夏川草介著作『エピクロスの処方箋』読了しました!
本屋大賞2026ノミネート作。『神様のカルテ』の著者さんが描く医療モノです。
単体で読んでも全く違和感なかったのですが、『スピノザの診療室』の続きだそうです。そちらも映画化するらしいので読んでみようかな……
面白い!というよりは、考えさせられ、時に涙する感動作でした。
以下
- 主要な登場人物まとめ
- 簡単なあらすじ(作中出来事をネタバレ有でラストまで)
- タイトル『エピクロスの処方箋』の意味は?
- 読書感想
をお届けしていきます。
登場人物
病院関係者が多く登場するのですが、ここでは主要な人物のみに絞って紹介します。
| 雄町哲郎 | 主人公。39歳、内科医。通称『マチ先生』。 以前は大学病院で医局長をやっていたが、妹の死後に甥を引き取ることを決めて退局。 その後、原田医院(京都の町中にある小病院)で働いている。 外来・病棟・訪問診療を担当。 |
| 花垣辰雄 | 大学病院の消化器内科准教授。 哲郎の元同僚であり、腕を見込んで仕事を回してくる。 家族ぐるみで付き合いあり。 |
| 龍之介 | 数年前に病没した哲郎の妹『奈々』の息子。 現在中1で哲郎と二人暮らし。吹奏楽部に所属。 |
| 南茉莉 | 大学病院の研修医。 哲郎から内視鏡処置を学ぶため、研修日の増日を希望。 |
| 飛良泉 教授 | 哲郎が大学病院を退局するときに激怒した、大学病院消化器内科教授。 |
| 西島 基次郎 | 大学病院の消化器内科の医師。 哲郎に現在進行形で闘争心を燃やす。 研究分野で活躍。 |
哲郎が受け持った患者▼
| 田畑光江 (66) | 訪問看護の患者。脳神経が委縮していく難病で現在反応無し。 夫・元之助はナポリタンが有名なレストラン『蓮花門』経営。 |
| 木戸口 賢一 (74) | 胆管癌患者。緊急搬送から哲郎が担当。 |
| 飛良泉 虎重(82) | 慢性膵炎患者。飛良泉教授の父。 3度ERCP(内視鏡+レントゲンで、胆管と膵管を調べて治療する検査)に失敗して哲郎にお鉢が回ってきた。 |
| 今川陶子 (72) | 訪問看護の患者。膵癌。 |
あらすじ(結末までネタバレ注意)

まずは『エピクロスの処方箋』がどんな話なのか?あらすじ(出来事)をまとめました。
- 11月中旬膵胆管研修会
花垣から治療に手こずっている慢性膵炎患者の、症例概要を渡される。
2週間以内に意見が欲しいと言われる。 - 木戸口の緊急ERCPを行う
- 料亭『蛍屋』で食事会
花垣と家族ぐるみで食事会。
研修会で渡した症例概要が、かつて激怒させた飛良泉教授の父のものだと明かされる。 - 12月1週目田畑光江が亡くなる
- 12月半ば妹の墓参り
妹『奈々』の命日。(亡くなって3年)
龍之介と知恩院に墓参り。 - 飛良泉虎重の手術決定
虎重にヒアリングした結果、手術を引き受けることを決める。
ステント(体の中の「詰まった管」を広げておくための、筒状の医療器具)が通らないかもという課題があがる。 - 南と鉢合わせ
書店で研修医の南と鉢合わせる。
南の父が胃癌で亡くなった事を聞き、意見を述べる。
西島が胆管カルーテルの研究論文を発表した話を聞き、PDFで送ってもらう。 - 年末西島突撃
虎重の処置に、西島が開発したステントが欲しいと打診。協力を取り付ける。
- 元日木戸口に寿命を告げる
木戸口の胆管が詰まり呼び出されるが、今回はステント追加を見合わせる。胃癌の進行状況から、紅葉を見るのは難しいだろうと告げる。
- 花垣宅で夕食会
龍之介にお年玉としてフルートをプレゼント。
- 1月10日虎重のERCP手術
処置時間52分で成功。
哲郎のガイドワイヤーと西島ステントで見事狭窄部突破。 - 1月14日今川陶子が亡くなる
- 花垣から呼び出し
花垣から『蛍屋』に呼ばれるが、女将の機転により飛良泉が来ていると知りバックレる。
(大学病院に戻る気が無い為) - 南が原田病院の常勤医に
呼び出しから2日後、南が原田病院の常勤医になると知らせを受ける。
これにて、原田病院が大学病院の関連病院に。
(哲郎とのパイプが繋がった) - 1月21日南と食事
南に「手術が上手く行ったら美味いものでも」と言っていた件が決行。
龍之介も交えて弘法市で待ち合わせ。
『レストラン蓮華門』へ。
タイトル『エピクロスの処方箋』の意味は?

古代の哲学者『エピクロス』。
作中で哲郎が解説していましたが、エピクロスは「快楽の本質は精神の安定」だと主張していました。
つまり「平穏で物静かな精神状態」が快楽…と言うと、現代の使われ方と違うので語弊があるのですが、とにかく「良いものだ」と言っているのです。
そして処方箋とは、病気の治療に必要な「薬の種類」「量」「用法・用量」などを書いた書類のこと。
患者が或いはその家族が安定した精神でいられるための処方…医師の行動とはどういうものなのか?
哲郎が考え続けているこのテーマが『エピクロスの処方箋』と表現されているのだと思います。
感想

医療モノを全然読まないので、手術用語などは調べながらになりましたが読了。
だからこそ個人的には生死に近い所で仕事をしている人、その難しさに初めて触れた作品になったので、何度か涙ぐみました……
「妹が死んだため、その子供である甥を育てる為に仕事を辞めます」
正しい決断と思われるコレも、患者を死なせて成長してきた「医師」という職業の場合、簡単には許されない……
考えもしなかった飛良泉教授の話にハッとさせられました。
そうですよね。腕の良い哲郎なら成功する手術を、別の医師がやって失敗することがあるかもしれない。
或いは、医者の数が減って救える数が減るかもしれない……
考えすぎるのも良くないのかもしれませんが、考えないのも不誠実……
うーん、やっぱり前巻気になりますね。『スピノザの診療室』も読んでみようと思います。
あとは恋愛事情が気になるところです。
「妻がいて良かった」と哲郎に話した木戸口さんの言葉は、哲郎なら確かに重みを感じてくれると思います。
最後デートっぽいことをしていましたが、この後南先生と結婚したり……あるんですかねぇ。
良い影響を与えあう素敵なコンビですよね。
哲郎のほうが老成している感がありますが、哲郎が困っているときに新鮮な風を吹かせてくれる南先生……
問題もありますけどね。
せっかく西島先生と仲良くなれそうなのに、恋敵としてまた嫌われるかもしれないし(笑)
続編が欲しいです。

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