君嶋彼方さん著作『君の顔では泣けない』読了しました!
「私たち入れ替わってる!?」から15年そのまま戻れない男女が描かれる物語(元男視点)。
2025年11月14日に実写映画公開です。
この記事では『君の顔では泣けない』原作小説の…
- 登場人物相関図
- ネタバレあらすじ(最後まで)
- 結末後を考察
- 読書感想
をお送りしていきます。
目次
登場人物相関図
『君の顔では泣けない』の、最終的な登場人物相関図(関係図)です。

あらすじネタバレ(結末まで)

朝起きたら同じクラスの『水村まなみ』と中身が入れ替わっていた、『坂平陸』15歳。
突然女の体になり、生理になり、知らない母親に混乱するが、
どうにか『坂平陸』の中に入った水村まなみと喫茶店『異邦人』で合流した。
昨日プールに一緒に落ちたことが原因かも。もう一度落ちれば戻るかも。
一日だけの出来事かも。ひと夏の気まぐれかも。
……そんな希望は打ち砕かれ、二人は15年間入れ替わったままだ。
30歳になった今、水村まなみ(中身坂平)は結婚して二歳の子供がいる。
坂平陸(中身水村まなみ)も、独り身だが元気に暮らしている。
二人はそれぞれの人生を謳歌しながら、毎年7月に一度だけ会い続けている。
15歳の7月➡18歳 高校卒業まで

殆ど交流したことがないのに、体が入れ替わった二人。
第三者に相談せず、「とりあえずお互い上手く成り代わろう」と情報交換をした。
しかし、水村になった坂平には問題が山積みだった。
ソフトテニス部顧問の磯矢はセクハラしてくるし、(客観視した水村が撃退した)
水村の友人たちとも、上手く付き合えず疎遠になった。
坂平だった時の友人・田崎とは水村としても仲良くなれたが、
彼氏の月乃とは自分が「気持ち悪い」と口走ったせいで別れることになった。
さらに、水村として実家を訪れると、実の母親から敵意を向けられた。
割り切れず、あっさり自分の体で童貞を捨てた水村に戸惑いを覚えながらも……
二人はそれぞれの思いから、進学先を東京に決める。
再度磯矢に襲われそうになったこともあり、女としての意識を強めた坂平は、
垢ぬけての大学デビューに成功した。
21歳⇒24歳 決別と結婚

同窓会のため、久々に地元に戻った坂平。
坂平陸(中身水村)はパーマをかけ、まるで別人のようだった。
同窓会では、再会した田崎から誘われて一線を超えた。
しかし結局、遠距離や様々な要因で破局してしまう。
要因の一つには、職場での新たな恋もあった。
同じ印刷会社に勤める「蓮見涼」。
坂平が仕事でうっかり百万円単位の手形を捨ててしまったのを、拾って持ってきてくれた人物だ。
二人はやがて付き合い、同棲を始めた。
24歳の年の秋、坂平の本当の父が心筋梗塞で急逝したと、水村から連絡があった。
坂平は東京から駆け付けた。しかし葬儀会場で実の家族だったころと、水村として接される現在を比べてしまってダメだった。
葬儀に出席できずに帰り、その無念を水村に向けた。
「自分が本当の息子ですと言う」と暴露を宣言する坂平と、それに反対する水村。
喧嘩になり「俺の顔で情けなく泣かないで」と言ってしまった坂平。
二人は完全に決別し、
毎年7月の第3土曜日に会う約束もおじゃんになった。
坂平は東京に帰って万年筆を捨てた。
万年筆……自分のイニシャルが刻まれた高校卒業記念品。
元に戻るようにと、願掛けで交換していたもの。
そして居場所のない不安から、涼に結婚を迫った。
27歳⇒30歳 出産から最後まで

妊娠し、里帰り出産をすることになった坂平。
切迫早産の可能性があるため、妊娠八か月で入院することになった。
入院病棟での坂平は、かなり不安定になっていた。
そんな折、見舞いに訪れた涼がお守りとして、捨てたはずの万年筆を持ってきた。
捨てたらまずいモノではないか?とゴミ箱から拾って持っていたらしい。
坂平は、久方ぶりに水村に電話した。
そして現在の不安……、借り物の体を死なせてしまう恐怖と、今までの感謝・謝罪を伝えた。
仲直りは果たされ、この後坂平は元気な女の子を産む。
そして時はたち、30歳の7月。
二人は再度、学校のプールに落ちることを試みた。やらなくてはならない気がしていた。
結果はまだ分かっていない。
アナザーストーリー(水村まなみ視点)

