この記事では、柚月裕子さん著作『盤上の向日葵(上下巻)』について
- ネタバレあらすじ(結末まで)
- 登場人物相関図
- 何故「つまらない」という意見があるのか
をネタバレ有りでお伝えしていきます。
将棋はルール知らないし、上下巻かぁ…と身構えていたのに、あっという間にのめり込めました…!良作です!
目次
【時系列順】あらすじネタバレ
まずはラストまでのあらすじを、時系列順に解説します。
諏訪時代(唐沢視点)

昭和46年。舞台は長野県諏訪市。
元教師の唐沢光一朗(63歳)は、自分が捨てた将棋雑誌を拾っていた少年…上条桂介(小3)と出会う。
新聞配達をして身なりも酷い桂介を助ける為、唐沢は「将棋を教える」という名目で、桂介を家に通わせた。
桂介の母・春子は一年ほど前に(心の病で)亡くなり、父・庸一はそんな現実から酒とギャンブルに逃げていた。
そして桂介に虐待まで……
唐沢は桂介を奨励会(プロ棋士養成機関)に入会させたいと考えた。
金は唐沢が出すつもりで、桂介もプロになりたいと言った。
しかし庸一は取り付く島もなかった。「こいつは将来俺の面倒を見る」と言った庸一に、殴りかかった唐沢。
養子として引き取ると申し出たが、
「桂介は俺の子だ」と言う庸一を、桂介は見捨てられなかった……
それから桂介は、唐沢宅に来なくなった。
しかし7年後。東大に受かった桂介が訪ねてきた。
昨年の秋に手術をし、あまり長くないことを悟っていた唐沢は……
退職時に自分へのご褒美として買った、「初代菊水月作 錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」を桂介に贈った。
東京時代(桂介視点)

昭和55年。
東大に通う桂介は東明重慶という男と出会った。
賭け将棋で飯を食う「真剣師」の中で歴代最強と謳われた男だ。
ある日、東名は桂介を旅打ち(賭け将棋の旅)に連れ出した。
「貴重な駒を死なせておくのか」と菊水月も持ってこさせた。
岩手から後援者の角舘も同行。青森で真剣師「鉈割り元治」と対戦する。
一局100万円×7局。しかし東明はここで詐欺を働いた。
1試合目にわざと負け、桂介の菊水月を勝手に角舘に売って金を作り、試合後持ち逃げしたのだ。
桂介は角舘に「必ず買い戻すから売らないでくれ」と頼み込み……
必死に金を貯めて、5年後に買い戻した。
その後はソフトウェア会社を立ち上げ、事業は2年で年収30億を達成。
しかし成功とは裏腹に、死への憧れが強くなっていく。
金を無心してくる庸一が一番のストレスだった。
3000万円持ち逃げしようとした庸一を、危うく殺しかけた。
しかし、そこで庸一は桂介の出生の秘密を暴露する。
お前は桂介の母・春子と、その実の兄の子供なのだと。
それを誤魔化す為に、春子は味噌蔵の従業員であった自分に、カモフラージュの駆け落ちを頼んだのだと。
そしてこの事実を、マスコミへの脅し道具に使ってきた。
桂介は向日葵畑で男に抱かれる母親の夢を見ていた。精神的に死んでいる母を、羨ましいと感じた。
しかし死ぬのは、庸一が死んだ後だ。
桂介は酷く痩せた姿で訪れた…けれど将棋の腕はまだ一流な東明に、庸一の殺害を依頼した。
半年後、東明から「約束は果たした」と連絡があった。
頼みを聞いてほしいという東明。
それは、自分が一番人間らしい生活をした街を見下ろしながら、菊水月で最期の将棋を打つことだった。
自分が勝てば、自分を殺して、この場所に埋めてくれ。
勝負は桂介が勝った。
東明は桂介に「プロになれ」と言い残し、持ってきた匕首(短剣)を腹に突き立てた。
桂介は東明をそこに埋め……
香典として菊水月を胸に抱かせた。
東明の死体が見つかった後(佐野視点)

埼玉県の大宮北署にて、『天木山山中男性死体遺棄事件』の捜査会議が行われた。
事件概要 | 天木山の山中で、男性の死体が発見された。 死後およそ3年経過している。 |
特記事項 | 将棋の駒(初代菊水月作:価値約600万)が一緒に埋めてあった。 |
捜査体制 | 大宮北署の捜査員約50名が捜査 |
元奨励会の会員である佐野は、石破警部補と組んで捜査にあたる。
発見された初代菊水月と同じ製法で作られたのは7組。
その内、現在行方不明のものは一つだけだった。
二人は過去の持ち主から、現在の持ち主を洗った結果……
遂に桂介までたどり着いた。
現在(佐野視点)

