映画原作小説『ナイトフラワー』読了しました!
北川景子主演の、「子供を育てる為にドラッグの売人になる母親」が描かれた人間ドラマ。
脚本家の方が小説化されたものですが、映像無くても超面白い作品でした!
この記事では
- 登場人物相関図(関係図)
- 結末までのネタバレあらすじ
- 結末の考察(どういうこと?)
- 感想
をお届けしていきます。
登場人物相関図
『ナイトフラワー』登場人物の相関図(関係図)です。
色付きが特に重要な人物です。

あらすじネタバレ

一人で子供二人を育てる母親・夏希。
スナック・ホテル清掃・工場と掛け持ちして働き、児童手当も合わせて月30万円前後は手に入る…
それでも蒸発した夫の借金の返済もあるし、当面の生活費が足りない。
10歳の娘・小春は、バイオリン教室を「無料」だと言って、路上演奏で月謝代を稼いでいたーー……
子供たちのために、金が必要だ。
違法薬物&多摩恵に出会う

そんな折、夜道で違法薬物を販売していた男が襲われる現場に遭遇した。
男のポケットから零れた合成麻薬『MDMA』を夏希はとっさに持ち帰り……
翌日、夜の街で販売した。
1セットで1万円。しかし許可無しに販売したことで、薬物売買を取り仕切る半グレの男たちに殴られた。
そこで助けてくれたのが、総合格闘技で名をあげることを夢見る女性・多摩恵だった。
デリヘルバイトもしている多摩恵は、ホテル清掃員をしていた夏希を知っていた。
そして多摩恵自身も、短時間で稼げる仕事を求めており――……
夏希に協力しての薬物販売を提案してきた。
薬物販売を始める

多摩恵の幼馴染『海』の伝手を辿り、薬物販売の元締め『サトウ』に販売許可を得ることができた二人。
暗号チャット(暗号化して送受信する仕組みのあるチャット)や隠語を使ってSNSで客を集め、売買を始めた。
金が入ったことできちんとした食事がとれるようになり、
夏希は多摩恵を子供たちに引き合わせて、一緒に食卓を囲んだ。
余った金は基本貯金に回していたが、中古で10万円のバイオリンを小春の為に購入した。(半額を多摩恵が出した)。
しかし半年以上過ぎたころ。
- 小春がプロ志向のバイオリン教室に転向
- 息子・小太郎が保育園で他の児童に怪我をさせ、示談金が発生
ということがあり……
夏希は五倍の取引拡大をサトウに直談判し、許可を得た。
そして多摩恵に「家族になってほしい」と申し出る。
全ては子供たちを守るためだった。
星崎桜の事件から窮地に

夏希&多摩恵の客に、20歳の女性『星崎桜』がいた。
桜は、友人の麻衣美(薬物購入時は“ニボシ”と名乗っている)に薬物に手を出すよう誘われ、次第に依存していった。
そしてある日、警察に呼び止められた桜は逃げ……車に轢かれて死亡した。
客が死んだという情報は夏希&多摩恵の元にも入った。
他にも様々な要因が重なり……
- 「夏希が隠していたMDMAで小太郎が遊んでいた」というゾッとする事件が起きた
- 多摩恵がウォーリアーズ(格闘技のメジャーな大会)に出場するが、元チャンピョンとの実力差に夢が潰えたことを悟る⇒プロを目指さないなら、無理に稼ぐ必要はない
二人は潮時だと感じ取り、ドラッグ売りの仕事を止めた。
ところが一手遅かった。
桜の母・みゆきは探偵を雇い、娘に薬物を売っていた夏希たちの住所・家族構成を突き止めていた。
さらにサトウも、探偵が動いたことで「関係者の処分」に動いた。
海はサトウの部下に殺害された。
ところが、多摩恵の殺害には待ったをかけたサトウ。
キリスト教徒であるサトウは「子供の為に罪を背負った母親」が赦されるのかを考えていた。
そして多摩恵に「三つの質問」を投げかけ、答えによっては生かしておくことにした。
三つの質問とは?
何が質問されたのかは描かれていないので、あくまで推測になりますが…
《シモン家の晩餐》のエピソードや「心の源を聞く」という言葉から、以下のようなものだと思われます。
①私は誰か?
②何を求めるか?
③誰を愛するか?
結末

バイオリン教室帰りの小春は、夏希たちの家を探していたみゆきに声をかけた。
小春の澄んだ目を見たみゆきは、覚悟を決め、拳銃を手にした。
夏希が家で小太郎と、四人で公園に行く計画を立てていると、銃声のような音がした。
嫌な予感がしたが……
小太郎がドアを開けると、偶然会ったという多摩恵と共に、小春が帰ってきた。
幸せを噛みしめる夏希の背後で月下美人が咲いていた。
最後はどういうこと?結末を考察

夏希の嫌な予感は外れ、ハッピーエンドで終わった本作。
桜の母・みゆきは何を考えどう行動したのか?少し考えてみたいと思います。
愛する娘がドラッグにハマった結果死に、娘にドラッグを売った売人…夏希と多摩恵の住所&家族構成を入手したみゆき。
当然ここで考えられるのは復讐です。
ところがみゆきは売人である夏希より、その娘の「小春に会わなければ」と考えました。
みゆきは娘の桜を小春に重ねています。赤いランドセル姿…だけではなく、名前のイメージも似ていますね。
しかしその前に多摩恵の試合を見に来て、敗れた多摩恵と号泣しながら抱き合う夏希の姿を見ました。
何もせず帰ったのは、「売人二人が血も涙もない人間ではないと理解したから」と取って良いと思います。
そしてその後、夏希の家の近くで澄んだ目をした小春と出会い……みゆきは「覚悟」を決めました。
何の覚悟なのか?
これは自殺する覚悟だと思われます。
小春が害された様子が無いのに、銃声が聞こえたということは「自死するために撃った」ということです。
帰宅した小春&多摩恵の落ち着いた様子から、多摩恵がみゆきを止めてその最中に撃ってしまった…という線も薄いです。
夫との仲も決して夫婦といえるようなものではなく、最愛の娘も失ったみゆき。
もしかしたらみゆきは最期に、幼い頃の桜を彷彿とさせる小春にただ会いたかっただけなのかもしれません。
或いは、「小春に会わなければ」ではなく「娘に会いに行かなければ」だったのかもしれません……
影でもう一つ、母から子供への無償の愛が描かれている……そんな物語だと思います。
感想

最後までスリルと人情あるストーリー……面白かったです……!
ジャンル的には社会派フィクション&ヒューマンドラマかな?
少し前に『愚か者の身分』という似たジャンルのもの読みましたが、女性が主役となるとまた温度感違うな~~と。
女性は感情を表に出すからこそ、与える影響力が強いというか。
夏希を演じる北川景子を観に行きたいなと思いました。
「子供を守る母親」という部分がサトウにイレギュラーを生み出させたわけですが、しかし危険な裏社会というのは、運も大きいのだと感じてしまいます。
海は殺されてしまいましたしね……
彼のどこが悪かったのかと言うと、おそらく直感や自我を通さなければならない瞬間を逃してしまった所なのでしょう。
もし、多摩恵が夏希に出会う前にアタックし、失恋であろうとしていれば……
もっと別の人生を、死ぬことなく歩めたのではないかと思ってしまいます。
綺麗に咲いたナイトフラワー・月下美人。
「月の下で一瞬だけ咲く愛」や「届かぬ思い」を象徴するそうで、なんだか海っぽいですね。
彼が静かに多摩恵の幸せを見守っているようだなと感じます。
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