カズオ・イシグロ著作『クララとお日さま』読了しました!
人工親友『クララ』は病弱な少女『ジョジ―』に買われ……という、残酷さと愛情のサイエンスフィクションでした。
この記事では
- 結末までのネタバレあらすじ(重大な部分は折りたたんでいます)
- 用語・疑問点解説(AF、向上措置、店長について)
- なぜ「つまらない」と感じる人がいるのか?
- 個人的感想
をお伝えしていきます。
あらすじ(結末まで)

AIが発達し、太陽光で動く人工親友(AF)が売られる時代。
『店長さん』の店で売られていた、ひときわ感受性豊かなAF『クララ』は、
病気の少女『ジョジ―』に迎えられることになった。
ジョジ―はクララをひと目で気に入り、
ジョジ―の母『クリシー』も、クララにジョジ―の歩き方を真似させたりして吟味した後、購入を決めた。
そして人工親友としての日々が始まる。
クララの役割は、病気であるジョジーの心のよりどころになることだ。
ジョジ―の病気は、
『(能力の)向上措置』を受けたことが原因だった。
そしてジョジ―の姉も、向上措置の影響で亡くなっていることが判明する。
だからこそ母・クリシーは、クララを「ジョジ―が死んだ後の代わり」にしようとしていた。
制作中のジョジ―の肖像画。
「ジョジ―のことをよく見ておくように」というクララへの発言……
これはジョジ―が死んだ時、クララをジョジ―に成り代わらせるための準備だった。
しかしクララは、ジョジ―の容態が悪くなっても『治る』希望を持ち続ける。
それはひとえに「お日さま」への信頼からだった。
店にいた時、物乞いの人と犬が「お日さま」を受けて生き返るのを見たクララ。
「お日さまを幸せにできれば、ジョジ―に特別の配慮が貰えるのではないか?」
クララは自分の頭の中にある溶液を使って、(お日さまが嫌うであろう)空気を汚染する機械を破壊し、祈った。
クララの祈りは届いた。
ある日、強い太陽の光がジョジ―に降り注ぎ、そこから奇跡のようにジョジ―の体調は回復したのだ。
ジョジ―を亡くした時の準備は全て無駄になる、最高の結果となった。
ジョジ―は回復して大学に行くことになり、クララはお役御免となった。
ジョジ―から「最高の親友」という称号を貰ったクララは、その後「AF置き場」に送られた。
そして懐かしの店長さんと再会した。
店長さんは仕事を辞めていたが、クララの結果を喜んでくれた。最高のAFと言ってくれた。
クララは、店長さんの歩き方が変であることが気になった。
別れ際、もう一度振り向いてくれるのではないかと思ったが、店長さんはそのまま行ってしまった。
解説
ここからは『クララとお日さま』において分かりにくい箇所……『AF』『向上措置』『最後の店長さん』について解説します。
『AF』とは?

AFとは『人工親友』のことです。(英語でArtificial Friend)
人間の子どもに寄り添うためにつくられた、人工知能を持つ友人型ロボット。
感受性には個体差がありますが、とても賢いのは共通です。
向上措置とは?

(多くは子供時代の)人間に施される『能力向上措置』のこと。
AIがこれほど発達していれば、生身の人間の能力を後付けすることも可能だということでしょう。
ところが向上措置は人体に相当負荷がかかり、最悪ジョジ―の姉・サリーのように死に至ります。
我が子に受けさせるか…それは親を何よりも迷わせる選択肢です。
ラストの「歩き方がおかしい店長さん」は何?

最後の最後に登場する、クララにとって懐かしい人物『店長さん』。
もう仕事は辞めていますが、「AF置き場にはよく来ていて、店にいたAFを探したり、記念の品を貰ったりしている」という行動から、未練があるような感じもします。
仕事を辞めた原因は、歩き方がおかしくなったことに関係があるのでしょうか?
普通に考えると、「事故で不幸にも体が不自由になった」等でしょう。
しかしこの物語であるが故に、店長さんが「向上措置を受けた」可能性も存在してしまいます。
片側に偏った歩き方……これは店を訪れたジョジ―の歩き方とそっくりです。
ここからは想像になりますが、以下のようなシナリオも考えられます。
- 店長さんはAFたちの売れ行きが悪いことを「自分の能力が足りないせいだ」と思い悩み、能力向上措置を受けた
- しかし賭けに失敗し、副作用が大きかったことでジョジ―と同じ病気にかかり、店を続けられなくなった
- 現在かけているポシェットには薬が入っている
だとすると、ジョジ―が良い結果で終わった…と思わせておいて、バッドエンドもいいところです。
「つまらない」と感じる人がいる理由

『クララとお日さま』で検索すると、『つまらない』という第二検索ワードがでてきます。
これについて私自身も「これどうなのかな…?」という展開があったので解説します。
SFとしてはとても面白いのですが、ひっかかったのは「信仰心」のような部分。
「お日さまにお願いすればジョジ―の病気はよくなる」というクララの思い込みについてです。
物乞いの人が生き返った!お日さまは人を生き返らせることができる!!
→でもただでジョジ―は助けてもらえないよね。お日さまは空気汚染の機械が嫌いだからこれを破壊します!
……確かに、クララたちAFが太陽光発電ということもあり、お日さまの凄さを人間以上に感じているのは分かります。
しかし信心深くない日本人の感覚からすると
- そんな迷信的な…
- え…?器物損害はまずいのでは…?
と共感できずに終わってしまうかも知れません。
一応、太陽光にはビタミンD生成やセロトニン分泌を促す効果があり、病気を回復させることもあるにはあるのですが……
このあたりの展開に納得できたかできなかったかは、大きいと思います。
読書感想

433ページという長編にも関わらず、面白くて2日で読み切りました。
私がカズオ・イシグロの著作で一番好きな『わたしを離さないで』に近いテイストだったからかもしれません。
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登場人物たちは基本いい人ばかりなのに、社会設定がダーク!
向上措置だの死んだ後成り代わるだの、そういう展開が匂わされ、遂に明らかになったときゾッとできるのが良いんです。
個人的には、この物語においていい味を出してくれたのは母親「クリシー」だと思います。
「次子供が死んだら堪えられない」「リスクある向上措置を受けさせた」「クリシーは気づいていないけど、クララがジョジ―に置き換わっても、多分受け入れられない」……
複雑で矛盾ある感情や決断が、すべて彼女のものであること。
そんな奥行ある人物を、すんなり受け入れられるように描くのは流石カズオ・イシグロだと思います。
癖のある女性描くの上手いんですよね…ほんと…
『わたしを離さないで』が好きな人にはお勧めの作品です。
(やっぱり際に読むなら知名度がある『わたしを離さないで』からだと思いますけど)
気になった人はぜひ読んでみてください!
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