死後に一躍有名になった文豪・宮沢賢治。
今回はそんな賢治の言わずと知れた代表作「銀河鉄道の夜」について…
内容が難しくて意味が分からない!という箇所を細かく解説していきます。
読むのを挫折する前に、一度この記事を参照してみてください。
目次
なぜ「意味が分からない箇所」が多いのか?
銀河鉄道の夜は美しい世界観から絵本にもなっているため、子供向けと思われている方も多いのですが、実は内容はかなり想像力や注釈を必要とします。
私も一度小学生の頃に読むのを断念した記憶がありますが…
それもそのはず。
内容に時代背景が反映されていて、それが分からないと難しく感じるのです。
歴史…「いろんな時代があった」ということをを知らない子供には、さらに難しく感じるかもしれません。
さらに宗教の知識・賢治の考えたファンタジー設定などが加わると、そりゃ難しいですよね。
以下、読む前に押さえておきたい前知識をご紹介します。
「らっこの上着がくるよ」?
いじめっ子ザネリが主人公ジョバンニに、
「らっこの上着がくるよ」
と悪口を言うシーンがあります。
状況から考えると悪口ですが、どういう意味なのか?
1912年に「臘虎(らっこ)膃肭獣(おっとつじゅう)猟獲取締法」……つまりラッコを捕獲するの禁止!という法律が制定・公布されました。
そして銀河鉄道の夜が書かれたのは1931年あたり。
(何度も修正されているので曖昧ですが)。
ジョバンニの父は漁師で漁にでています。つまり……
「お前は犯罪者の息子!」という根も葉もない悪口です。
お前らほんとに小学生か?ほんとに小学生か?と思うような、結構高度な悪口です。
タイタニック号沈没事故
イギリスの豪華客船「タイタニック」が、処女航海で氷山にぶつかり沈没したという事故。
1912年…ラッコ捕獲禁止令と同じ年に起こった映画で有名なこの事故が、なんと銀河鉄道の夜にがっつり登場します。
映画は見ても見なくても大丈夫です。賢治は映画どころかニュースすら見ていないはずです。
白黒テレビが1940年くらいなので、賢治は新聞に載っているタイタニックの記事を見て、想像で描写したと考えられます。
このシーン、銀河鉄道の夜の中でも私の一押しシーン。
泣きたくなる正しさ。宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の名言と名シーンまとめ
↑上の記事でもピックアップしていますので、是非読んでください。
ジョバンニの職場・活版処とは?
主人公・ジョバンニは家計を助ける為、活版印刷所でアルバイトをしています。
※現在ではデジタル印刷が主流なので、活版印刷はあまり使われません。
ジョバンニの年齢は記載されていませんが、おそらく小学生。高く見積もっても中学生でしょう。
今では禁止されている「児童労働」に当たります。
小学生の時に読んだら「子供が仕事する」というのが理解できないですよね。
ジョバンニは生活が厳しい為、どうしてもやらざるを得なかった模様。
そして具体的にジョバンニがしている仕事は「活字を拾う」という作業です。
小さなピンセットを使い、小さな粒のような活字……(特定の文字や記号が書かれたスタンプ的なもの)を拾います。
これは「虫めがねくん」と揶揄されるように目を酷使する作業。
「目を悪くするからゲームするな」の比ではないような、大変な作業です。
ジョバンニの「緑の切符」とは?
銀河鉄道の旅の中、車掌が切符を確認しにきます。
そこで慌てたのは、切符を買った覚えのないジョバンニ。
しかしカムパネルラがポケットから切符を取り出すのを見て「もしかしたら」と真似をすると、
そこには「緑の切符」がありました。
「四つに折りたたまれたハガキぐらいの大きさの緑色の紙」
「黒い唐草模様の中に、奇妙な文字が十個ほど印刷されたもの」
周囲の人間の反応を見るに、これはかなり特別な通行証のようです。
「天上どころか、どこでも自由に行ける通行券」とも言われています。
残念ながら研究でもはっきりとした結論が出ていないこの切符の謎。
ここからは考察になりますが、
賢治の宗教的な考え方を考慮すると、単なる交通手段の切符を超えた、魂や精神の自由、あるいは悟りの象徴…などと考えられます。
それを無意識に持っていたジョバンニ。
気づいていないだけで、厳しい生活の中でも、本当の幸いを探しに行ける…
そのような希望のチケットなのかもしれません。
銀河鉄道の夜のあらすじ
最後に銀河鉄道の夜のあらすじをおさらいしておきましょう!
主人公はジョバンニ。
父は漁に出て戻ってこず、母は病気がちの為アルバイトに明けくれています。
そのため天文学の授業中にあてられても意識がぼーっとして、この答えが正しいのかそうでないか自信がありません。
代わりに先生に指名されたのは、友達のカムパネルラ。
カムパネルラ(性別記述は特になし)は正解を知っていましたが、ジョバンニを気遣って答えませんでした。
いじめっ子のザネリがジョバンニをからかってきます。これはいつものことです。
7月7日星まつりの日。
ジョバンニはアルバイトの為最初からは参加できませんでしたが、夕食を食べた後に少しだけ見に行くことにしました。
会場に向かう途中の丘で、汽笛が聞こえてきました。
どこかで、ふしぎな声が「銀河ステーション、銀河ステーション」とアナウンスします。
来た来た来た!ファンタジー突入アナウンス!!
眼の前がさあっと明るくなって、気がつくと列車の中にいるジョバンニ。
すぐ前の席には濡れた黒い上着を身に纏った少年。
よく見てみるとカムパネルラです。
2人は列車で、美しい銀河鉄道をめぐる旅にでます。
ここはどこで、どうしてカムパネルラがいるのか……?
列車に揺られる感情と一緒に、徐々に明らかになっていきます。
まとめ
『銀河鉄道の夜』は「本当のさいわいとは何か?」を問う、きらめく星座の旅です。
是非この解説を参考にして読んでみてください。
ストレスなく読み切って、最後に感動を得られることを願っています!
こちらに名言をまとめていますのでご一緒にどうぞ↓
傑作です!
参考文献:大石加奈子 [著]. 宮沢賢治のテクストの視覚的構造性 : 光学物語としての『銀河鉄道の夜』, [大石加奈子], [2002].
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