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恋に至る病考察。やっぱりそうかの意味・4行消しゴム・15秒後・凧について他

小説・実用書

斜線堂有紀著作『恋に至る病』考察記事です。

  • 景が死に際に「やっぱりそうか」と言った理由
  • ラスト四行の意味は?消しゴムについて(15秒後の物語も含めて
  • 景はなぜ少女の「凧」を隠したのか?
  • 根津原のイジメを「景が指示した」はあり得るのか?

について考察していきます。

あらすじネタバレ解説はこちら

【考察】「やっぱりそうか」の意味は?

デザインナイフ

景は善名さんにデザインナイフで刺された後、けたたましく笑い

「やっぱりそうか」

と言いました。

個人的な解釈ですが、これは「やっぱり自分は刺されて終わるんだ」ということだと感じました。

そうであれば、景が「ブルーモルフォを最後までやり遂げる」と口にし、
「最後とは何か?」と聞かれたら口をつぐんだ177ページ。

この答えが、「自分はプレイヤーに殺されるだろうけど、それを聞いたら宮嶺は止めるから言えない」…ということになります。

むしろ、今まで犯罪沙汰にならなかったことが凄いですよね。

自暴自棄になる可能性のある「死にたい人間」に、美少女が一人で会う……

しかも会う時点で「唯一自分を知ってくれる人物」として、見た目関係なく特別になっているわけですから。

「一緒に死んでくれ」と言われたことくらいありそうですよね……。

当然、景は防犯に細心の注意を払っていたことでしょう。

実際、元5年2組の友達「緒野江美」とメッセージのやり取りをするときは、身バレしないように敬語にしていた節があります。

ですが直接の知り合いである善名は……

予想外の行動をとる「死にたい人間」。そういう人物に目を付けられても、景はやましい所があるため警察に相談できません。

だから笑ってしまう程予想通り。

けれど本当は「化け物から普通の女の子」に戻る終わりを望んでいたのかもしれません。

「宮嶺を傷つけられてからずっと消えない炎がある」と言っていた景。

これは好きな人に「死にたい」とまで言わせたイジメを、見て見ぬ振りした人間への復讐の炎

ですが「いつか傷は治ると思ってる」とも言っていました。

イジメを見て傷ついた自分の心いつか癒え、化け物から普通の女の子に戻れたら……

そうすればブルーモルフォを止めて、普通のカップルとして旅行にでも。

そんな宮嶺と同じ夢を、景も抱いていた可能性があるのです。

ラスト4行『消しゴム』を考察

宮嶺の使いかけの消しゴム

 僕の目の前には、透明な袋に入った消しゴムが置かれている。半分ほど使ってあるそれには、滲んだインク汚れが付着していた。何も知らない人が見れば、それが何かは分からないだろう。
 けれど僕は、それが自分の名前であることを知っている。

物語ラスト四行のこの文章。

これは、イジメの最初に「宮嶺の筆箱から根津原が盗んだ消しゴム」を、景が取り返していた…ということです。

そしてこのことを宮嶺が知ったのは、6・7年たった景が刺された後。
救急車を呼ぼうと、景のポケットからスマホを抜き取った時です。

その時、ポケットから消しゴムが落ちました。

ここから

  • 消しゴムを取り返したにもかかわらず、宮嶺に言わずに持ち続けた
  • 消しゴムは家が火事で燃えることを予想して、家から持ち運んできた大切なもの

ということが考えられます。

なぜ言わなかったのでしょうか?

当時の5年2組には、「好きな人から消しゴムをもらえば両想い」というおまじないが流行っていました。

宮嶺に恋をしていた景は、これに頼った可能性があります。

もし、この消しゴムを宮嶺の心理的掌握に使おうとしたならば、もっと前に「もらっていい?」的な色仕掛けをやっていたでしょう。

けれど言わずに、密かにポケットに入れていた景。

ラスト四行は、死しても尚残った景がくれた愛。それを自分だけが理解している喜び……

そんな宮嶺の幸せが描かれています。

15秒後の物語について

ナイフとフォーク

本編15秒後の物語がネット上に公開されているのを知っていますか?