警察上層部は、桂介を引っ張るのは竜昇戦終了後に決めた。
若き天才棋士・壬生芳樹竜昇(24)VS 特例でプロになった異端児・上条桂介六段(33)の対決。
空前の将棋ブームを引き起こしたこの二人の勝負を邪魔すると、世間のバッシングが怖いからだ。
最初は壬生が押されていた。
しかし長考の末に押し返し、今度は桂介が長考に沈んだ。
長時間に及ぶ試合。桂介は途中で過去に意識を飛ばし、時間を無駄にした。
それでも粘りに粘って、桂介は向日葵が咲いた場所に打った。向日葵の幻覚が見える場所は、経験上「ここに打てば勝てる」という場所だ。
しかし……それは反則負けの手だった。初心者がやるようなミスで、桂介は敗北した。
結末

翌朝、東京駅で桂介に任意同行をかけた、佐野&石破。
昨日の失敗を引きずり将来が真っ暗な桂介は、すぐに二人が警官だと気づいた。
桂介は、新幹線が近づいてくる線路に身を投げた。
【最後の解説】
※ホームとホームの間(線路があるところ)に雪が落ちてきて、その雪に向かって身を躍らせ舞った……
これを線路への身投げと解釈しています。
登場人物相関図
時系列順の登場人物相関図です。
【圭介の出生(真実)】

【諏訪時代】

【東京時代】

【東明死体遺棄事件捜査】

結末につまらなさを感じてしまう

「盤上の向日葵」で検索すると、第二検索キーワードに「つまらない」が出てきますが……
正直私としても、不満が無いとは言えない終わり方でした。
こう…めちゃくちゃ応援していたスポーツ選手が、あっけなく負けた時のような気持ちと言いますか。
「つまんねぇ展開だなあ!」みたいな八つ当たりに近い感情が残ると言いますか。
だって私たち読者は、上下巻2巻かけて桂介の人生を追ってきたわけです。
幼少期の苦労を知り、桂介を案じて菊水月を贈った唐沢にも感情移入してきたわけです。
そんな桂介が至った大舞台。天才棋士・壬生との対決。
勝て!勝ってくれ!!ラストチャンスで一花咲かせてくれ!って、……そりゃ応援しますよね。
なのにあっけなく反則負け。
え?そんなことある???
さらに、さらにですよ。
佐野&石破捜査官コンビの結末もあんまりです。
捜査が始まったのが8月、桂介に辿り着いたのが12月。
私は4カ月間、二人が一般市民に邪見にされながらも、本当に一歩ずつ捜査を進めてきた様を見てきました。
やっとたどり着いた……というのに、桂介は二人を見て自殺を図ります。
いや、成功したかどうかは書いてないのでわかりません。分かりませんけど、「著名人だから慎重に」が仇となり、線路への身投げを許してしまった可能性は多々あります。
だとすると、この二人はこの後後悔に苛まれたり、叱責や処分を受けることが予想できます。
あんまりじゃあないですか……!
桂介が自死するのも、反則負けしたのも、伏線があるので不思議ではありません。
けれどもうちょっと……ご都合的でいいから救われて欲しいというか。
結末にやるせない気持ちを抱いてしまうのも事実でした。
まとめ&映画化について

結末に不満があると書きましたが、トータルとしては本当に面白い作品でした。
将棋のルールを知らずとも、全く問題なく読めた作品。
始めの方から面白いので、すぐにのめり込めてページ数が重荷になりませんでしたし、
何より唐沢視点の過去編が胸熱でした…!
あそこでもし養子になっていれば、真っ当なプロ棋士になっていたのかもなぁと。
どうしても考えてしまいますね。
余談ですが、この作品は2025年10月31日に映画が公開されます。
予告編を見てビックリ。「宮田奈津子」とかいう桂介の婚約者が登場するらしいです。
原作には若い女性が出てこないんですが、華が無いからと追加されたのでしょうか…?
この映画オリジナル要素が吉と出るのか凶とでるのか…気になるところですね。
まぁ、原作が上下巻なので、尺不足でカットされるシーンはそこそこあると予想できます。
おすすめですので、是非原作を読んでみてください。
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