でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで、十分だって思える。これが俺の手にしたかったものなんだって。
2019年の本屋大賞を受賞した、瀬尾まいこさん著作「そして、バトンは渡された」。
2021年に永野芽郁×田中圭×石原さとみというキャストで映画化され、こちらも評価が良いようです。
この記事では、そんな「そして、バトンは渡された」のあらすじと名言を紹介していきます!
ネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。
目次
あらすじと作品の雰囲気
何度も親が変わった主人公「優子」が結婚するまでのストーリー。
- 親が変わった理由(過去)
- 最後の親である森宮さん(男親)との生活(高校〜結婚まで)
この二つの話が交互に、カットバックのような手法で進みます。
優子と森宮さんの会話が軽快!
優子が年齢の割に達観している所もあり、分厚めの本ながらスルスルと読めます。
優子の複雑な生い立ちを軽く読めるのは、血の繋がらない親達が「子供を引き取れるなんてラッキー」というスタンスだから。
出産での痛い思いや、手のかかる時期を飛び越えて……というのには、まぁそうですよねと共感してしまいました。
じわりと残る、名言3選
『子どもを育てること』の魅力
「親になる」プレッシャーで不安な方に聞いてもらいたい言葉です。
自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。
親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、凄いとおもわない?
親たちの中でも自由奔放で異彩を放つ、梨花さんの名言。
場面としては森宮さんを丸め込もうとしている所ですので、あまりいいものとは言えませんが(笑)
それでも素敵な発想です!!
この名言を聞いて、「子供を育てること」に前向きになれればいいですね。
子どもを育てて手に入れる感情
優子の結婚式前日に告げた、森宮さんの名言です。
でもさ、優子ちゃんが笑顔を見せてくれるだけで、こうやって育っていく姿を見るだけで、十分だって思える。これが俺の手にしたかったものなんだって。
これが慈しむ気持ちというものでしょうか?
子どもを育てて手に入れられるものって何だろう?
その一つの答えを、森宮さんは教えてくれます。
本人にしか分からない充足感、満足感が伝わってきますね!
【タイトルの意味】そして、バトンは渡された
「本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へとバトンを渡す時だ。あの日決めた覚悟が、ここへ連れてきてくれた。」
先述の二つの名言も加味して、タイトル回収です。
バトン=優子。
今までの親たちから託されてきた優子を手放すとき、「本当に幸せ」と感じている森宮さんが居ます。
子育てに走り切った先でしか観れない景色を観た。
バトンを受け取る時、子供の命を預かるのは勇気が必要だったでしょう。
でも、その先にしか無い喜びがあるから君も受け取ってみて!と。
子育てに消極的な現代に、ポジティブな考えを投げ入れる。そんな言葉です。
一番印象的なシーン
この作品は間違いなく家族ものですが、個人的に一番印象深いのは女子高生のゴタゴタでした。
A子の恋愛に巻き込まれ、クラスからハブられる優子が実に不憫です。
終息の仕方も「時が解決する」と妙にリアル。
事の発端は友人A子から、「A子➡B君への好意」を代理で伝えてほしいと頼まれることです。B君は美術室に既に呼び出しているからと。
!?
しかし、B君は以前優子のことが好きだと言っていました。
!!?
優子は気を使ってB君にA子からの好意を切り出せませんでした。
その結果
A子「友達より男取るなんてサイテー」(勘違い)
………
サイテーはお前だA子!!!
A子の「B君は優子が好きだから、優子が取り持ちしてくれたら上手くいくかも」というおかしな思考に巻き込まれたこと、優子はもっと怒っていいと思います。
B君はB君で、後日優子に対して
「美術室で言ってくれれば良かったじゃん、こっちで話すし」と、割と無神経です。
優子の心使いを理解する森宮さんと、理解しないB君、勘違いするA子の対比なのかなと思います。
こういう友人関係は、卒業後すぐに潰えるのだろうなと思いながら読んでいました。
まとめ・総評
瀬尾まいこの作品はやはりあたたかい!!最後にジワリと来てしまいました!
人情系が選ばれやすいと言われる本屋大賞を取っただけあるなぁと思います。
親が入れ替わっても、みんな優しくて幸せで。不幸なんて感じ取れない。
そんな主人公だからこそ、サクサク軽快に読めてしまいます。
強かさが生み出す温かさを、是非読んで感じてください。
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