『恋に至る病』の続編『病に至る恋』読了しました。タイトルが似すぎて、続編の存在に気づくのが遅れました(笑)
この『病に至る恋』は4つの短編から成り、内容は
- 病巣の繭……幼稚園時代の景の話を母親視点で。
- 病に至る恋……偽ブルーモルフォプレイヤー二人の話。
- どこにでもある一日の話……景と宮嶺のデート話。
- バタフライエフェクト・シンドローム……景が小学校に通うのをやめていたら?と言うもしもの話。
こんな感じです。
以下、簡単なあらすじ要約と個人的な感想をまとめています。
ネタバレあらすじ
『病に至る恋』各短編の簡単なあらすじ要約です。ネタバレ注意。
病巣の繭

保育園時代(5歳)の景を母親視点で。
連絡帳に「リーダーシップがある」「先生も見習わないと」と書かれる景。
園児とは思えない言葉に、母である「私」は嬉しさより不安を感じてしまう。
景は2歳のころ、「あいうえおボード」で自分たち親の喧嘩を止めた。
ちょっと変わったこの手法は、まるで「そうすれば喜ぶ」と分かってやっているようだった。
夫は何も気づかない。
保護者会で、私は橘くんママに虐められていた。
理由は、橘くんが景に恋していたからだ。
園では小さなカップル扱いされており、それが息子を溺愛する橘くんママの気に障るらしい。
次の保護者で、私は橘くんママに詰め寄られた。
橘くんが言葉を発しなくなり、親の問いかけにも答えなくなったらしい。
橘くんママは、私が何かをしたと思い込んでいた。
そして、おゆうぎ会の日。
開会前に浪川先生が橘くんを突き飛ばし、救急車が呼ばれる事件が起こった。
浪川先生は、景が自分を止めてくれたと感謝していた。
浪川先生は橘くんをずっといじめていたらしい。
「言いふらしたら、あなたの悪事を全部お母さんに言う」と脅して。
橘くんママに罵声を浴びせられた浪川先生は、それでも微笑んでいた。
「景ちゃんのためなら、私は何も惜しくない」
私は想像した。
橘くんが恋心をこじらせて景に嫌がらせをし、浪川先生はそれを見て暴走したのではないか?と。
おゆうぎ会でも、控え室にいた橘くんを見て「景のドレスを汚そうとしている」と勘違いして突き飛ばしたのではないか?
でも――橘くんは景も怖がっていた。
もしかして景がドレスを落とし、それを橘くんの仕業に見せかけたのではないか?
そしてそれが、「私を守るため」なら……
恐ろしいほどに、嬉しかった。
私は誓った。
景を全力で愛し、誰よりも大切にすると。
病に至る恋

「ブルーモルフォ」のプレイヤーになりたい男子高校生・延田臨は、
クラス内で緋達美姫と付き合っていると噂され、からかわれていた。
緋達は自己紹介で失敗し、「プリンセス」とあだ名をつけられた女子生徒だ。
それ以来、学校に来ていないが。
延田は担任に頼まれ、緋達の家へお使いに行くことになる。
緋達の家は小汚いゴミ屋敷だった。
延田は緋達の手首に、赤い蝶の形をした傷を見つけた。
ブルーモルフォのプレイヤーである証だ。
延田は緋達の紹介で、あっさりプレイヤー権を得た。
ミッション内容は「自分の嫌いなところを挙げろ」「誰かのアカウントに罵倒の言葉を送る」など。
ある日、青い蝶のキーホルダーをつけた延田を見て、景が声をかけた。
延田がプレイヤーだと知ると景は興味を示し、連絡先を交換した。
緋達の様子はどんどんおかしくなっていく。
ブルーモルフォの影響もあるが、母親に殴られた痣もあった。
ミッション26は「代金を払わずに店から品物を得る」。
延田もミッションのストレスで、肌荒れや耳詰まりなど心身に異変が出始めた。
学校に取材が入る日。緋達をいじめていたクラスメイトたちは「緋達が学校に来るように、あだ名を考えてあげていた」とのたまった。
延田はその言葉にキレて、暴れた。
ミッション40は「放火」だった。
延田はそれもこなし、緋達の家へ向かう。
急激に痩せていた緋達。
緋達は、延田にブルーモルフォを紹介した理由を話した。
延田がミッションを放棄すれば、クラスタ(グループ)に自分も殺される。
そうすれば死ねると思ったのだと。
「一緒に死なない?」という申し出を、延田は拒んだ。
その後、緋達は自宅で首を吊った。
ミッション50の前日。
延田は電車で景を見かける。
景の隣には男(宮嶺)がいて、楽しそうに笑っていた。
延田は、「生まれ変わったら、景のような子に選ばれる人間になりたい」と願いながら、
学校の屋上から飛び降りた。
どこにでもある一日の話

