった」のではないか?
『俗世間に染まった地上の者や理』を凌駕する純粋さを持っていたから…とも考えられます。
詳しく考えていきましょう!
超簡略あらすじ
先に「よだかの星」のあらすじをおさらいです。
醜いヨダカはイジメ犯の鷹から逃げ、殺し殺される地上の世界が嫌になります。
しかし天上の星や太陽に救い求めても袖にされる始末……
絶望したヨダカはどこまでも高く飛ぶことで自殺しました。
それは同時に「天上の世界へ行く」という望みを叶えるものでした。
ヨダカは星となって、今も燃え続けています。
何故星になったのか?
星になるというのは、天上の聖なる存在になるということです。
よだかは『天に飛び上がることで自死』しました。
これは3つの事を意味します。
- 鷹からのイジメから逃れる(矮小な感情を相手にしない)
- 殺さないと生きられない…そんなこの世の辛さから逃れる
- 絶望の状況で「天上の世界へ行きたい!」という『希望』を見出し、実行しようとした
ただこころもちは安らかに、その血の付いた大きなくちばしは横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居りました。
どれも非常に尊い行動です。
つまりよだかの孤高の生き方は、「この世」の醜さを凌駕するものでした。
星の世界は神話の世界。
地上とは一線を画した存在です。
宮沢賢治の星への憧憬は『銀河鉄道の夜』などからもわかりますよね。
銀河鉄道の夜とは?こちらで解説▶銀河鉄道の夜の【意味が分からない】をまとめて解説!もう難しくない!
気高い死を遂げたよだかには、その世界に混ざる資格があったということでしょう。
その心の清らかさで人間(俗世間)を超えたヨダカは、天上の存在である星になりました。
天上世界は「正しい」世界!?
※『銀河鉄道の夜』・『双子の星』のネタバレが含まれます。ご注意ください。
宮沢賢治の作品ではイジメがたびたび取り上げられます。
かの有名な『銀河鉄道の夜』もそうです。
川で溺れたいじめっ子・ザネリは助かり、
助けた主人公の友人・カンパネルラは死亡します。
心優しいものが死に、いじめっ子はその後も生きている。
これは『よだかの星』と共通です。
ところが…いじめっ子が罰を受け、いじめられた方はきちんと難を逃れる話があります。
『双子の星』です。
タイトルから分かる通り、天上世界の物語です。
- いじめられたチュンセ童子とポウセ童子は、善行が知れ渡っていた為元の生活に戻ることができる。
- いじめた彗星は王様に罰される。
つまり天上世界はきちんと勧善懲悪で、
地上の世界では正しいほうが天上へと行っているのです。
そう考えると「よだかが死んでしまったのは悲しい」ではなく、「心優しい者が報われる世界に行ってくれて嬉しい」に、考え方が変わるのではないでしょうか?
よだかに似合うのは、どう考えても天上世界ですね。
感想&まとめ
亡くなった妹・トシの行方を追い続けた宮沢賢治。
正しいものが生き残るわけではないぞ!という主張をヒシヒシと感じました。
この世への皮肉でしょうか?
それにしても賢治ワールド「心の美しさ」を堪能してからの死!!!は、くるものがありますね……
よだかは「輝く存在になった」「その正しさが報われる世界に行った」と考えられないと、
ただ悲しくキツイ物語……
しかしヨダカは自分の理想に向かって飛びだったのです。
ちなみに。よだかは「他者の命を奪わないと生きていけない」ということに悩んでいました。
これと同じ要素を持つ賢治作品が「なめとこ山の熊」です。
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