御木本あかり著作の『終活シェアハウス』読了しました!
68歳の女性四人シェアハウスで起こる、危機と助け合いと飯テロの話です。
読み終わって「こういう老後もいいかもなぁ~~!」と思いました。2025年10月NHKでドラマ化。
この記事では小説『終活シェアハウス』の
- ネタバレあらすじまとめ(結末まで)
- 個人的な感想
をお届けしていきます。
登場人物

まずは登場人物です。
歌子・厚子・瑞恵・恒子がシェアハウス「カメ・ハウス」のメンバーです。
速水翔太 | 秘書。実質何でも屋。就活生で、缶詰会社に就職が決定。 |
奥村歌子 | 料理研究家、68歳。マンションの持ち主。創作おせちの書籍化決定。 |
今井厚子 | 白髪ボブ、68歳。元高校教師で就職先を探している。 |
池上瑞恵 | 68歳。ケチな医者の夫と離婚。医者の息子がいる。色々習い事も行っている。 |
緑川恒子 | シェアハウス新メンバー、68歳。軽度認知障害。フードスタイリストの娘がいる。 |
美果 | 翔太の彼女。恒子と甘いモノ巡りをし、歌子に弟子入りする。 |
沼袋豪 | 歌子の古い友人。78歳前後。お調子者。厚子と恋愛関係に? |
ネタバレあらすじ(結末まで)

マンション6階にあるシェアハウス……「カメ・ハウス」には、68歳の女性が4人住んでいる。
シェアハウスの持ち主で、料理研究家の歌子さん。
元教師の厚子さん。
恋愛がしたい瑞恵さん。
最後に加わった、軽度認知障害のある恒子さん。
四人は小学校からの友人同士だ。
そしてそこで秘書(という体の何でも屋)としてアルバイトしているのが、大学生の翔太だった。
歌子さんの絶品まかないにつられ、姦しい四人のババ様たちの中で働いている。
68歳の恋愛

シェアハウスに時々遊びに来る、歌子と腐れ縁の男「沼袋豪」。
この沼袋に「残りの人生を一緒に」と言われたのが、登山仲間として仲良くしていた厚子だった。
ところが沼袋は、登山で足を滑らせ突然死してしまう。
厚子は沼袋の緊急連絡先にしていた娘から、訃報を聞いたらしい。
一緒に暮らす予定と言っても「結婚はしない」「隣同士で住む」と中途半端だった二人の関係。
厚子は葬式を沼袋の元妻が仕切っているのを見て、何かがふっきれたらしい。
一方、瑞恵がシニア向けマッチングアプリで詐欺にあうという事件もあった。
クルーズ旅行の前金120万円を振り込んでしまい、息子に「色ボケ」と罵声を浴びせられる事態に。
そんな上から目線の息子を、恒子が「君が昔うんちを漏らして、お母さんは大変だった」というエピソードで黙らせる。
瑞恵は次はカルチャーセンターの小説講座に通い始め、新しい趣味を楽しんでいる。
【結末】シェアハウス解散の危機

シェアハウスに最大の危機をもたらしたのが、家主である歌子の息子「光輝」だった。
昔、光輝がゴツい男の恋人「ヤン」を連れてきたとき、歌子はびっくりして口がきけなかった。
そこから疎遠になり、光輝は同性婚が認められたオランダでヤンと暮らしていた。
ところが経営している会社が資金難に陥り、16年ぶりに歌子を頼ってきたのだ。
歌子は後悔を態度で示すように、約一億円を調達して光輝に渡した。
マンションの二戸分の権利を売り払い、株券や国債も処分した。
ところが「戻ってくるから一時的に」と貸していた金額が返ってこず、シェアハウスも手放さなねばいけなくなってしまう。
「残念だけど……カメ・ハウスは解散」
各自、将来を考え直して引越しの算段をつけよう。
そんな話の中、声をあげたのは恒子だった。
「ここを離れたくない」と、株で儲けた一千万を下ろしてきた。
追随して厚子が退職金から一千万出すと言い、
瑞恵もケチな息子を脅して一千万しぼりとってきた。
そして無事、シェアハウスを共同名義で買い戻すことができた。
光輝のパートナー「ヤン」も謝罪に訪れた。
ヤンは、厚子&瑞恵&恒子からの手紙で、歌子が家を追い出されそうになっていると知り……
オランダから、光輝に変わって謝りに来た。
800万円を返済し、その後も歌子が融通したお金は継続的に返済されている。
この余剰金は、余っている部屋のリフォームするために使うことが決まる。
その部屋で、厚子が塾を開いたり、歌子が料理教室を開いたりするのだ。
やはり恒子には痴呆の予兆があり、時々はしんみりする。
それでも姦しく、「あと20年ある」と言って夢が尽きない四人の日々は続いていく。
感想

歌子さんの飯テロが素晴らしい作品。食レポがウマそうすぎる…
モッチリ、カリカリ、香ばしい…パエリアっていいですよね。
他の料理も「しゃれているけど凝りすぎない」といういい塩梅のレシピなんですよ。
作ってみたくなります。
それはさておき……
若者には無い力強さがあるオバ様たちの物語でした。
主人公は一応翔太なんですが、わりと蚊帳の外というか、いつの間にか門外漢になっているのが面白いですね。
それ程までに、オバ様たち四名が主役として存在感を放っている、ということです。
彼女たちは賑やかで、やはり心強い。
そしてそれぞれ違う性格だけれど、それぞれに女性ならではの温かさがあります。
混乱してふさぎ込んでいるときに「タクシーでいいからとにかく帰ってきな」と言ってくれる。
温かくて美味しいご飯を準備して、待ってくれている。
なるほど、「家族の血より、分かり合える友」というのもうなづけます。
旦那がこの言葉をかけてくれるとは限りませんもんね。
普段いがみ合ってたりするのに、いざという時に共感してくれる友人たち。
姦しさで老いの寂しさが吹き飛ばされて、或いは緩和されて……こういう老後もいいかもなぁと憧れてしまいました。
そして「カメのようにおっとりゆっくり地道に進んで、最後に勝つ」というスローガン通りの最後。
「道を譲れって……、譲って脇にどいた私の道はどうなるのよ。私だって、前に進まなくちゃならないでしょうが。道が無ければ生きていけないでしょ。脇で指をくわえたまま、どうすんのよ、人生まだ、終わってないのに」
何歳になっても、世間が冷たくても諦めてはいけない。
譲りたくないものを、譲ってはいけない。
そんな老後の意地を、彼女たちのように持って生きていきたいなと感じました。
ぜひ読んでみてください。
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