大正7年に作成された、宮沢賢治の処女作『双子の星』。
双子座(ポルックス・カストル)モチーフのお話です。
ファンタジー色が強い物語ですが、
時々「エッ!?」っというようなユーモアが含まれるのが、面白い所です。
この記事では
・【イラスト付き】分かりやすいあらすじ
・【考察】この作品が伝えたいこととは?
をお届けします!
簡単なあらすじ
面白い所を抜粋しつつ、あらすじを簡単にご紹介します。
この物語は2部編成です。
天の川の岸に住む双子の星、チュンセ童子とポウセ童子。
お互いの呼び方は「チュンセさん」「ポウセさん」です。
二人のお役目は、毎晩星巡りの歌に合わせて笛を吹くことです。
いつでも退会できます。
第一部
ある朝二人が空の泉に行くと、大烏の星とサソリ星が喧嘩を始めました。
サソリ「はてな、どうもこの水は変に土臭いぞ。どこかの真っ黒な馬鹿ァが頭をつっこんだと見える。」
煽りよるwww
双子は喧嘩後ボロボロになった両者を介抱します。
サソリ毒を吸い出したり、傷口に息を吹き込み続けたり…(※おそらく息に不思議な力がある)
無償の善意です。
サソリに送ってほしいと頼まれ、十倍くらいあるサソリを支えるという無茶をする二人。
西の山は真っ暗で、勤務の時間も迫っています。
ついに倒れたところで、王の使者である稲妻が迎えに来て助けられました。
王は双子の上司。
人間の目を意識して星の運行を保つというお勤めの時間にも間に合いました!
第二部
地上が雨(つまりお勤めが無い)夜、二人は彗星に騙され、海底に落とされてしまいます。
双子の善意や無垢さに付け入るのが結構います……
「ひとではもとはみんな星さ。(略)何だ。それじゃ新米のひとでだ」
ヒトデとなってしまった二人。
赤いヒトデたちに囲まれます。
「こら着物をよこせ。」「こら。剣を出せ。」「税金を出せ。」「もっと小さくなれ。」「俺の靴をふけ。」
税金っ!!?
軽んじられる二人でしたが、しかし海の王は二人の善行を聞き及んでいました。
「私はそれ(サソリを命がけで治した話)をこちらの小学校の読本にも入れさせました。」
二人の善行は教科書になっていました……
好意的な海の王の計らいで、二人は竜巻に乗って天上に帰ることができました。
途中、彗星がバラバラになって海に落ちていくのが見えます。
「あいつはなまこになりますよ」
ナマコになる罰を受けた彗星。
チュンセ童子とポウセ童子は、王様に帰還報告するとともに
「なまこももしできますならお許し願いとう存じます。」
と、騙した相手の恩赦を願い出ました。
優しすぎる……
めでたしめでたし。
【考察】この作品が伝えたいこととは?
双子の星はかなり道徳的な話。
- 献身的な無償の行為
- 他人を疑わない双子の性格
- 陥れられても恨まない清純さ
が描かれています。
これは雨ニモ負ケズにも通じるところがある、賢治の憧れの姿です。
優しさは誰かが見ている。それは天から海の底まで伝わる。
宗教的な信心の美しさを伝える物語です。
このような「誰かの為に」や「恨まない」という強い心が描かれている作品は、宮沢賢治でいうと他にも
- 究極の自己犠牲が描かれる「グスコーブドリの伝記」
▶グスコーブドリの伝記は意味不明?あらすじと伝えたいことを解説! - 他者の命を奪う事をやめる「よだかの星」
▶よだかはなぜ星になったのか?【宮沢賢治・よだかの星考察】
があります。
まとめ・感想
- あらすじ
- 作品が伝えたいことは「理想の人格」と「優しさは誰かが見ているということ」
以上をお伝えしました!
形態が勧善懲悪なので、宮沢賢治の作品のなかでも理想の主張が強めの作品と感じました。
しかし、星座のきらきらとした世界観を楽しむ目的でも読める作品です。是非お手に取ってみてください。
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