この記事では永井紗耶子著作『木挽町のあだ討ち』(原作小説)について……
- 作品概要
- あらすじ解説(ネタバレ無し→ネタバレ有り)
- 登場人物相関図
- 読書感想
をお届けしていきます!
目次
【概要】『木挽町のあだ討ち』とは?
江戸時代、木挽町にある芝居小屋で一件の仇討ち事件が起こった。
主人公・総一郎は一年半前のこの事件について、目撃者たちに話を聞き回る。
【仇討ちとは?】
主君や肉親の仇を討つため、藩から免許(免状)を受け、奉行所へ届け出る制度。
仇を探し出して討ち果たすまで、国元へ帰ることは許されない。
……という内容のミステリーです。
証言禄かな?という感じの書き味ですが、「一年半前に起こった事件」の真相を追っていくミステリーです。
| ジャンル | 時代小説/仇討ちミステリ |
| 発売年 | 2023年 |
| 賞 | 第169回直木賞 第36回山本周五郎賞 |
| モデル | 特定の実在事件を直接モデルにした作品ではない (仇討ち制度・歌舞伎界隈の史実風俗を下敷き) |
| メディア化 | 2026年2月27日実写映画公開 2025年4月歌舞伎として上演も |
あらすじ(全体像・ネタバレ無し)

一年半前、江戸にある芝居小屋『森田座』の小屋の裏手で『仇討ち』が行われた。
- 仇を討った人…菊之助
- 討たれた人…作兵衛
菊之助は、父『伊納清左衛門』を殺した元家人(家来的なもの)である『作兵衛』を、
女の恰好をしておびき寄せ、真剣で首を取った。
沢山の人に目撃されたこの一件は、今だ語り継がれている。
そして現在…参勤交代の江戸番の合間に、この一件について聞き回る男がいた。
菊之助の縁者である『総一郎』(主人公)。
総一郎は「菊之助と面識があり、仇討ちも目撃した以下の人たち」に、
- 木戸芸者の『一八』
- 殺陣指南の『与三郎』
- 衣裳部屋の女形『ほたる』
- 木彫師『久蔵』
- 劇作者『金治』
(各々の生い立ちから)話を聞き……
- そもそもなぜ作兵衛は菊之助の父を殺したのか?
- 『あだ討ち』の真実
- 菊之助のその後と、総一郎が仇討ちについて調べる理由
が徐々に明らかになっていく。
真相と相関図(結末までネタバレあり)
ここからネタバレ有りの真実です。

菊之助の父の死の真相

菊之助の父『清左衛門』は、作兵衛に殺されたのではなく、そう見せかけての自殺(自刃)だった。
理由は御勤めの中で御家老の横領に気づき、摘発しようとしていたら脅しを受け、思いつめてのことだった。
年若い御前様を舐めているのか、御家老やその息のかかった連中は好き放題している。
清左衛門の弟まで横領に関与している。
証拠を集めて御前様に直訴しなければならない……
しかし、清左衛門の元に裏帳簿を持ってきてくれた商家の使用人は遺体で見つかり、
清左衛門の妻・お妙の枕元には匕首(短剣)が突き立てられていた……
追い詰められた清左衛門は、家人(家来)である作兵衛に頼んだ。
自分を斬り、「帳簿を御家老に命じられて盗み出した」と嘘の証言をして、菊之助に討たれてくれ。
自分が殺されれば、弟は自分が家を継ぐために菊之助に仇討ちをさせるだろう。
(仇討ちはやり切らないと家に戻れないため)
そして菊之助に、御前様が成長なさった時に、御家老の悪事を断罪するよう託してほしい……
事は清左衛門の思うままに動いた。
15歳の菊之助は、作兵衛に再会してこの真実を聞いた。
芝居小屋での再会と『徒討ち』

仇討ちを申請した菊之助が江戸の芝居小屋に向かったのは、母・お妙の案だった。
武士の理から離れた元婚約者・野々山正二(劇作家・金治)なら、柔軟な考えで菊之助を助けてくれるのではないか?
お妙は金治にも文を出し、清左衛門の竹馬の友である『加瀬』に調べてもらったことを伝えていた。
やがて『森田座』にたどり着いた菊之助。
菊之助の行動を予想した作兵衛と再会して真実を聞き、仇討ちを実行すべきか揺らぐ。
この状況を知り動いたのは金治だった。
金治は菊次郎を好ましく思う協力者を集めたうえで、役人を騙せる『徒討ち』の台本を書き、二人に演じるように言った。
【徒討ち】
意味がないもの、空振りの復讐という意味
協力者は以下の通りだ。
- 作兵衛の三下役……一八
- 仇討ち時の殺陣指南……与三郎
- 偽物の作兵衛の首を作る……久蔵
- 衣裳・化粧……ほたる
昨今のお奉行は物騒なもの嫌い、あまりしっかりと討ち取った首を見ない…それを見越しての偽首も成功した。
菊之助は仇討ちを成したとみなされ、国元に帰った。
作兵衛は現在、芝居小屋の奈落で働いている。
菊之助のその後と総一郎の事情

徒討ちから半年後に元服した菊之助。
鷹狩りの時に御前様から「そなたの父は清廉な人であった」と言われ、裏帳簿と御家老の御用金着服を訴えた。
その後、御家老は蟄居(謹慎)となり、叔父も国を追われた。
甘い措置とはいえ、清左衛門の悲願が叶えられた形だった。
その後、菊之助と『お美千』の結婚話が持ち上がった。
兄・総一郎と共に、菊之助が仇討ちに出る時も見送りに来てくれた二人だ。
しかし二人は、幼いころから世話になっていた作兵衛を、菊之助が討ったことに思うところがあった。
それに気づきつつも、事の次第を自分から話す勇気がない菊之助は……
義理の兄となる総一郎に、『木挽町にいる方々を訪ねてほしい』と頼んだ次第だった。
読書感想

ミステリーという前知識ありで読んだんですが、最初のほう拍子抜けな感じがありまして…
時代物にあまり触れてこなかったせいでの気後れもあったのかもしれませんが、それでも物語に引き込まれたのは遅めな作品だった気がします。
第三幕の『ほたる』の語りで泣きかけて、第四幕の子供を失った久蔵&お与根夫婦に泣きました。
個人的な最高潮は中盤です。疑いながら読んだせいで、ちょっとラスト予想できてしまった……
好きですけどね、大団円ハッピーエンド!!
菊之助、結婚して幸せになってくれ!!
世知辛い世の中で一生懸命自分の答えを生きていく…ミステリー要素よりは、そういう人情のほうが印象的な作品でした。名言も数多いので、ぜひ読んでみてください。
映画化も楽しみで、芝居になるとまた迫力があるんでしょうね。
あと、形式としては芥川龍之介の『藪の中』を思い出しました。
犯人は誰!?芥川龍之介『藪の中』を解説!主観によって違う供述
事件の供述を聞いていく…というミステリー作です。
こちらも面白いので、読んだことがない人はぜひ読んでみてください!

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