貴志祐介著作『クリムゾンの迷宮』。
余韻を残す、オーストラリア・バングルバングルでの激怖デスゲームです。
この記事では、物語ラストまで解説されない『藍』の正体を考察していきます。
彼女の発言には、嘘に紛れた真実が隠されており…?
先にあらすじの要約・登場人物相関図をまとめていますので、内容おさらいにもお役立てください。
目次
あらすじネタバレ要約(相関図あり)
まずはラストまでのあらすじ解説です。
ネタバレが含まれますのでご注意ください。
バングルバングルでゼロサムゲーム

目覚めたら一面深紅色の峡谷にいて、直近の記憶を失っていた藤木芳彦(失業者・40歳)。
傍にはランチボックスと水筒、そしてゲーム機が置いてあった。
火星の迷宮にようこそ。
藤木たち計9人は、火星に見立てられたオーストラリアのバングルバングル(奇岩群。砂岩のドーム状地形)にて、
ゼロサム・ゲーム(一人だけが生き残るゲーム)をさせられるらしい。
- チェックポイントを全て周ること
- 最後の一人のプレイヤーになるまで生き残ること
負けた者は死ぬ。
ゲーム機の指示に従って、最初の選択肢に別れる皆▼

これが運命の別れ道だった――……
恐怖の殺人鬼を生み出す仕組み

「情報」を選んだ藤木&藍はアタリ。
- 危険動物を含めたサバイバルのノウハウ
- ゲームの設定に関する情報
- 盗聴器
までを手に入れた。
その中にあったゲームカセットに登場するキャラクター「プラティ君」は、「食糧」を取りに行った連中に強く警告する。
後に分かることだが、食糧組が獲得する食糧の中に、悪質な効果が付与されているのだ――……
- ビール……幻覚剤や向精神薬がブレンドされており、サイコキラーを生み出す。
- FSビスケット…実は違法な痩せ薬であり、多数の副作用がある。眼球が突出して恐ろしい顔に。食べれば食べるほど飢餓状態に…
人工的な殺人鬼は、殺した人間を食糧とする。
藤木たちは安部が楢本と鶴見に殺されて食べられているのを確認し……
二人から逃げることを最優先とした。

ゲーム主催側が紛れ込んでいる?

道中にて、藤木と藍は肉体関係を結んだ。
さらに、全員集まった際に司会をしていた『野呂田』と一緒に動くことになるが、
野呂田は殺人鬼たちに自分たちの居場所を教えてしまう。
藍は「野呂田がゲームマスターだから、ゲームを面白くしようとした」と言う。
彼は楢本達に殺された。
もうターゲットは自分たち二人だけ。
二人は単独で襲ってきた鶴見をシェルターで迎え撃ち、トラップでの撃退に成功する。
しかし人殺しにうんざりした藤木は、ゲームエリアからの逃亡を目論んだ。
だが途中で出会ったオーストラリアの原住民が、ゲームの監視者にライフル射殺され……
楢本との対決

藤木たちはゲームエリアに戻り、楢本から逃げる。
そして行きついたのは世界最悪の毒蛇がいるヘビの渓谷だった。
藤木は二人であることを逆手に取り、目くらましを使って藍に手を引いてもらい逃げる。
楢本は毒蛇に食われ絶命した。
藤木も噛まれてしまったが…
結末

生きていた。
血清を使って治療されたのだ。
安アパートの部屋で気が付き、500万円入った封筒が置かれていた。
バングル・バングルにて遺体発見のニュースは無い。
藤木は主催者を突き止め裁くために、記憶を探っている。
やつらは「スナッフ・ビデオ」を撮影していた。人殺しのシーンを殺害した、マニアに高額で売れるビデオだ。
それをドラマ仕立てで撮りたかったがために、あんなことをしたーー……
さらに藤木は、藍が主催者側の近距離撮影カメラマンだったと気づいていた。
左目が義眼で、超小型のビデカメラが組み込まれていたのだ……。
ゲーム機を壊してしまった藍は、組織に叱責をうけないために、藤木の取れ高に賭けて行動を共にしたのだろう。
彼女は今どこにいるのか?
【考察】大友藍の正体は?

藍(偽名)はゼロサムゲームにおける近距離カメラマンです。年齢は30代前後。
考察するに彼女の人生は
- 高校時代に覚せい剤にハマってしまう。
- 告発したためか、組織から制裁を受ける。(年月をかけた落とし前が必要?)
- 組織のアニメーターとしてプラティ君等のゲームキャラ制作。
- しかしアニメーター職では解放まで遠く、思い切って高リスク高リターンのカメラマン職に転身。
左目にカメラを埋め込み、「残酷なシーンを凝視して撮影すること」「ゲームをよりドラマチックにすること」が仕事となる。 - 以後何度かバングルバングルでのゼロサムゲームに参加しており、今回に至る。
- 藤木が勝利した後も参加させられている。
- 解放された後は、まともな漫画を書きたいと願っている。
……こんな感じではないでしょうか?
想像の部分も大きいですが、
「プラティ君を描いたアニメーター」「何度かバングルバングルでのゲームに参加している」
は、それっぽい言動が多数見受けられます。
プラティ君のアニメーター説

藍は自称エロ漫画家ですが、以前はアニメーターをしていたと発言しています。
しかし給料は法律に違反するであろう薄給。
「一日十時間働いていたのに年収103万以下くらいの稼ぎ」だそうです。
これはスナッフ・ビデオを作っている闇組織で働かされていたから…ではないでしょうか?
- 藍は漫画家になった経緯として「お小遣い稼ぎの同人誌に、有名なアニメや漫画のキャラクターを片っ端からパクって警察に捕まりそうになった」「その同人誌が雑誌編集の目に止まって漫画家になった」と言っている。
→まともな漫画雑誌なら、キャラをパクる作家をデビューさせるわけがない。
→しかしスナッフ・ビデオ組織のゲームに出てくる「プラティ君」「ルシファー君」はディズニーのキャラをパクったものである。 - 「ルシファー君」のモデル動物「キバラミズネズミ」について、マニアックな知識がさらっと出てくる。
→藍が考案して描いていたのでは?
ということです。
藍は何度もゲームに参加している

藤木が緊張していた場面でも、落ち着いていた藍。
「最初はすごく怖かったんだけど、だんだん、慣れてきたっていうか。ゲームをしていることにも、この場所にも……。そういうもんじゃない?」
こう発言していますが、本当に慣れていたのでしょう。
藍に埋め込んだビデオカメラもそうですが、多額の費用をかけた「スナッフ・ビデオドラマ計画」。
バングルバングルという映える場所での撮影が、一度きりということはあり得ません。
地形把握の早さ、藤木に悪知恵を吹き込む頭の回転、朝焼けの後に雨が降ると知っていたこと、筋肉質であること(鍛えていた?)……
これらは藍が過去のゲームで生き残り、学んできたものと考えて良いでしょう。
途中で音を上げた野呂田と違い、藍の仕事はプロフェッショナルです。
セックス中でも視点をブラさないよう気を付けている様が見られますし、
自分が理解していても、取れ高になると考えた場合はわざと藤木に口にださせ、ドラマを演出します。
彼女はあと何回の「撮影」がノルマなのでしょうか?
もしそれを終えたとて、有能な彼女を組織が手放してくれるでしょうか?
彼女が命を落とす前に、藤木が助け出してくれることを祈るばかりです。
紹介した書籍▼
漫画版もあるよ!▼
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