『星の王子さま』の中でも特に印象的な『王子さまとバラとの関係』。
王子さまは気まぐれでプライドの高いバラに振り回され、ついには星を飛び出します。
しかし数々の出会いやキツネの言葉を通して、バラへの愛情に気づきーー……
この記事では、王子さまとバラの関係を振り返りながら、
バラへの愛に気づく名言や、その後の二人の関係はどうなったのか?を考察していきます。
目次
星の王子様とバラの関係

まずは王子さまとバラの関係を整理しておきましょう。
- バラ (花と書かれている場面も)… プライドが高くワガママを言って、王子さまを困らせる彼女のような存在。
- 王子さま … そんなバラを溺愛していたけれど、ついに耐えられなくなり、家(星)を飛び出した彼氏のような存在。
けれど地球で多くの出来事を経験し、王子さまは 「年月を共に過ごすことで唯一無二の存在になる」 という真実に気づきます。
そして「死」に近い恐怖をも受け入れ、再び星へと帰るのです。
あまりに解像度が高い『面倒な女』

あまりに解像度が高い「面倒な女」な『バラ』。
バラは身勝手で気難しく、プライドの高さから素直に愛情を伝えられません。
そしてそれを、王子さまも分かっています。
「ボクのバラがこれを見たら、きっと傷つくだろうな。そして、きまりがわるいので、咳をたくさんして、死んだふりをするに決まってる。そしたら、ボクは彼女を介抱するふりをしなくちゃ。そうしないと、本当に死んじゃうかもしれないから」
児童文学として読むにはあまりにリアルで、「モラハラ彼女では?」と感じてしまうほど。
王子さまが逃げ出したのも無理はない、と読者は共感してしまうのではないでしょうか?
バラは著者の妻がモデル

余談ですが……解像度が高いのには理由があり、
バラのモデルは、作者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの妻、コンスエロだそうです。
※コンスエロ自身が『バラの回想(The Tale of the Rose)』という回想録を残しています。
コンスエロはプライドが高く気まぐれで、しばしば夫を困らせる存在でした。
加えて体が弱く喘息持ちで、頻繁に咳をする姿はバラの描写と重なります。
「咳をして死んだふりをするかもしれない」…これも実際にあったことかもしれません。
サン=テグジュペリは妻に振り回され、時に逃げ出すこともありましたが、(まぁサン=テグジュペリ自身も他の女性との噂があったりはしたようですが…)
それでも最後まで、彼女を特別な存在として愛し続けました。
バラへの愛に気づかせるキツネの名言

地球に来た王子さまは、自分の星のバラと同じような花が無数に存在していることを知り、衝撃を受けます。
「自分のバラは特別ではなかったのか」と。
そんなショックを受ける王子さまの、考え方を変えたのがキツネでした。
「飼いならすことで、世界にひとつだけの存在になる」。
王子さまは思い出します。
- 水をあげて
- 毛虫を退治して
- 風よけのついたてを立てて
- 不平を聞き、わがままに付き合って
そんな「自分が時間を注いできたバラ」が特別なのだと。
「君がそのバラのために費やした時間が、バラを大切なものにするんだ」
君は、いったん誰かを飼いならしたら、いつまでもその人との関係を大切にしなくちゃ
王子さまは、この言葉を繰り返し胸に刻んでいます。
これは「運命の人」なんてロマンチックなものではなく、「一緒に過ごした時間が愛を作っていく」という現実的な恋愛のすすめ。
愛を長続きさせる格言です。
王子さまとバラの結末

ランプの火のように揺らめきつつも、バラのことを誠実に考え続けてきた王子さま。
彼は最終的に「世間知らずのバラを守ってやらなければならない」という結論に至ります。
地球から自分の星に帰るために、体を捨てるような決断をした王子さま。
恐怖を超えてでも帰ろうとしたのは、「バラと共に生きる」 ためです。
王子さまが無事星に帰れたのか、バラと仲良くやれているのか…それは描かれていません。
【考察】王子さまが星に帰ったその後は?

『星の王子さま』は、結末をあえて余韻のある形で終わらせています。
ここで、二人がその後どうなったのか少し考察してみましょう。
バラはこれまで、素直に「愛している」と言えず、ワガママや虚勢でしか気持ちを表せませんでした。
しかし、王子さまが戻ってきたこと自体が「最後まで彼女を大切に思っている」証。
バラがこれを感じ取って、少しずつでも態度を和らげてくれたら……
互いに歩み寄れる関係に、変化する可能性は十分あります。
また、王子さまのほうも、以前のようにバラの言葉に傷ついて逃げ出すことはないでしょう。
多少冷たい態度を取られても、「バラを守ることが自分の使命」と受け止めて、成熟した愛を示せるかもしれません。
王子さまとバラのその後は「完全なハッピーエンド」とは言い難いです。
しかし揺れ動きながらもどうにか続いていきそうな……
以前より穏やかで強い絆が、結ばれていきそうな気がします。
まとめ
- バラはワガママで気難しい存在だが、唯一無二の存在だと王子さまは気づいた。
- 王子さまは一度逃げ出したが、経験を経てバラの愛を理解する。
- キツネの名言が「時間をかけた存在が愛」だと教える。
- 王子さまは恐怖を超えてでも星へ帰り、バラを守る決断をする。
- その後は読者の想像に委ねられ、余韻を残して物語は閉じる。
ということでした。
『星の王子さま』に興味があるなら浅岡夢二翻訳が分かりやすくておすすめです。
是非読んでみてください!▼
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