朝倉かすみさん著作『平場の月(読み方:ひらばのつき)』読了しました!
映画化原作小説。50代の葛藤溢れる恋と闘病が描かれた、ドキュメンタリ―チックな物語です。
この記事では
- 平場の月の意味は?
- あらすじ解説(ネタバレありで結末まで)
- 登場人物
- 感想(つまらないと言われる理由も)
をサクッとまとめていきます。
平場(読み方:ひらば)の月の意味は?

「平場」とは、ひらたい地面のこと。
特別な場所ではなく、日常の中で見上げる月のことだと思われます。
ネタバレあらすじ(結末まで)
本来は須藤の死を知らされた青砥の回想から入りますが、 ここでは時系列順に整理した簡単なあらすじを解説します。
青砥と須藤が再会する

50歳の青砥は、念のためと検査に訪れた病院で、
かつて告白した中学の同級生・須藤と再会する。
気晴らしに「無駄話の会…互助会」を結成した二人。
LINEを交換して毎週会うようになった。
須藤は都内大学を卒業後、大手証券会社に勤め、30歳で結婚退職。
41歳で夫を亡くし、子供はいなかった。
青砥は妻子に出ていかれ、3年前に母が倒れたのを機に地元の印刷会社に転職。
今は実家で一人暮らしだった。
それからの出来事

時期 | 出来事 |
---|---|
2016年 7月14日 | 病院で須藤と再会、「互助会」開始 |
同月中旬 | 須藤の過去(夫との死別、若い男に貢いで破産した等)を語る。青砥も過去のアル中気味な時期を告白 |
須藤に大腸がんが見つかる | |
8月21日 | 須藤が売店を退職。青砥と夕食を共にし、初めて肉体関係を持つ |
8月23日 | 須藤が大腸がん手術。直腸切除・ストーマ(人工肛門)造設 |
9月 | 青砥がネックレスを贈る。須藤は「お守りにする」と喜ぶ |
12月〜翌年3月 | 抗がん剤治療。副作用で手足の痛み、転倒による火傷 |
2017年 1〜2月 | 青砥の家で同居生活。須藤の妹が訪問。 須藤は青砥を「初恋の君」と言っていたらしい |
4月 | 須藤が回復し、一人暮らし再開。青砥は派遣女性と短い関係を持つ |
5月 | 須藤が青砥の勤務先で派遣として働く。良好に見えた |
6月15日 | 須藤が定期健診が終わった後、Vサインを見せる。(実は転移していた) 青砥がプロポーズを試みるも、自己嫌悪から拒否され、「もう会わない」と言われる 青砥はとりあえず受け入れつつ、1年後に温泉旅行を確約した |
2018年 2月 | 須藤に会いたくなり、須藤が働いているはずの病院へ通うが姿なし |
5月3日 | 須藤死去 |
6月11日 | 安西から訃報を聞き、花を買って須藤の部屋を訪問 |
結末

須藤は亡くなる2・3週間前にガタガタと悪くなったが、
最期まで「合わせる顔が無い」と、青砥に会うことを拒んだらしい。
須藤の家庭菜園には封筒が埋められていた。
青砥が贈ったネックレスと、青砥の家の合鍵が入っていた。
青砥は、須藤が自分の中に深く根を下ろしていたと実感する。
登場人物
青砥健将 | 50歳、主人公。印刷会社勤務。母は施設入所中(認知症)。 |
須藤葉子 | 中学同窓。みっちゃん(妹)がいる。 |
ウミちゃん | 中学同窓。中央病院の売店勤務。噂話に余念がない。 |
安西知恵 (旧姓・橋本) | 中学同窓。青砥の勤める印刷会社のパート。須藤の訃報を青砥に伝えた。 |
江口・森・後藤 | 中学同窓。青砥の友人。江口は須藤に告白して玉砕。 |
ヤッソさん | 64〜65歳、派遣社員。青砥の同僚で飲み友達。 |
感想。こういう人には向いてないかも?

体験談か!?っていうくらい、日常的な描写が事細かに描かれる本作。
絶対こういう人いるよね、そうだよねリアルな50代ってこういう事話してるよね、という感想を真っ先に抱きました。
なのでこう、フィクションとしての面白さを求めている人には、向かない作品ではあると思います。
「平場の月」と検索すると「つまらない」という第二キーワードがでますが、多分リアルすぎるものが向かなかったんでしょうね。
かくいう私もちょっと読みにくさを感じた所はあります。
例えば青砥&須藤が、スーパーでウミちゃんと鉢合わせて冷やかされる場面。
通じ合っている内輪の、身振り手振りやその場の空気感で察するような「省略された会話」が描かれるのですが、
中々各キャラの言いたいことに自信が持てないというか。
青砥が後で落ち込んでいるのを見て、「あれ?どういうことだ??」となって読み返しましたが、
「多分場を上手くまとめられなかったことに落ち込んでる…?」という自信のない読解となってしまいました。
後は世代間ギャップです(笑)このあたりがピンときませんでした。
- 生検……体の一部から細胞や組織を取り出して、病気の有無や種類を調べる検査
- 森田健作……政治家兼タレント
とは言え、中々考えさせられるところのある物語。
50歳になったら、手痛い失敗や馬鹿な事の一つや二つ経験しているでしょうし、それをまとめて受け入れられる人間って素敵だなぁとか。
それでもそこまで生きていた人生のポリシーなんかがあるから、須藤は最期、青砥を呼ばないことが正解だと思ったんだろうなとか。
50代の生き方とは何かを考えさせてくれる物語。
気になった人は是非読んでみてくださいね!
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