景からデートに誘われた宮嶺。
書店に行って、カフェに行って、蝶モチーフが流行っていることに驚いて……
そんな何気ない一日を送る。
飛び降り自殺の現場を見て、お開きになったデート。
景は生まれ変わっても、もう一度人間に生まれ変わりたいらしい。
けれど同じような人間になるのは怖いと言う。
この頃、景は本物のブルーモルフォに羽化しようとしていた。
今までの、人間の殻を破って……
これは人間であったことを、宮嶺の記憶に残すためのデート。
景が亡くなった後、宮嶺はこのデートの事ばかり思い出している。
バタフライエフェクト・シンドローム

小学5年の宮嶺は、担任に頼まれて不登校の景の家を訪ねた。
景は予想外に、明るく元気な女の子だった。
景は宮嶺のことを知りたいと言い、宮嶺は蝶が好きだと話した。
アゲハチョウの幼虫を育てていて、父が買ってくれたブルーモルフォの標本からハマったのだと。
今度、景はその標本を見に来ると言う。
そして、そんな話を皆にしないのはもったいないと続けた。
本当の宮嶺を知って、仲よくなりたい人がたくさんいると。
景は学校に行かない理由を話した。
自分には人を動かす力がある。
思うだけで、みんなが自分の言うことを聞いてしまう。
だから、学校に行かないほうがいいと思っていると。
宮嶺は、たとえそうでも、景がいるほうがいいクラスになる。
行きたくなったら来ていいと思う、と返した。
景は「もし自分が間違った方向に進んだら止めてほしい」と宮嶺に頼む。
宮嶺は、景を下の名前で呼ぶようになった。
この先のことはまだ分からない。
感想

景視点無いんかーーい!!!
まさかの
- 景の母親視点(そこは気になってた)
- 偽ブルーモルフォに関わった人たち(そんなに興味なかった)
- 宮嶺視点のデート(景が化け物から人間に変わった分岐点が描かれたのは良かったけど、本当に他愛ない)
- 宮嶺視点の、もしもの物語(これが本当のハッピーエンドになる?)
という四編でした。
うーーん、満足度60%というところです。
宮嶺視点で語られた部分を景視点で読みたかったのですが……
ミステリアス少女はそのままの方が良いということなんでしょうか?
「病に至る恋」というタイトルに期待してしまいましたね。まさか今回初登場の延田くん視点とは。
延田くん、臨(のぞむ)という名前なの皮肉ですよね。宮嶺も漢字は違うけど「望」。
取って代われるなら代わりたいでしょう。
いやしかし。幼稚園時代でさえ景の具体的な行動が描かれず母親視点なのはなぁ……
どういう風に浪川先生を崇拝させたのか、その編が…描いてくれ!と思いました。
あとは、偽ブルーモルフォの指示を見て本物はどうだったのかな?と気になりました。
偽物は犯罪が混ざってましたが、景はそういうものは設定しないと思うんですよね。出来る限り自分一人で済むミッションを選びそう。
50個全部公開してほしいなぁ…。
そしてまさかのIF編。
「周りが何故か勝手に自分の望み通り動く」と自覚し、自分で自分を軟禁した景。
でも宮嶺が言うなら学校行ってみようかな。
……これはどうなんでしょう?
宮嶺がポッと出の転校生ではなく「景を学校に誘った男」であれば、同じクラスでも違う展開が待ち受けているのでしょうか?
根津原はやっぱりやらかしそうな気がしてしまうんですが。
ハッピーエンドになると思わせてくれない、前巻の景の所業。このまま家にいてほしいような、それは可哀そうなような。
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