金原ひとみ著作『ミーツ・ザ・ワールド』。
腐女子銀行員「由嘉里」が、キャバ嬢「ライ」の死にたみを止めようとルームシェアを始める話です。
ところが読んでみると、予想と展開が…全然…違う……!
読了後「よくこんなもの書いたなぁ…」という感想を抱きました。
以下、登場人物相関図とあらすじを、ネタバレで結末まで解説。
個人的感想もお届けします。
登場人物相関図(関係図)

あらすじネタバレ(結末まで)

合コンで飲みすぎ歌舞伎町の路上で倒れていた由嘉里は、キャバ嬢の「ライ」に拾われた。
ライは美人だがゴミ屋敷に住んでおり、「私はもうすぐ死ぬ」「この世界から消えなきゃいけない」と言う。
「死は自分に与えられたギフト」なのだと。
しかし由嘉里は、初対面にも関わらず、ライをどうにか生かしたいと思った。
そしてルームシェアを始めた。
ライの知り合いであるホストの「アサヒ」にも出会い、
由嘉里は最も遠い人種と思っていたライやアサヒに、家族や同僚よりも親しみを覚える。
一方で「属性が違う」母親とはやはり分かり合えないと、距離をとった。
そして婚活パーティーで会った「奥山譲」も、デートをしたうえで「この人とは恋愛できない」と判断した。
由嘉里はライを止める為、「死にたみ」について学んでいく。
バーのマスター「オシン」に紹介されて、不幸な女「ユキ」に話を聞きに行った。
ユキは、かつて「好きな男に会いたいから」という理由で子供を殺した夢を見て、理解ある夫と娘を追い出したらしい。
幸せな思い出さえ「地獄への入り口」と言うユキに、由嘉里の言葉は届かない。
それでも由嘉里は諦めない。
アサヒを「ライの死にたみ半減プロジェクト」に巻き込み、ライがかつて一番好きだった男…「鵠沼藤治」に会いに行く。
しかし鵠沼も「上手く生きられない人間」で、彼の両親に聞いたところ、精神科に入院しているらしい。
そして由嘉里が帰宅すると……ライが置き手紙を残して消えていた。

自分の無力さに泣きたくなるも、すぐにアサヒから「刺された」とLINEが入ったため病院へ。
アサヒは奥さんに離婚届を置いて出ていかれ、太客の彼氏に刺されたらしい。
入院になるものの、命に別状はなし。
見舞いで集まったオシンとユキは、ライの事を聞いて由嘉里を気遣ってくれた。
しかし由嘉里は理解し合えない母親と再会し、「ライは理解できない考えを持つ、自分との同居が苦痛だったのでは?」と思い至って号泣する。
さらに鵠沼から連絡があり、ライにとって由嘉里との同居は「生きる意味を探す実験だったのでは?」と言われ、打ちのめされた。
ゆかりはライが残していった300万円で、一緒に住んでいた部屋に引き続き住むことを決めた。
そしてライのいない世界に慣れる為、泣きながらも仲間に気遣われ、リハビリしていく。
今、ライは由嘉里の中にいる。
ライに届けばいいと部屋からの景色をSNSに投稿しながら、由嘉里はありのままのライを祝福している。
【感想】「分かり合えない」がこれでもか!というほど…

なかなかにやるせない物語でした。
一般的に言う「ハッピーエンド」とは展開が逆に行くので、「よくこんな話書いたな…」と読了してからダメージを受けました。
だからこそ結末の予想のつかなさも、かなりのものなんですけどね……
- 死を救いと考える人もいる
- 分かり合えない人もいる
- 必死に説得しても、何も届かないこともある etc.
挙げるとキリがないですが、苦い現実を描き切った作品でした。
特に「前向きな言葉が何も届かない人間」の描かれ方は秀逸だと思います。
「助けたい」という想いで声をかけても、死については向こう(死にたい人間)のほうが考え尽くしているので、何を言っても言い返される。
こっちは「そんなこと言ったら終わりでは…?」「考え方ネガティブすぎない?」と思うけど、いくら言葉を重ねても何も届かず、結局疲弊してしまう。
まぁだからこそ、「死を望む人・生きたがっていない人」を普段相手にしている人が読めば、救われる物語なのかなぁと思います。
平和な人間が読むとダメージを負いますけどね。
自分の状況や体験によって、感じ方が変わる物語なので、是非ご自分で読んでみてください。
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