書籍化にあたり加筆された、水村視点のアナザーストーリー。
幼い頃の夢はお嫁さんだった水村。
水村はその夢を奪った、坂平という男が大嫌いだった。
だから高校を卒業した後、できるだけ外見を変えようとした。
しかし自分が大嫌いな「坂平陸」を好きだと言ってくれる人がいる。
水村は来る人拒まず誰とでも付き合った。セフレとして8年ほど付き合いのある瑞恵もそうだ。
瑞恵は、毎年7月に会う坂平の事を「織姫」と呼んでいる。
時が経ち、変わっていく心境。
水村は、自分の幸せが相手の救いに繋がると考えていた。
だからこそ現在は、この姿でめいっぱい幸せになる、人生を満喫すると決めていた。
最後は元に戻れるのか?結末について

描かれないまま終わる、二人の戻るか戻らないか問題。
ラスト、プールに落ちた翌朝に元に戻ったのか?
考察……といっても「中身入れ替わり現象」は完全にフィクションなので「どちらでもあり得る」が結論なのですが……
もう少し考えてみましょう。
そもそも、入れ替わった人生をそれぞれ謳歌しているのに、どうして「元に戻るか試す」必要があったのか?
「試さないといけない気がした」と坂平は述べていますが、その義務感は「実の家族への未練」から来たものだと思います。
坂平は現在、「実母とは二度と会わないかも」と予感しています。
しかし「今のまま実母と会ってみないか」という水村の提案は、「息子としての愛情が欲しい」という理由で断っているのです。
そうしてやってきた「30歳」の区切り。15歳生きて入れ替わって15年。
「元に戻るとしたらこのタイミングでは?」と考えるのは、不思議ではありません。
その最後の機会かも知れない「30歳の7月」を、何もせずに逃すことへの罪悪感。
そういう気持ちから、試さずにはいられなかったのだと思います。
もし戻れたら……学生時代とは異なり仕事もありますし、15歳の時以上の苦労が待ち受けているでしょう。
けれどそれでも、お互いのつけた日記を参考に、どうにか第三の人生を歩んでいくのではないか?……そう思います。
読書感想。「性」がしっかり描かれる作品

『君の名は』のパクリではないんですが、ついつい他に入れ替わりネタ作品を知らないので比べてしまいました。
本作のほうがリアル。
しかしある程度ファンタジーの方が、キャラクター好感度は高く保てるのかもしれません。
坂平が水村に八つ当たりして、怒鳴り散らすのがどうもなぁ……って思ってしまいました。
ちなみに、『君の名は』との違いを最初に感じたのは「生理描写」でした。
生理、性行為、出産……この作品、けっこう性描写が生々しいです。
「男から女になると変わるところ」を余すところなく描きたかったのかなぁと思います。
(映画は年齢制限無いようなので、ラブシーンは省かれそうです。あってもキスシーンかな?)
そりゃ入れ替わりが起きたとしたら、生理周期に当たることもありますよね。
けれど本作では「生理」という言葉を使わずに、陸が感じたままが描かれており……
うーん…見ていて楽しいものではないですね。
女性として馴染みのあるものですが、だからこそ、表現力豊かに言語化されると微妙な気持ちになるのかも……?
初めての性行為も、心境を交えつつそこそこ丁寧に描かれていますが……
大切なのは分かるんですが、あんまり他人の情事を知りたくないなぁ…とか、そういう気持ちがどうしても湧いちゃうんですよねぇ……
逆に好きな部分というか、納得感が強かったのは坂平と弟の関係性です。
弟にとっては大切な思い出も、(実は入れ替わっている)兄は当然覚えていません。
そういう些細な温度差から距離を置いてしまう。
けれど時間がたつにつれて共有できる思い出が増え、また努力次第で仲が改善していく……
緩やかにでしょうが、改善は可能なのだと希望を見せてくれたシーンでした。
気になった方は、是非読んでみてください!
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