宮沢賢治の未完の童話『サガレンと八月』は、オホーツク海を舞台に、風や自然との対話を描いた幻想的な物語です。
母の戒めを破った少年タネリが神々によって罰を受けるという、民話的な要素もあるこの作品。賢治自身の体験や感情も、深く反映されています。
この記事では、そんな『サガレンと八月』のあらすじと制作背景について解説していきます!
簡単なあらすじ
農林学校の助手である「私」は、オホーツク海の海岸で貝殻を集めていました。
西から吹く風が、「何をしているのですか?」や「何かを調べに来たのですか?」と問いかけてくるように思えます。
最終的には、風や波が話しているのか、主人公自身が考えているのか、何が現実で何が夢なのかが曖昧に……
風は「私」に語りかけ、やがてタネリという人物の断片的な物語を語り始めます。
※「くらげを通して物を見てはいけない」とは……くらげを通して物を見ると、目に良くない影響を与えると、(この物語内では)されています。
タネリの兄も過去にその教えを守らず、目に大きな被害を受けた経験があるとか……
くらげには何か不思議で危険な力があるようです。
いつでも退会できます。
タネリの物語とは?
タネリという少年が、母親から「クラゲを拾わないように」と注意されますが、興味に負けてクラゲを拾ってしまいます。
タネリがクラゲを透かして見ると、周囲の景色が恐ろしいものに変わり、ギリヤークの神様・犬神が現れます。
※「ギリヤークの神様」とは……ギリヤークと呼ばれる北方の先住民族が信仰する神々のことです。この作品においては、自然や海に関わる神々として描かれており、タネリという人物を海底に連れて行く力を持つ存在として登場しています。
犬神はタネリを捕まえて海の上を走り、彼を海底へ連れて行きました。
タネリはそこで大きな蟹に変えられ、犬神から「ちょうざめ」の下男として働かされる運命に落ちてしまいます。
タネリは母親の言うことを聞かなかったことを後悔し、涙を流しますが、逃げられない状況に……
恐ろしい「ちょうざめ」に使われる運命を、受け入れざるを得なくなりました。
サガレンと八月 解説
物語の中心は、オホーツク海の海岸で貝殻を集めている「農学校助手」の「私」と、そこに吹く風との対話。
そしてそこに民話的なタネリの物語が加わっています。
ギリヤークの神々は、小さな禁忌でも破れば容赦なく罰を与える存在として描かれており、サガレン(樺太)の厳しい自然での人間の無力さが描かれています。
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作品が書かれた背景
この童話が書かれたのは、大正11年、賢治が樺太を訪れた際の出来事がきっかけでした。
この旅行は、教え子の就職依頼のために行われたものでしたが、同時に、前年に亡くなった妹・トシの行方を探ろうとする旅でもありました。
賢治にとって、トシの死は非常に大きな出来事であり、この樺太の旅が彼の心の中で特別な意味を持っていたのです。
この旅行での体験は、その後「オホーツク挽歌」として詩に結実しました。賢治の作品には、トシとの死後の通信や、禁忌を破った自分自身の体験が反映されており、
この童話もそうした彼の個人的な感情が深く封じ込められた作品となっています。
まとめ
サガレンと八月についてまとめると……
- オホーツク海の海岸で、風と「私」の対話が物語の始まり。
- 少年タネリは母の戒めを破り、クラゲを拾い透かして見てしまう。
- その結果、ギリヤークの神様である犬神が現れ、タネリを海底へ連れていく。
- タネリは恐ろしい「ちょうざめ」の下男として働かされる運命に。
- 賢治の個人的な感情が反映された作品で、自然の厳しさと人間の無力さが強調されている。
ぜひ、この幻想的な物語『サガレンと八月』を読んでみてください!
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