宮沢賢治作の童話「ツェねずみ」。
自分の思い通りにならないとすぐに他者を恨み、誰からも相手にされなくなるねずみの物語です。
動物を通じて人間社会を風刺した「動物寓話集中」の一作。
本記事で『ツェねずみ』の
- イラスト付き簡単なあらすじ
- 解説(まどうてください・韓国との関連)や考察(ツェの意味)他
- 個人的な感想
をお届けします!
目次
ツェねずみの簡単なあらすじ
古い家の天井に住んでいるツェねずみは、自分の思い通りにならないとすぐに他人を恨むため、誰からも相手にされなくなってしまいました。
仕方なく、柱やチリトリ、そしてバケツと付き合い始めますが、性格は変わりません。
最後に相手をしてくれたのは、針金でできた鼠捕り。
しかしツェねずみのあまりにも高慢な態度に怒りを感じ、鼠捕りは彼を閉じ込めてしまいます。
その結果、ツェねずみは下男に捕まってしまいました。
解説:まどうてくださいの意味は?
作中に登場する聞きなれない言葉「償うてください」(まどうてください)。
この意味は、「償ってください」、つまり「自分に対して何かを弁償してください」という意味です。
ツェねずみが「弱いものをだました」として、自分が損をしたことをいたちに訴え、何らかの形で償い(弁償)を求めています。
「まどうてください」は、おそらく「償ってください」の古い言い回しや、少し間違った言葉の使い方ですが、ツェねずみが執拗に不満を訴え、弁償を求めている様子が伝わります。
考察:「ツェ」の意味は?
「ツェ」ねずみの「ツェ」とは何なのか?
これは舌打ちのような「チェッ」という音から来ている可能性があります。
ツェねずみはいつも不平不満を言っていますね。
例えば、いたちから金来糖(こんぺいとう)を教えてもらったとき、蟻のせいで手に入れることができませんでした。
すると、ツェねずみは「弱い者をだますなんてひどい!」と大声で叫び続けていました。
このように、自分の思い通りにならないと、他者の親切ですら逆恨み……
そんな彼の性格の悪さを表した名前かもしれません。
ツェネズミは「動物寓話集中」三作の1つ
「ツェねずみ」は、原稿に赤インクで「動物寓話集中」と書かれており、
「鳥箱先生とフゥねずみ」や「クンねずみ」とあわせて、動物を通じて人間の愚かさを風刺した作品です。
これら三作が共通のテーマを持っていることは、「ツェねずみ」の結末が「ねずみ競争新聞」に報道され、
その記事を「クンねずみ」が読む場面からも明らかです。特に「クンねずみ」では、この関連性が強調されています。
いつでも退会できます。
結末が面白い!
最後にツェねずみの相手をしたのは、誰からも嫌われていた鼠捕りでした。
しかし、鼠捕りは「人間よりもねずみの方に同情している」という理由で、ツェねずみを相手にしました。
この奇妙な考え方が、作品の中で非常に愉快な結末を生み出しています。
また、この作品が気に入った人にはコミカルなこちらの賢治作品もオススメ!
▶どんぐりと山猫で宮沢賢治が伝えたいこととは?イラストで解説
情報:ツェねずみと韓国の関係とは?
ツェねずみと検索すると、第二検索ワードに「韓国」という名前が登場します。
これの謎について調べてみましたが、どうやら韓国ハンソル社というところから、「ツェねずみ」の絵本(韓国語)がでているようです。
関連ページ:かろくこうぼう
韓国をモデルに~~とか、そういう話ではありません。
じゃあモデルはだれなのか?となると、現代の訴訟社会を連想させます。
何か問題が起きると、すぐに他者に責任を押し付けようとする人……
宮沢賢治は無私の境地を目指した人物であったため、自己中心的な人間に対して強い嫌悪感を抱いていたのかもしれません。
感想
ツェねずみのひねくれた性格に、思わず苦笑してしまう作品でした。
他人の親切に感謝せず、逆恨みする姿……つい、「だれだれのようだなぁ」と考えてしまいませんか?
宮沢賢治の鋭い社会批判が光る作品だと思います。
鼠捕りがツェねずみを閉じ込めてしまう結末が、ユーモラスで凄く好きです。
賢治の社会批判が光る作品は他にも▶「注文の多い料理店」「黄いろのトマト」など
まとめ
- 「ツェねずみ」は、他者を恨み続けるねずみの物語
- 作中の「まどうてください」は、「償ってください」という意味
- 「ツェ」という名前は、舌打ちのような音から来ている可能性がある
- 動物寓話集の一作で、人間の愚かさを風刺している
- 結末では、鼠捕りとのやり取りが非常に面白い
是非、読んでみてください!
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