井上真偽著作『アリアドネの声』読了しました!
Amazonのサブスク「kindle unlimited」に入っていた人気作。
「地震で取り残された「見えない・聞こえない・話せない」女性をドローンで救助する」という、タイムリミット・サスペンスです。(表紙の絵が内容説明すぎるので必見)
この記事では
- あらすじ解説(ネタバレ部分を折りたたんで最後まで)
- 個人的な読書感想、メディア化について
- つまらないと感じる人がいる理由
を解説していきます。
目次
『アリアドネの声』ネタバレあらすじ

(重大なネタバレ部分は折りたたんでいます)
幼い頃、立ち入り禁止とされていた洞窟の満ち潮で、兄を亡くした『高木春生』。
自分が勇気を出して助けに行っていれば……
そんな罪の意識から、高木は兄の言っていた「無理だと思ったらそこが限界」という言葉を信じ続けて生きてきた。
現在の職業はドローン操縦士兼インストラクター。
災害救助用ドローン『アリアドネ』等を操縦する。
そんな高木も出席した『WANOKUNIプロジェクト』のオープニングセレモニー。
- 世界的にも先進的な都市開発プロジェクト
- ドローンを駆使した地下都市構想
- ユニバーサルデザインを掲げており、障がい者枠での住民も募集していた
そこで、地震が起き……
『見えない・聞こえない・話せない』令和のヘレン・ケラー『中川博美』が、地下に取り残された。
そして災害救助用ドローンの、メイン操縦士として抜擢されたのが高木だった――……
高木たちは、言葉での指示も通らない彼女を無事救助できるのか!?
捜索し、ドローンで安全なシェルターに避難させられるのか?
地下水の水位が上昇している為、制限時間は6時間。
使うドローンは「アリアドネの声」。
ギリシャ神話で「困難な状況で解決の道しるべ」となる「アリアドネの糸」から名付けられた機体だ。
一つの疑惑が浮上

シェルターから2000メートル以上離れた場所で見かった中川さん。
彼女の介助者の香水で助けが来たことを知らせ、点字カードで指示を伝えた。
そこからはドローンから伸びたワイヤーで、中川さんを誘導していく。
中川さんは、漏電にも気づき浴槽に落ちても動じない、肝の据わった要救護者だった。
そしてなぜか鼠に気づき、電気のスイッチをつけ、救助隊がぶつかると思った障害物を避けて見せた。
……見えない・聞こえないのではなかったのか?
話題作りのために障がいを盛っているのか?
救助者たちの中で疑惑が広がる中
- 高木の元同級生「韮沢(にらさわ)」の妹(失声症)が行方不明
- 暴露系ユーチューバーの盗聴用ドローンが高木の頭にぶつかり、操作ミス&意識を失う
というトラブルも起こる。
兄の言葉に向き合った高木

高木はこの重要な局面で、今一度「無理と思ったらそこで終わり」という兄の言葉に向きあった。
すると夢の中で兄は「お前が助けに来て一緒に死んでいたら、死んでも死にきれなかった」と、高木の過去の行動を肯定してくれた。
高木は「無理」という危険信号を根性論で乗り切らず、「諦めて他の方法を探る」ことを選ぶ。
現在の問題は電波干渉。高木はドローンの数を減らし、自分が地下に操作機を持って降りることを提案した。
減らしたドローンは韮沢の妹の捜索に回す。
地下では余震による新しい問題……火災や浸水スピードの上昇等もあったが、
どうにかシェルターのドア付近まで中川さんを誘導することができた。
最後、不思議なことがあった。
中川さんが左右のドアを間違えそうになり、高木が「右です」と叫んだら、彼女はその通りに進路を変えたのだ。
聞こえないはずなのになぜ…?
しかし避難誘導は完了した。
高木は通路に充満する煙を、ドローンのプロペラで吹き飛ばして脱出した。
驚きの結末

救出された中川さんは、韮沢の妹を背負っていた。
韮沢の妹は地下三階まで落下し、スパ施設の浴槽に着水。
それを中川さんが見つけ、ずっと背負っていたのだ。
彼女の不可解な行動は、韮沢の妹が協力していたためだった――……
感動の再会を果たす人々を見て、高木は思った。
人間に限界はないのではないか?
何が無理なのか、想像すらできていなかったのだから……
【感想】映画化してほしい!主人公の活躍が必見

面白かった…!特にラストの方…主人公が覚醒してからが面白い作品です。
「無理だと思ったらそこで終わり」と言う言葉への新解釈
→そこから高木の覚醒
→ギスギスしていた同級生「韮沢」との関係改善
→提示されていた謎に対する予想外のアンサー
爽快な展開が押し寄せてきて、後味の良さはかなりのものだと思います。
記事作成時『アリアドネの声』に映画化・ドラマ化等の話は無いようですが、是非やってほしいです。
災害救助ものなんですが、グロテスク描写がないのが良い……!
映像でも安心してワクワクハラハラできると思います。
この作品が「つまらない」「向いてない」人は?

本作を読んで「微妙」という感想を持つ人もいるようなので、どのあたりが引っかかるのか調べてみました。
- ジャンル「タイムリミット・サスペンス」をミステリー(謎解き)と混同していた
- 帯にある「どんでん返し」を期待しすぎてしまった
- 主人公の考えにズレを感じる
確かに実際読んでなるほどと思う部分はあります。特に事前情報との差異は要注意ですね。
この作品のジャンル「タイムリミット・サスペンス」は、「制限時間内に解決させる緊張感を楽しむ」作品です。
ミステリー要素はおまけ程度なので、そこに期待しすぎないようにしましょう。
どんでん返しも…嘘ではないのですが、個人的にはあまり期待せずに読むべきだと思いました。
なぜならば、一応「答え合わせがくる」状況は予想できてしまうからです。
ミステリー「方舟」のように、晴天の霹靂のようなもの…急に爆弾を投げ入れられるようなものを期待するのはよろしくないです。
関連記事:何故つまらない?「方舟」ネタバレ解説|夕木春央のミステリー
あとは最初の方、主人公の考えに「そういう考えになるの…?」と思ったこともありましたが、
そこは後々成長していくので、若干疑問を覚えても、挫折せず読んで欲しいなと思いました。
まとめ
『アリアドネの糸』をまとめると…
- 主人公・高木は兄の死をきっかけに「無理だと思ったらそこで終わり」を信条に生きてきた。
- ドローン操縦士として、地震で孤立した盲聾唖の女性・中川を救助する任務に挑む。
- ドローンや点字カードを駆使し、限られた時間での救出劇が展開。
- 中川は実は行方不明の少女を背負っており、二人同時に救出される。
- 高木は兄の言葉を再解釈し、「無理を見極める」成長を遂げる。
- ラストは爽快で感動的、映画化向きの内容。
- 不満の声は「どんでん返しへの期待外れ」と「主人公への共感しづらさ」等起因。
ということでした。
読んでよかった感動作でした!
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