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小説『火喰鳥を食う』考察。ネタバレ登場人物相関図から

小説『火喰鳥を食う』考察。ネタバレ登場人物相関図から 小説・実用書

原浩著作『火喰鳥を、食う』。2025年10月映画化の、ミステリー要素も含んだホラー小説です。

この記事ではあらすじを登場人物相関図と一緒におさらいしてから、

  • ○○の世界が勝利した理由
  • 火喰鳥の悪夢(戦場で何があったのか?)

について考察していきます。

※この先ネタバレにご注意ください。

真相あらすじをおさらい(※ネタバレ注意)

火喰鳥

チェコの回想やオカルト要素があるため、理解が難しい本作。
先にあらすじを、真相を整理しながらおさらいしていきます。

事の起こり

古民家久喜家のイメージ。夏、本棟造。

ある夏の日、戦前に建てられた古民家『久喜家』にて、二つの事件が起こった。
それは二つとも、戦争で死んだ雄司の大伯父貞市さだいちに関することだったーー……

  • 墓から貞市の名前が何者かに削り取られた
  • 貞市の戦時日記がパプアニューギニアから戻ってくる

雄司たちは記者たちと一緒に日記を確認する。

日記を確認した人物(久喜家相関図)▼

主人公「雄司」とその妻「夕里子」。二人は新婚である。そして夕里子の弟「亮」と、雄司の祖父「保」、信州タイムズの記者「与沢一香」と「玄田誠」がいた。
尚、貞市は保の兄で、22歳でパプアニューギニアで戦死している。

日記は貞市の「生きたい」という想いがこもった壮絶なものだった。
飢餓で、その土地に住む「ヒクイドリが食べたい」という記述もあった。

すると記者の玄田が「久喜貞市は生きている」と妙な発言をし、その後、亮が日記に『ヒクイドリヲ クウ』と憑りつかれたように書いた。

これによって場にいた6人は「貞市がヒクイドリを食って生存した世界」を想像し……
「貞市が生きている世界」が生み出されてしまった。

日記の力と北斗の企みによって。

そしてここから二つの世界の生存競争が始まる。

北斗総一郎とは?正体と行動整理

貞市の日記イメージ

北斗総一郎は、小さい頃からモノに宿った思念を感じ取ることができた。

そしてその唯一の理解者である夕里子に、尋常ではない執着があった。

しかし似た能力を持つ夕里子は、それを隠して雄司と結婚してしまう。

そんな折、仕事で行ったパプアニューギニアで相当な『籠り』を持つ『久喜貞市の日記』に引き寄せられた。

『籠り』とは?
思いが籠ったモノ。籠りが作用して怪奇現象が起こる。その現象を周囲が信じることで、過去すら変化する

北斗は「内なる自分」……「貞市が生きている世界の自分」との通信により、

  • もし日記の『籠り』の力で『貞市が生きている世界』を現実にできれば
  • その世界で雄司は交通事故死し、夕里子と出会うことすらない
  • よって自分が夕里子と結婚できる

と知った。

北斗は世界の変更を望み、久喜家に仕掛けを打った。

  • 日記を久喜家に送る手配をする
  • 墓から久喜貞市の文字を削る
  • 記者「玄田」を金で買収し、「久喜貞市は生きている」と久喜家の皆に聞かせる→貞市生存を信じさせるトリガー
  • 夕里子が自分を頼ってきたら、「貞市が生きている現実」が侵食してくるまでそれっぽいことを言って時間を稼ぐ(貞市の日記をくれぐれも燃やさせないようにする)

※尚、展開がどうなるかの詳細は北斗も知らない

これらの行動と、貞市の子孫に協力していた「貞市生存世界の北斗」の協力により、北斗は夕里子との結婚を現実にする。

現実になった世界▼

もうすぐ100歳になる貞市と、孫の千弥子のいる世界。
二人は同居しており、千弥子は40歳の妊婦である。
また、ご近所さんに北斗がおり、彼は夕里子と結婚している。
北斗は千弥子を悪夢から助けたり協力していた

登場人物たちの最後

侵食

どんどん「貞市が戦争から生きて戻った世界」は浸食していく。
消える位牌、書き代わる日記に墓、人々の記憶……

それでも「貞市が死んだ記憶」を雄司たちが持ち続けていたのは、いずれ排除されるからだった。

雄司たちは抗うも北斗の罠にかかり、失敗に終わる。

日記を確認した人物たちおさらいの相関図
行方不明
悪夢を見て衰弱。泣いている電話が雄司の元にかかってきたのが最後。姉・夕里子も存在を忘れていた
夕里子千弥子の霊?が窓を割った際、破片に刺されて死亡
雄司夕里子が死んだ後、北斗を殺して貞市を殺しに行くも、火喰鳥に騙されて死亡(したと思われる)
玄田マラリア熱で死亡
与沢火喰鳥に食われ、車ごとガードレールを突っ切って墜落

考察

ここからは、ちょっと気になる部分を考察していきます。

千弥子が勝利した理由は?

妊婦

この物語で毎日のように挟まれる恐怖の「夢」の描写……これは雄司ではなく千弥子のものだと最後に明かされます。(雄司や亮も悪夢を見ているようですが、これは描かれていません)

「おじいちゃん」は雄司が保のことを呼んでいたのではなく、千弥子が貞市のことを呼んでいたわけですね。

そしてこの「夢」が二人の主人公……「千弥子」と「雄司」の覚悟の差を大きくし、勝負を決定づけたのではないかと思うのです。

  • 早い段階で腹の赤子を守る決意を固めた千弥子
  • 「夕里子を守ってくれるなら」と北斗を信じ、「何が何でも自分が」とは考えなかった雄司

千弥子は1日目の終わりの夢で

火喰鳥が自分の腹から子供を取り出して、食べている様子を見せつけられています。

だからこそ母としての本能が早々に呼び起こされて、うだうだしている雄司なんかは相手にならなかったのかもしれません。

彼も強くはなりましたが…それこそ、カブトムシなんかもうどうもなく、貞市を単独で殺しに行くほどになりましたが……

それは夕里子を失ってからやっと。
夢であるうちから覚悟を決めた千弥子とは違い、覚醒が遅すぎたということではないでしょうか?

貞市生存と火喰鳥の悪夢について

「貞市が生存した世界」では、戦場パプアニューギニアから生存して戻った人物が変化していました▼

パプアニューギニアでの戦争で最後まで残っていたのは、曹長の貞市と、伊藤、藤村。
元の世界線では伊藤と藤村が日本に帰還していたが、
変わった後の世界では貞市一人だけが帰還したとなっている。

なぜ「貞市一人だけが生き残る結果」となったのか?

それは「伊藤・藤村を貞市が殺して食べたから」です。

マラリアで寝込んでいた貞市が隠れていた方から銃声ーー……
伊藤・藤村は貞市が敵に殺され、死体となっていることを期待して、時間を置いて貞市の元に戻りました。

「……無駄死ににはならん」

このセリフは、食糧とするから無駄死にはならないということでしょう。
それほどまでに飢えが深刻でした。

ところ銃声は、貞市が火喰鳥を仕留めた音でした。

一人で火喰鳥を喰って体力が回復した貞市は、自分を見殺しにしてのこのこ戻ってきた二人を殺害しーーー……

その後やむなく食糧として摂取。その後保護されて生き残ったということでしょう。

日記が起こした二つの世界の生存競争。
ここに残酷すぎる火喰鳥が登場するのは、この悪夢が反映された結果なのかもしれません。

紹介した書籍▼

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