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小説『愚か者の身分』ネタバレあらすじ・感想。登場人物相関図も

小説・実用書

西尾潤さん著作の小説『愚か者の身分』読了しました!

タイトル通り「戸籍売買を持ち掛ける半グレ集団」にスポットを当てた話でした。

組織内でいざこざを起こした「タクヤ」は殺されたのか?
戸籍を売った人、それを仲介した人物たちの顛末は……?

結末が読めない、複数人の視点から見る群像劇!

以下ネタバレ注意です。

ネタバレあらすじ(ラストまで)

パスポート(身分証明書)

戸籍売買の話を持ち掛ける「半グレ集団」の下っ端、柿崎護(マモル)

マモルは上司である「タクヤ」と共に、金に困った人間に目星をつけ、

「アイコ」という名前でLINEのやり取りをしていた。

しかし佐藤(タクヤより上の立場の人物)から、「タクヤがタタき(強盗)の手引きをやったから消される」と聞かされたマモル。

そしてその後、タクヤから遺書のようなメールが届く。

隠している金を貰ってくれ、その金の一部を以前戸籍売買させた「谷口ゆうと」に渡してくれ。

  • タクヤはどうなったのか?
  • 戸籍を売った「谷口ゆうと」もとい「江川春翔(ハルト)」付近の事情
  • 半グレ集団に踏み入れてしまった下っ端の事情
  • 犯罪組織の顛末

はいかにーー?

タクヤは佐藤の金を奪い、制裁として両目を摘出された(角膜が臓器売買された)。

さらにタクヤの腎臓を売ろうとする組織。

しかし運び屋の梶谷(タクヤを組織に引き込んだ人物)は、組織を裏切ってタクヤを助けてくれた。

発信機によるトラブルを乗り越え、目の治療をしながら神戸まで逃げた梶谷&タクヤ。

そこで上司二人(ジョージ・佐藤)を含む半グレ集団「メディアグループ」が、集団逮捕されたというニュースが流れる。

二人がこの後第二の人生を送っているか、警察の捜査の手が伸びて後程捕まったかは不明だ。

一方、タクヤの手引きで自分の戸籍を売った「江川春翔ハルト」。
なぜそんなことをしたのか?それはサラ金(消費者金融)の返済に必要だったからだ。
借金は家族を失い自暴自棄になったが故の、ギャンブルの結果だった。

戸籍を売った後は「谷口ゆうと」という名前でアルバイトをしていた。

しかし春翔の幼馴染「真貴」は、沖道という探偵に頼み、行方をくらませた春翔を探した。

沖道は「アイコ」のアカウントから「マモル」までたどり着いて尾行。
マモルがタクヤから託された金を春翔に渡しに行ったため、居場所をつきとめることができた。

真貴を春翔に引き合わせることはできた。

しかし真貴が偽アイコ…タクヤの部下「希沙良」に暴力をふるったせいで、完全なる被害者面はできず。

「春翔が戸籍を売ってしまった」という苦い現実を噛みしめるエンドとなっている。

この後、マモルがどうなったのかは不明だが、逮捕されている可能性も高い。

希沙良はこの件で懲りたようで、真っ当な職(ヘアメイク)に進んでいると思われる。

登場人物(ネタバレ相関図)

半グレ集団『メディアグループ』
・幹部:市岡譲治
・幹部:佐藤秀人
・間宮
・松本拓矢…佐藤の9千万円ちょっとを強奪する
・海塚…梶谷の上司
・梶谷剣士…運び屋。拓也を助ける。
・柿崎護…拓矢が引き込んだ部下
・希沙良…実働部隊。「アイコ」として春翔等ターゲットと会う

ここから一般人
・由衣夏…梶谷の彼女
・江川春翔…拓也(アイコ)の手引きで戸籍を売る。偽名は谷口ゆうと。
・相澤恭子…春翔のバイト仲間。春翔の金を盗む。
・真貴…春翔の幼馴染。会いたくて探している。希沙良に復讐する。
・沖道博史…探偵。真貴の協力者。マモル(アイコ)とやりとり。
・悠次郎(沖道のアシスタント)

感想

春翔が好きだったアメトリン。

作品のテイストとしては『地面師たち』が近いでしょうか?

しかしあそこまで「プロ集団」というわけではなく、個々の能力次第な半グレ集団……

こういった組織の実態についてのモノは読んだことがなかったので、新鮮でした。

戸籍を売買してしまう「騙されるほう」だけではなく、下っ端の「騙す方」も敷居の低さに騙されているんですよね。

犯罪だというのに、割のいいアルバイト感覚で、誘われて入ってしまう……。

タクヤはグレてる感というかヤバそうなやつ感があるのですが、マモルなんかは普通の「先輩に従順な若者」のイメージ。

倫理感や危機感のストッパーが欠けただけで、こういった犯罪集団に属してしまうのかと、苦い気持ちになりました。

また、個人的に興味深かったのは「戸籍を買った側」の事情。

必ずしも悪人や移民というわけではなく、本人ですら
「産みの親が戸籍を持っていなかったらしく、だから自分もないらしい」くらいの認識な場合があるようです。

戸籍が無いと、免許証・パスポート・保険証は持てず、身分を証明するものは持てません。
当然結婚届や死亡届も出せません。

しかし取得するのも簡単ではなく、調べてみたところ「母子手帳」や「出生証明」がないとかなり手間取るとか。

その場合は「地域の人の目撃証言」が頼りになるようですが、軟禁に近い状態で育てられた場合は…?

取得する難易度に諦め、闇売買されているものに手を出してしまう。

だからそこにつけこむ組織も出てしまう。

無戸籍の人間の受け皿が、少しでも完備されていくことを願います。

梶谷とタクヤについて

ラストタクヤと梶谷が食べていた、アジの煮つけ、みそ汁、冷ややっこ

最初に一人称を務める「マモル」が主人公になるのかと思いきや、

本作のメインとしてスポットがあたるのは、その上司の「タクヤ」と、タクヤを助ける運び屋「梶谷」です。

特に「梶谷」は、「タクヤが始末されて終わるのでは?」という展開予想をひっくり返してくれた、男気ある人物。

梶谷がいたからこそ、タクヤは腎臓売買を免れ、上層部が捕まってのハッピーエンドに近いものとなりました。

二人とも悪い商売をしていたわけですが、今後、真っ当に生きることを応援したくなる人間性。

「弟の為に金が必要だった」「手に入れた金は情のある部下や顧客と分ける」「愛する女ができて、友人の危機に裏切りを決める」

…こういう魅力が主人公っぽいですよね。

目が見えなくても魚を裁けるタクヤの腕は、今後何か職になるのでしょうか?

健康保険証が発行され、目の障害手当がおりるといいなと思います。

梶谷も、助けてくれた彼女と幸せになってほしいですね。

原作をまだ読んでいない人は是非読んでみてください。面白かったです。

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