転んだふりをした宮嶺が、ビニール袋に入った消しゴムを奪い、景の遺骨に見立てて食べる……

…という……

かなりサイコパスな最後が描かれています。

「好きな人を食べて自分のものにしたい」というカ〇バリズムが性癖の人間がたまーーーーーにいますが、宮嶺はその扉を開けている感じですね。

捨てられるかもしれない思い出の品を、自分の中に入れた宮嶺。

彼女の愛情の欠片を独り占めする、エゴイストな主人公です。

【考察】景が凧を隠した理由は?

凧

すべての始まりとも言える、小学五年生の校外学習時の「凧」

景の自然公園での不可思議な行動をまとめるとこんな感じです。

  1. 少女の凧を隠し、
  2. 泣いている少女を(宮嶺の前で)慰めて笑顔にし、
  3. 凧を見つけたふりをして、公園の事務所に届けようとした。
  4. しかし凧を取ろうとして整備中の滑り台に上り、落ちた。(右目に傷が残るほどの怪我)
  5. 途中、宮嶺が見ていたことに驚いた反応をしながらも、「ずっと前から気づいてた」と矛盾することを言っている。

いったい何がしたかったのでしょうか?

これは「宮嶺に好かれたくて良い子を演じたけど、落ちて怪我したのは予想外だった」が正解だと考えられます。

まず、こんな回りくどいことをして「宮嶺と少女どちらの好意がほしかったのか?」と言う部分。

少女の好意が欲しいなら、一緒に凧を探してあげて…という方法もあったはずです。

しかし景は凧を見つけても「少女を探して届けよう」ではなく、「公園の事務所に届けよう」と言いました。

意識しているのは「宮嶺の目」。紛れもなく「宮嶺に素敵な人だと思われたい」からとった行動です。

しかし、「宮嶺に罪悪感を与える為、わざと怪我をした」というのは、流石に無いでしょう。

  • どこにどんな怪我をするか、傷跡が残るのかを正確に予想することは不可能
  • 「顔に怪我」は、失うもののほうが大きいと分かるはず(可愛い顔をしている自覚がありそうなので)
  • 景が落ちた時、宮嶺も近くにいた。最悪宮嶺も巻き込んで怪我をさせ、嫌われる可能性がある

そもそも景は、凧を隠すために一度滑り台に上っています。その時は大丈夫だったのです。

落ちたのは、宮嶺を振り向いて手すりに体重をかけてしまったから。
相当驚いたことでしょう。

この後自分の怪我を「気持ち悪い」と表現し、学校に行けないと考えていた景。これは本心だと思われます。

【考察】いじめを景が指示した説について

跳び箱

最後に私が途中で抱いた疑問…

「根津原が行っていたイジメを、景が指示していた説はないか?」について考えてみましょう。

実際「宮嶺に好きになってもらうため、イベントとしてイジメを起こす」というのは無くはない気がしてしまいます。

この件より前の「凧の件」が自演だった為、尚更です。
その場合、思考回路はこんな感じ。

  • 根津原に虐められた宮嶺を自分が助ければ、自分の事をもっと好きになってくれるかも
  • 自分のヒーローになってくれると言った宮嶺を、わざと跳び箱に閉じ込められて、助けに来てくれるか試したい
  • 奥手な宮嶺を、根津原というライバルを出して焦らせよう

実際、上履きの出来事は「景が隠していたのでは?」と疑ってしまいましたし、

小学5年生の根津原がブログを作ったという点も、「景なら作れそうだけど…」なんて考えてしまいました。

しかし、やはりこれは疑いすぎだと結論付けます。

理由は、ブルーモルフォが「イジメへの復讐心」から生まれたものだから。

「自分の大切な人を傷つけられた」……これを見て見ぬ振りした周囲への復讐心がブルーモルフォになりました。

これが「自分が傷つけた」ならおかしなことです。

やはり根津原主犯のイジメがあっての復讐心。根津原が恋…信望に近いモノを景に抱いた結果であり、

景の自演ではないでしょう。

紹介した書籍▼

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